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ASCII Power Review 第252回

パンケーキ26mmと20-60mm、28-200mmの描写もチェックしました!

最新性能を超小型ボディに凝縮した2420万画素フルサイズカメラ「LUMIX S9」実機レビュー

2024年06月25日 10時00分更新

文● 写真 岡田清孝 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 パナソニックがコンパクトなフルサイズミラーレス「LUMIX S9」(以下「S9」)を発売した。撮像素子や画像処理エンジンは上位モデル「LUMIX S5Ⅱ」(以下「S5Ⅱ」)と同等だが、EVFやメカシャッターなどを大胆に削ぎ落すことで小型軽量化を実現した。

 パナソニックから試用機を借りることができたので、実際に撮影して感じた印象をお伝えしていこう。

「LUMIX S9」実機レビュー

ボディー価格20万7900円はすでにお買い得。カラーはブラックとシルバーの2種類。有料で張り革の交換サービスも実施中(3色から選べ送料込9980円)。6月20日に発売済だが、現状は品薄状態だ。

LUMIXフルサイズSシリーズの
完全新デザインカメラだ

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX S 20-60mmF3.5-5.6」とのレンズキットは24万1560円。個別購入するより3万9600円お得なのはいつものサプライズだ。

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX S 28-200mmF4-7.1」とのレンズキットは28万7100円。こちらも個別購入より3万9600円もお得なのである。

 ボディーはコンパクトカメラのようなスクエアの箱型スタイル。当然ながら一眼スタイルの「S5Ⅱ」よりかなりコンパクトで重量は約254gも軽い。

「LUMIX S9」実機レビュー

ボディーサイズは126×73.9×46.7mm。重量はメディアとバッテリー込みで約486g。比べるのもなんだが「S5Ⅱ」は134.3×102.3×90.1mm、約740gとかなりサイズ差はある。

 前面はグリップのないフラットな形状なのでホールド感が心配だったが、背面のサムレストが効いていて、さらに背面液晶での撮影はEVF撮影より自然としっかり構えることを意識するので、思いのほか構えやすかった。

「LUMIX S9」実機レビュー

フルサイズにしてはスリムなボディーで操作系もシンプル。「露出補正」と「動画」のボタンはFnボタン設定でカスタマイズが可能。

 削ぎ落した静止画機能のひとつがストロボの非対応。上面にシューがあるので油断していたが、カバーを外してみると接点が無い・・・・非積層型撮像素子の電子シャッターなので、同調速度を考えるとストロボが実用的でないのはわかるが、いっそシュー自体も排除したほうがより軽量化できるのではと思ったりもする。

「LUMIX S9」実機レビュー

接点のない上面のシュー。外部マイクなどのアクセサリーを装着するときに使用するらしい。

 背面ホイール周りのボタン類は出っ張りが浅く、配置も小型ボディーだけにやや狭め。対して背面上部の「LUT」と「AF-ON」ボタンは大きめでストロークもあるが、ふとした拍子に押してしまうこともあり、慣れが必要かもしれない。

「LUMIX S9」実機レビュー

上部の「LUT」と「AF-ON」ボタンが目立つ背面。ホイール周りの操作系は同社M4/3機「LIMIX G100D」に似た配置だ。

専用ボタンとスマホアプリで
LUTを徹底活用できる

 「LUTボタン」も「S9」の特徴の一つで、「S5Ⅱ」から採用された、LUT=色調整のプリセットを利用する「リアルタイムLUT」の画面を即座に呼び出せる。

 従来はメニューの「フォトスタイル」から選択と少々手間がかかったので、それに比べると断然素早く設定ができる。また呼び出した画面からLUTの適用を即座に解除できるようになったのも便利だ。

「LUMIX S9」実機レビュー

新たに「LUTボタン」を新設。このボタンもFnボタン設定で他の機能にカスタマイズ可能なので、LUTを使わない人でも活用できる。

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUTボタン」からLUTを適用した場合、背面の「Q」ボタン(もしくは画面タッチ)でLUTが解除され、元の「フォルスタイル」に戻せる。

