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もう“バックアップのVeeam”ではない、新戦略を示した「VeeamON Sydney 2026」レポート

AIエージェントがデータにもたらす2つの脅威 Veeamが「保護レイヤー」の必要性を強調

2026年08月31日 14時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 Veeam Softwareが今年7月、オーストラリアで開催したAPAC向け年次イベント「VeeamON 2026 Sydney」。同イベントでは、最新版製品「Veeam Data Platform(VDP)v13.1」「Veeam Vault Archive」を発表するとともに、AIエージェント時代に向けた新たな戦略として、データとAIのセキュリティ、インテリジェント・レジリエンスを打ち出した。

Veeam CRO(最高レベニュー責任者)のジョン・ジェスター(John Jester)氏

AIエージェント時代、2つの脅威:“シャドーAI”と“エージェントの暴走”

 同イベントの基調講演において、VeeamのCRO(最高収益責任者)であるジョン・ジェスター氏はまず、Veeamと業界の歴史を振り返った。

 Veeamは、VMwareの仮想マシンをバックアップするソフトウェアの開発元として、2006年に創業した。仮想マシンのバックアップに対するニーズの高まりに加えて、「簡単」「きちんと動作する」という特徴もあり、市場に受け入れられた。その後、オンプレミス(物理サーバー)、クラウドインスタンス、SaaS、Kubernetesと、バックアップ対象を拡大していった。このバックアップ/リカバリ領域のソリューション提供が、Veeamにとってのフェーズ1だ。

 続くフェーズ2は、サイバーレジリエンス領域だった。およそ10年前、ランサムウェアが台頭し、防御側も「侵害を前提としたセキュリティ」へと転換する必要があった。Veeamでは、イミュータブル(不変)バックアップ、インラインマルウェア検知、サイバー攻撃被害に対するデータ復旧保証のSLAなどを提供した。さらに最近では、耐量子暗号のサポートなども進めている。

 現在、Veeamは世界150カ国で55万社以上の顧客を抱え、ARR(年間経常収益)は21億ドルに達する。「Global 2000」大企業の70%がVeeamの顧客だ。IDCのData Protection Software(2025年後半)でシェアNo.1の座も獲得したという。

 「サイバー攻撃、自然災害、ちょっとしたITミス、リージョン障害――どんな事態であっても、Veeamは組織の保護、ビジネスの継続を支援できる」(ジェスター氏)

AIエージェント時代に向け、「データとAIのセキュリティ」も守備範囲に加える

 そして、AIエージェント時代の到来によって、Veeamは新たなフェーズに入る。

 ジェスター氏は、AIエージェント時代に懸念されることが「2つある」と語る。1つ目は、従業員がAIツールを勝手に持ち込み、AIエージェントにデータへのアクセス権を与えてしまうなど、“シャドーAI”に起因する脆弱性や攻撃だ。2つ目は、会社として正規導入したAIエージェントが“暴走”して、重要なデータを削除/破損したり、誤った判断を提案したりするケースだ。

 「1つ目と比較して、2つ目はあまり問題視されていない。しかし、どちらもビジネスに対する影響度は同じであり、両方に対応する備えが必要だ」(ジェスター氏)

 AIエージェント時代に向けて新たなデータ保護対策が必要な理由として、ジェスター氏は「データ重力(Data Gravity)の変化」と「スケールの爆発的拡大」という2つを挙げた。

 まずは「データ重力の変化」からだ。現在の大企業は平均100種類を超えるSaaSを利用しているが、これまではそれぞれが独自にデータを保管し、アクセス権限も個別に管理するかたちで、比較的容易に管理ができていた。しかしAIエージェント時代になると、エージェントがこれらのアプリケーションを横断して直接データにアクセスするうえ、各システムが持つIDやアクセス制御の枠組みを必ずしも理解していない。

 「事業運営の根幹を担う、CRMやERPといった基幹システム上のデータもその対象に含まれている点が、特に大きな懸念材料だ」(ジェスター氏)

 もうひとつの「スケールの爆発的拡大」は、AIの利用規模/攻撃のスピード/被害の範囲という、3つのスケールを指している。平均的な企業では、従業員一人あたり平均82個、企業全体では約25万個ものAIエージェントが稼働し、生成されるデータ量も急増することになる。一方で、攻撃者もAIを悪用した自動化を進めており、Microsoftのデータによると、世界では1秒間に7000件のパスワード攻撃が発生している。そして、多くの組織がAIエージェントの権限設定やガバナンスを十分に行えていないため、ひとたびミスが起きた際の影響範囲は非常に大きくなっているという。

 Veeamの調査によると、AIを本番環境やパイロット環境で利用している企業は88%に上る。ただし「AIを効果的に管理するためのツールや運用プロセスを備えている」企業はわずか7%で、47%の経営幹部が「AIエージェントが出力した回答や洞察に基づいて、誤った意思決定をしてしまった」経験を持つことも明らかになっている。

 こうした現状から、ジェスター氏は「多くのCISOが、エージェンティックAIを最大のセキュリティ脅威と位置付けている」と述べた。

 実際にインシデントも発生している。たとえば、レンタカー事業者向けSaaS「PocketOS」では、開発支援AIエージェントの「Cursor」が誤った判断を下し、わずか9秒で本番データベースとすべてのバックアップデータを削除してしまった。また、あるAWSの顧客企業は、AmazonのAIエージェント「Hiro」にAWS環境の最適化を任せたところ、Hiroが本番環境を消去してしまい、13時間のダウンタイムが発生。注文損失は600万件に及んだという。さらに先日は、OpenAIやAnthropicのAIエージェントがテスト環境を“脱獄”し、外部システムに侵入した事件も話題となった。

 「これらはすべて、企業が正規に導入したAIエージェントが引き起こしたインシデントだ」とジェスター氏は強調する。「外部から攻撃を受けたわけではない。企業の内部に、AIに対する適切なガバナンスとツールがなかったことが原因だ」。

 こうした事態を防げなかった背景には、従来型のセキュリティモデルの限界があると指摘する。これまでは「人間がアプリケーションを、比較的ゆっくり操作する」ことが前提となっていたが、AIエージェントが直接操作する時代には「データそのものがコントロールプレーンにならなければならない」と主張する。

 典型的なAIスタックでは、インフラ/データ層の上で、AIモデルが直接データにアクセスし、その上でエージェントが動作する。Veeamが指摘するのは、ここに「データを保護し、ID/アクセス制御を担うレイヤーが欠如している」点だ。AIモデルとデータの間にこうした保護レイヤーがあれば、ガバナンスを効かせることができる。

 「問題の本質は、AIを技術的に実現できるかどうかではない。AIモデルに投入するデータ、そしてそのデータに基づいてAIが取る行動を、信頼できるかどうかだ」(ジェスター氏)

現状のAIスタックには、データ保護のための重要なレイヤーが欠落しており「安全なAIが実現できない」と指摘

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