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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第84回

無限にお金が増やせる? との書き込みも 「Go To トラベル」でさまざまな騒動が起きそうだ

2020年07月20日 09時00分更新

文● 小島寛明

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写真はイメージ

 国内屈指の観光地・雷門と浅草寺を結ぶ仲見世は、いまも人がまばらなままだ。

 2020年5月下旬に緊急事態宣言が解除されて以降、少しずつ参拝客が戻ってきたが、世界中からの観光客で人があふれていた、半年前の姿からは程遠い。

 寺のまわりにある飲食店や土産物店の中には、降りたままのシャッターに閉店を知らせる張り紙を出す店が少しずつ増えてきた。

 日本中の観光地が、これと似た、あるいはもっと困難な状況にある。何らかの対策が必要な点については疑いがない。

 政府の観光支援策「Go To トラベル」事業が7月22日から始まるが、16日夕になって感染が拡大を続けている東京は事業の対象から除外されることが決まった。

 東京発着の旅行は対象外とされたが、まもなくキャンペーンは始まる。

 事業の中身を詳しく見ると、実施の段階になれば、さまざまな騒動が起きそうである。

●トラベルは4大キャンペーンのひとつ

 Go To トラベルは、新型コロナウイルスの感染拡大に対して、政府が打ち出した消費刺激策のひとつだ。

 「Go To」のついたキャンペーンは、トラベルだけでなく、イート、イベント、商店街と4つの柱がある。4つのキャンペーン全体の事業費は、1.7兆円にのぼる。

 飲食店を支援する「Go To イート」については、農林水産省が7月17日から委託先の公募を始める予定だったが、延期が決まった。

●旅行代代金を35%割引

 トラベル事業の運営を受注したのは「ツーリズム産業共同提案体」というグループだ。

 また怪しい団体かと思ってしまうが、日本旅行業協会や、JTBなど旅行関連の業界団体と大手旅行会社で組織する事業体だ。

 リクルートライフスタイル、楽天、ヤフーはこのグループには入っていないが、「協力団体」として名を連ねている。ホテルや旅館のネット予約などオンラインのサービスを担うのがこうした企業の役割だと考えられる。

 旅行にかかる費用の半額を政府が支援するキャンペーンだとうたわれているが、実際はもうちょっと細かい。

 旅行代金については35%の割引が適用され、残りの15%については、「地域共通クーポン」がもらえる仕組みだ。

 旅行代金の総額が1人につき2万円の場合、7000円は割引、3000円はクーポンがもらえる。

 旅行代理店や予約サイトを経由した場合は、飛行機代や電車代も割引の対象に含まれる。

 このクーポンは、旅行先の飲食店や土産物店などで使えるほか、タクシー代の支払いにも使える。

 ただ、クーポンの本格実施日についてはいまのところ「9月1日以降」とされている。7〜8月中の旅行には35%の割引だけが適用されると考えていいだろう。

 食事やおみやげの購入などがクーポンの3千円以内に収まるとすれば、総額2万円の旅行に出かけた場合、個人の財布から出ていく金額は、1人あたり1万3000円になると考えられる。

●すでに騒動のにおいも

 巨額の国費が投じられる消費刺激策だけに、すでに、さまざまな騒動のにおいも感じ取れる。

 事務局の公募にはツーリズム産業共同提案体を含む5グループが参加したが、国土交通省が審査の概要を開示しており、「不正防止対策などに特に留意することが必要」だと強調されている。

 一方でSNS上ではすでに、「ホテルと結託すれば、無限にお金が増やせるらしい」といった書き込みも見られる。

 実際にホテルと結託するには綿密な「共謀」が必要になり、1泊あたり2万円が支援額の上限とされているため、違法行為を働くリスクの高さに反して、それほどのリターンは期待できないかもしれない。

※註:不正防止対策がなされているため、現実的に違法行為をすることは難しい。また、本記事は違法行為を促すものではありません

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