 LUTをより手軽に活用できるスマホ用アプリ「LUMIX Lab」も公開された。「S9」と接続しカメラ内の写真の取り込みはもちろん、スマホで編集した調整をLUTとして転送することもできる。オリジナルの色調を楽しみたい人は試してみるといいだろう。

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX Lab」では配布されているLUTをダウンロードし「S9」に転送できる。

「LUMIX S9」実機レビュー

以前のようなSDカード経由より断然楽だ。

「LUMIX S9」実機レビュー

撮影した写真をスマホに取り込み編集し、さらにその設定をオリジナルのLUTとして保存できる。

 端子類は右側面にHDMIとUSBタイプC。左側面にマイクという配置。タイプCでは充電にくわえ給電も可能。ただ端子にケーブルを付けた状態ではグリップに干渉する。HDMIがタイプDなのもボディーサイズからすると妥当だろう。

「LUMIX S9」実機レビュー

端子類は両側面に分けて配置されている。右側面の端子カバーは開閉が小気味よく、しっかりした造りがいい。

 バッテリーは「DMW-BLK22」で「S5Ⅱ」と共通。よりボディーをコンパクトにするなら小型バッテリーを採用するという手もあっただろうが、買い替えや2台併用を考えているユーザーにとっては、同じバッテリーを使い回せるのはうれしい。

 公称の撮影可能枚数は約470枚(「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」使用時)と「S5Ⅱ」の370枚より増えている。ただ実際の感覚ではRAW+JPEGで200枚ほど撮影したときに残量目盛は3分の1と、公称値ほどの差は感じられなかった。

「LUMIX S9」実機レビュー

バッテリーは「S5Ⅱ」のほか「LUMIX GH7」など最新モデルとも共通。メディアはSDシングルスロットでUHS-Ⅱに対応。

 コンパクトなボディーだとレンズを装着した時のバランスが心配だが、今回用意されているレンズキットの2本はともに軽量なので、特に不満を感じることはない。

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX S 20-60mmF3.5-5.6」(最大径77.4×全長最短87.2mm・350g)。を装着した状態。ボディーが小さいので大きく見えるかもしれないが、手にするととても軽量に感じる。

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX S 28-200mmF4-7.1」(最大径77.3×全長最短93.4mm・413g)。を装着した状態。高倍率ズームとは思えないコンパクトサイズ。

 注目なのが同時に発売される「LUMIX S 26mmF8」だ。マニュアルフォーカスで絞りも固定になるが、全長18.1mmとスリムなので「S9」との相性はバッチリ。ボディーキャップ代りに常備するのもいいだろう。

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX S 26mmF8」は全長18.1mmで重量は約58gのスリム&軽量レンズ。価格も2万8710円とリーズナブル。9月1日までに「S9」を購入すると、このレンズがもらえる。

「LUMIX S9」実機レビュー

「S9」に装着してみるとスリムさが際立つ。

「LUMIX S9」実機レビュー

ピントはマニュアルフォーカス。最短は25cmまで近寄れる。

新登場のパンケーキ26mmがいい描写
20-60mm、28-200mmも便利なのだ

 次にこの3本のレンズで撮影した作例を紹介していこう。まずは各レンズの画角の違いを定点撮影で。各作例とも絞りF8・シャッタースピード1/200秒・ISO100。フォトスタイルスタンダード・周辺光量補正オンだ。

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX S 26mmF8」で撮影

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX S 20-60mmF3.5-5.6」で撮影:広角側20mm

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX S 20-60mmF3.5-5.6」で撮影:望遠側60mm

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX S 28-200mmF4-7.1」で撮影:広角側28mm

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX S 28-200mmF4-7.1」で撮影:望遠側200mm

 「LUMIX S 26mmF8」はシンブルなレンズ構成で絞り値F8と控えめ。そのおかげかピント部はとてもシャープで、周辺部も像の乱れはない。マニュアルフォーカスは通常のレンズのようにピントリング操作で自動拡大する機能は省かれているが、液晶画面をタップすれば拡大表示はできる。ピント部を強調表示するピーキング機能と合わせれば、それほどピント合わせは難しくない。

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX S 26mmF8」で撮影。画面全域でシャープな描写。シャッタースピード1/250秒・ISO100。

