マルチクラウド運用対応のモジュール型データ/AI基盤 ― Cloudera EVOLVE 26レポート
Clouderaが5年をかけた技術革新の集大成「Anywhere Cloud」発表
2026年08月26日 09時00分更新
Clouderaは2026年8月20日、シンガポールで年次カンファレンス「EVOLVE 26」を開催した。
基調講演で登壇した同社CEOのチャールズ・サンスベリー氏は、“過去5年間の変革を象徴する製品”として、新たなデータ/AIプラットフォーム「Cloudera Anywhere Cloud」を発表した。同製品はモジュール構成を特徴とし、パブリッククラウド、オンプレミス、エッジなど、異なるインフラ上のサービスを単一の管理基盤で自由に組み合わせて展開できるという。また、既存製品の最新版「Cloudera Data Platform 7.3.2」(開発コード:Kona)の一般提供開始も発表した。
株式非公開化からの5年間、変革を経て「再び出発点に立つ」Cloudera
サンスベリー氏は、2021年にClouderaが株式を非公開化してからこれまでを振り返り、このおよそ5年間で「会社を根本から作り変えてきた」と述べた。特に「過去3年間は、3社の買収と研究開発費に合計10億ドルを投じた」という。
製品開発においては、「共通のデータ管理基盤をどこにでも展開したい」「データのガバナンスを一元化したい」「生成AIやエージェント型AIアプリケーションの構築/運用ツールを強化してほしい」といった顧客からの要望に応えてきた。
そして現在は、主力製品である「Cloudera Data Platform(CDP)」の「最良のバージョンを送り出せた段階にある」として、世界最大手企業が利用するAI/分析基盤のリーディングプラットフォームとしての地位を強調した。
製品面の変革で重要な役割を果たすのが、2025年に買収したTaikunだ。当初はコンテナ化フレームワークとして活用することを想定していたが、顧客との対話を通じて、これが「オーケストレーション基盤としても大きな可能性を持つことが分かった」という。この気づきをきっかけに、データガバナンス/AI/運用を担うレイヤーへの大規模投資に踏み切った。それが、今回発表したCloudera Anywhere Cloudの土台となっている。
そして、2022年のChatGPT登場に始まるAIの急速な進化とビジネスへの浸透が、それまで“クラウド一辺倒”だったトレンドに変化をもたらしている。
Clouderaの顧客調査からは、ワークロードの実行場所に関する興味深い実態が明らかになった。調査開始当初は「クラウドへの移行」というトレンドが圧倒的に大きかったが、毎年調査を重ねるたびに「自社所有のハードウェア」、つまりオンプレミスで稼働するワークロードの割合が増えているのだという。
サンスベリー氏は、「大手企業ではハイブリッドが事実上の標準的な運用モデルになりつつある」と述べ、パフォーマンス/セキュリティ/コストの異なるさまざまなインフラから、ワークロードごとに最適なものを選べる仕組みが重要であると強調した。
さらに、顧客企業はプライベートAI/ソブリンAIにも強い関心を持っているという。「データを自社セキュリティ環境から出さずに活用したいというニーズが、顧客の間で高まっている」(サンスベリー氏)。Anywhere Cloudは、こうしたプライベートインフラの「基盤となるオペレーティングシステム」だと位置づけた。
Clauderaがこれまで管理してきたデータ量は、30エクサバイト(30EB)に達するという。サンスベリー氏は「われわれは30エクサバイトのデータに眠る可能性を顧客が実現できるよう支援する立場にある。(Anywhere Cloudにより)再び出発点に立っている」と語った。
Cloudera Anywhere Cloud――「真のハイブリッド」を実現する7つの設計思想
Anywhere Cloudの詳細については、同社CPOのレオ・ブルニック氏とCTOのセルジオ・ガゴ氏が説明した。
Anywhere Cloudは、先述したTaikunの技術をベースに再構築された、新しいプラットフォームだ。疎結合/モジュール型のアーキテクチャを大きな特徴とする。さらに、ブルニック氏とガゴ氏によると、Anywhere Cloudの設計にあたって、満たすべき条件は大きく7つあったという。
(1)真のハイブリッド:一度書いたコードが、オンプレミス/エアギャップ環境/パブリッククラウドのどこにでもデプロイできて、同じ挙動をすること。
(2)統一のデータファブリックによる管理:たとえばオンプレミスと複数のパブリッククラウドにまたがるデータを、単一の管理画面から扱えること。
(3)AIインフューズド設計:AIの推論機能を、特定サービスに限定せずすべてのサービスに水平統合すること(infused=染み込ませる)。
(4)モジュール性:個々のコンポーネントを、他の稼働状態に影響を与えることなく数秒~数分で追加/入れ替え可能にすること。
(5)オープンな拡張性:SDKを通じて、サードパーティのベクターデータベースやグラフデータベースなどが自由に組み込めること。
(6)“エージェントファースト”のUI設計:人間だけでなくAIエージェントも利用者と位置づけて、インタフェースを設計すること。
(7)スタンドアロン性:CDPとは独立して動作しつつ、既存のCDP環境(7.1.9系・7.3.2系のいずれも)とも併用できること。
ガゴ氏は、特に(7)のスタンドアロン性が「最も重要な条件だった」と強調した。
こうした設計により、導入時間も劇的に短縮されるという。従来のCloudera Data Servicesでは、ベアメタルの状態からデータサービスが稼働するまで「平均60日」を要していたが、Anywhere Cloudでは、オンプレミスのベアメタルやクラウド上の仮想マシンからスタートしても「60分未満」で稼働するという。
デモでは、同じく新発表されたマーケットプレイスから「Cloudera Data Engineering」サービスを1クリックでデプロイし、そこでSparkのジョブを実行。任意のS3バケットからデータを読み込み、機械学習モデルを構築/デプロイする一連の様子を見せた。
さらに、ジョブを稼働させたままAnywhere Cloudクラスタ全体をKubernetesシステムごとダウンタイムなしでアップグレードしたり、SDKを使ってMySQLなど非Clouderaのエンジンを数分で読み込むこともできるという。PuppyGraphのナレッジグラフ、Hugging Faceのクエリ最適化、Vastのストレージ効率化など、パートナーとの技術連携も紹介した。Clouderaでは、この3社を含む9社をパートナーとして発表している。
Claudera Anywhere Cloudは現在テクニカルプレビュー段階であり、2026年11月に提供開始の予定だ。
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