CxOアプローチ、SAP市場開拓、パートナーの「脱人月」で描く成長戦略
“リアルタイム経営”で日本企業を勝ち組に New Relic古舘社長が語るビジネスオブザーバビリティの真価
2026年09月15日 12時30分更新
リアルタイム経営の浸透は“CxO”と“SAP市場”が最優先
リアルタイム経営の実現において、New Relicの強みは「圧倒的なシェア」と「サポート力」だという。
同社は、テクノ・システム・リサーチによる調査(2025年版)において、国内オブザーバビリティ市場で2位に倍以上の差をつけるシェア48%を得ており、7年連続で首位を維持。「アプリケーションのデータがなければビジネスオブザーバビリティは成り立たない。その監視(APM)に強みを持つ我々だからこそ、リアルタイム経営を実現できるという自負がある」と古舘氏。
加えて、ビジネスオブザーバビリティの推進には、ベンダーやパートナーによる伴走支援が不可欠である。単にツールだけでは実践できず、部門の壁を越えて既存の運用プロセスを刷新していく必要があるからだ。
この点においてNew Relicは、国内責任者のもとにすべてのビジネス機能が任せられ、顧客の成功のためにすべてのリソースを投入できる体制をとっている。「他のベンダーは縦割りで、顧客ファーストな判断ができない場合がある」(古舘氏)
こうした手厚いサポートのひとつに、「オブザーバビリティ成熟度」を軸としたアセスメントがある。システムを理解・改善する能力を測り、組織全体でオブザーバビリティの活用レベルを引き上げるための支援を提供するものだ。
このアセスメントを経営層(CxO)向けに発展させたのが「ビジネスオブザーバビリティ・アセスメントサービス」だ。リアルタイム経営の促進に向けた新たな打ち手であり、システムとビジネスKPIとの連動度やデータ統合度、AIOpsの実践、組織連携レベルなどから、リアルタイム経営の成熟度を多角的に測定する。
このように古舘氏のビジョン達成は、トップダウンでビジネスオブザーバビリティを浸透させられる“大企業のCxO”の存在が鍵を握る。彼らとの関係構築のための体制を強化し、他にもCxOを対象としたユーザーコミュニティの発足も予定している。
同様に注力するのが「SAP市場」の開拓だ。「SAP S/4HANA」移行に伴い、複雑なビジネスプロセスを監視する仕組みとして、SAPから唯一の認証を受けたオブザーバビリティ基盤を訴求していく。そのために、SAP専任の技術コンサルタント部隊も編成し、SAPユーザーを対象としたコミュニティも発足予定だ。「この領域ではまだまだオブザーバビリティの必要性を感じていない企業が多い。ビジネスオブザーバビリティの世界を押し広げていく中で、最もインパクトが大きいのがSAP市場」(古舘氏)
オブザーバビリティでパートナーの“脱人月ビジネス”も促進
もうひとつ重要なのが、これらの支援をともに展開する「パートナーエコシステム」の強化だ。古舘氏は、「パートナーも、生成AIの登場でビジネスモデルの変革を迫られている。特に、アプリケーション開発・運用を手掛けてきた企業は危機感が強い」と語る。
そこで同社は、ユーザー企業のアプリケーション開発・運用を担うSIer自体へのオブザーバビリティの導入を訴求し、ユーザー企業とパートナー、New Relicの三位一体でのリアルタイム経営の実現を図っていく。
「日本市場のアプリケーション開発・保守運用のボリュームを見ると、パートナー企業の占める割合が圧倒的。しかし、オブザーバビリティは活用されておらず、旧態依然の人月ビジネスが残っている。一方のユーザー企業側は、人月に固執せず、安全かつアジリティのあるサービスを求めているため、ビジネスのあり方を変えざるを得ない。New Relicはその変革を一緒に進めたい」(古舘氏)
実際に、2026年7月には日本ビジネスシステムズ(JBS)との協業を発表。JBSの提供するマネージドサービス基盤にNew Relicのフルスタックオブザーバビリティを組み込み、ハイブリッドクラウド環境における運用監視の高度化に着手した。New Relicでは、同様の協業を今後も拡大し、2030年度までにパートナー売上を現在の15%から50%にまで引き上げることを目指す。
日本企業が「負け組」にならないために
古舘氏は、代表就任後に始動してきた一連の施策に対して早くも手ごたえを感じているという。「CxOとのエンゲージメントを重ねる中で、AI活用を推進するにはオブザーバビリティの基盤が不可欠と捉える組織が増えてきた。単に、ツールを入れれば終わりではなく、『どうビジネスを変革していくか』という本質的な議論へと会話の質も変わり始めている」と古舘氏。
一方で、「デジタルサービスを持たない」「ビジネスプロセスをリアルタイム化する必要性が薄い」という業界・業種もあり、あらゆる企業へ一律に推進する難しさも実感したという。
「ただ、完全に不要な企業は存在しない。実際には革新的なCIOと保守的なCIOの間で意識の二極化が進みつつあり、『リアルタイム経営やビジネスオブザーバビリティを進めないと負け組になる』という危機感を抱いてもらえるよう、泥臭く啓蒙を続けていく」(古舘氏)
それでも、海外企業がリアルタイム経営で先行しているわけではなく、顧客基盤を持つ日本企業はポテンシャルがあると古舘氏は強調する。「パートナーエコシステムで面を広げつつ、トップ企業のビジネスオブザーバビリティの活用度を引き上げる。この両輪で日本をリアルタイム経営の先進国にするというビジョンを達成していきたい」と今後の展望を力強く語った。
同社はこのビジョンを通じて、2030年度までに売上高を現在の2.5倍に拡大させる目標だ。
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