「LUMIX S9」実機レビュー

上記の写真と同じシーンで周辺光量補正をオフにして撮影。F8と明るすぎない絞り値のおかげか素直な光量低下だ。

「LUMIX S9」実機レビュー

ほぼ最短撮影距離で撮影。フルサイズだけに背景は意外とボケる。拡大してみたときのシャープ感にも注目。シャッタースピード1/100秒・ISO1000。

「LUMIX S9」実機レビュー

歪曲は少し残した補正になっているが気になるほどではない。シャッタースピード1/40秒・ISO100。

「LUMIX S9」実機レビュー

逆光でも撮ってみたがハレーションは起こりにくい。シャッタースピード1/400秒・ISO100。

「LUMIX S9」実機レビュー

この写真のようにコントラスが曖昧な被写体ではピーキングが効きにくく、少し後ピンになってしまったが、そんな時は気にしないことが大事…シャッタースピード1/30秒・ISO1250。

 「LUMIX S 20-60mmF3.5-5.6」は通常の24mmより広い20mmスタートの広角側が特徴の「LUMIX S」シリーズ定番標準ズームだ。コンパクトな「S9」と合わせは街中のスナップに向いている。

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX S 20-60mmF3.5-5.6」広角側20mmで撮影。奥行きのある遠近感が気持ちいい。絞りF5.6・シャッタースピード1/800秒・ISO100。

「LUMIX S9」実機レビュー

望遠側60mmで撮影。奥まった街並みを撮影してみると、意外と望遠効果がある写真になった。絞りF5.6・シャッタースピード1/500秒・ISO100。

「LUMIX S9」実機レビュー

望遠側60mmで撮影。絞り開放のボケ感もいい感じ。絞りF5.6・シャッタースピード1/500秒・ISO100。

「LUMIX S9」実機レビュー

望遠側60mmで撮影。逆光で直接光源を写し込んだが嫌なゴーストやフレアはない。絞りF5.6・シャッタースピード1/60秒・ISO320。

「LUMIX S9」実機レビュー

広角側20mmで撮影。太陽の光が建物に反射し、2つ同時に光源が写るのが面白い。絞りF16・シャッタースピード1/50秒・ISO100。

「LUMIX S9」実機レビュー

広角側20mmで撮影。ウインドウの反射越しの街並みが都会っぽい。絞りF3.5・シャッタースピード1/250秒・ISO100。

「LUMIX S9」実機レビュー

望遠側60mmで撮影。何気に撮った写真だが、後から見ると解像感の高さが伝わる。絞りF5.6・シャッタースピード1/125秒・ISO100。

 「LUMIX S 28-200mmF4-7.1」は高倍率ズームとは思えない小型軽量レンズ。「S9」に装着してもフロントヘビーにならず軽快に撮影ができた。広角側のワイド感が少し物足りないが、そんな時は「LUMIX S 14-28mm F4-5.6 MACRO」(345gと軽量で、なにより一部量販店では10万円切りと超広角ズームではリーズナブル)と組み合わせて使うのもいいだろう。

「LUMIX S9」実機レビュー

「LUMIX S 28-200mmF4-7.1」で撮影。同じ場所から広角側と望遠側を撮り比べた。28mm・絞りF4・シャッタースピード1/320秒・ISO100。

「LUMIX S9」実機レビュー

200mm・絞りF7.1・シャッタースピード1/250秒・ISO100。

「LUMIX S9」実機レビュー

広角側と望遠側で遠近感を変えて撮るのも面白い。28mm・絞りF4.9・シャッタースピード1/320秒・ISO100。

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200mm・絞りF7.1・シャッタースピード1/250秒・ISO200。

「LUMIX S9」実機レビュー

焦点距離を工夫すれば同じ被写体で違った印象の写真になる。200mm・絞りF8・シャッタースピード1/640秒・ISO100。

「LUMIX S9」実機レビュー

28mm・絞りF8・シャッタースピード1/400秒・ISO100。

「LUMIX S9」実機レビュー

広角側28mm で撮影。正直言えばもう少しワイドで撮りたいところ。絞りF4.9・シャッタースピード1/30秒・ISO320。

「LUMIX S9」実機レビュー

望遠側200mmで撮影。遠近感が圧縮された望遠らしい写り。絞りF7.1・シャッタースピード1/640秒・ISO100。

「LUMIX S9」実機レビュー

広角側28mmでは最短14cm(レンズ前3cm)まで近寄れるのもこのレンズの特徴。ただしフードを装着した状態では被写体に激突するので注意! 絞りF4・シャッタースピード1/160秒・ISO800。

 撮像素子は2420万画素とフルサイズ機ではスタンダードクラス。実際に撮影した写真をみると細部の解像感も十分に高く、自然な発色で階調再現も豊かだ。

すべてのミラーレス機に搭載してほしい超便利機能
「ハイブリッドズーム」

 ユニークな新機能として搭載されたのが「ハイブリッドズーム」だ。画像の一部を拡大することで望遠効果が得られる「クロップズーム」(ちなみにコチラも新搭載)と組み合わせた機能で、光学ズームのズームリングでシームレスに拡大できる。例えば20-60mmのズームでは、広角端からズームリングを3分の1回したところで60mmになり、その先はデジタルズームで、リングを回すと180mmの画角まで選択できる。

 「S9」のようなコンパクトなボディーでも手軽に望遠撮影が楽しめる、今まで在りそうで無かった優れた機能だ。ぜひ、ずべてのミラーレスカメラに搭載して欲しいものである。

「LUMIX S9」実機レビュー

メニュー画面で「ハイブリッドズーム」か「クロップズーム」を選択。

「LUMIX S9」実機レビュー

ズーム方式でも解像度によって最大倍率が異なり、4272×2848ドット(1200万画素相当)で1.4倍、3024×2016ドット(600万画素相当)で2倍、1920×1280ドット(250万画素相当)だと3.1倍になる。

「LUMIX S9」実機レビュー

「クロップズーム」の作例:クロップなし

「LUMIX S9」実機レビュー

「クロップズーム」の作例:1.4X

「LUMIX S9」実機レビュー

「クロップズーム」の作例:2X

「LUMIX S9」実機レビュー

「クロップズーム」の作例:3.1X

「LUMIX S9」実機レビュー

「クロップズーム」は液晶画面のタッチや十字キーで操作し、レンズの焦点距離に応じてクロップされる。

「LUMIX S9」実機レビュー

「ハイブリッドズーム」ではレンズのズームリングに連動して自動的にクロップされる。なおクロップが適用されるのはJPEGのみなので、RAWを同時記録しておけば現像時にクロップ前の画像の戻すことも可能。

「LUMIX S9」実機レビュー

クロップズームで撮影した同時記録のRAWを現像ソフトで開くと、クロップ情報が記録されているのがわかる。

 高感度はISO6400程度までほぼ画質劣化は感じらない。常用感度最高の51200も実用範囲内で、拡張感度も102400なら拡大して見なければ許容できる。

「LUMIX S9」実機レビュー

感度別に撮影した写真の一部を等倍に拡大して比較。左上からISO1600・ISO3200・ISO6400・ISO12800・ISO25600・ISO51200・ISO102400(拡張感度)・ISO204800(拡張感度)。「LUMIX S 20-60mmF3.5-5.6」・絞りF5.6・ノイズ処理標準。

「LUMIX S9」実機レビュー

ISO12800で撮影。「LUMIX S 20-60mmF3.5-5.6」・絞りF6.3・シャッタースピード1/160秒・ノイズ処理標準。

「LUMIX S9」実機レビュー

ISO25600で撮影。「LUMIX S 20-60mmF3.5-5.6」・絞りF5.3・シャッタースピード1/30秒・ノイズ処理標準。

「LUMIX S9」実機レビュー

ISO51200で撮影。「LUMIX S 20-60mmF3.5-5.6」・絞りF16・シャッタースピード1/30秒・ノイズ処理標準。

「LUMIX S9」実機レビュー

ISO102400で撮影。「LUMIX S 20-60mmF3.5-5.6」・絞りF5.6・シャッタースピード1/50秒・ノイズ処理標準。

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