ASUSのROG Strix Pulsar XG27AQNGVで検証
ホールドぼけ対策とVRRの共存!FPSゲームのすばやい動きもブレずにパキッと見える「G-SYNC Pulsar」を完全解説
2026年09月10日 10時00分更新
バックライトのローリングスキャンと追い焚きが核心
G-SYNC Pulsarの技術の核心は、バックライトの「ローリングスキャン」と、バックライトの追い焚きである「補償パルス」の2つにある。この2つによってVRRと黒挿入を共存させ、CRTのような動き明瞭性を獲得できる。
まずローリングスキャンとは文字通り、バックライトを上から下へ順繰りに発光させるというものだ。バックライトは画面上から下へ10のゾーンに分割されており、上から下に画面が更新される処理に同期して適切なゾーンのバックライトのみが点灯する。
バックライトを分割して制御するという技術はとくに目新しいものではない。BenQの「DyAc 2(Dynamic Accuracy)」もゾーン分割されたバックライトストロボ制御技術に該当する。だが、DyAc系技術は可変リフレッシュレートには非対応だ。可変リフレッシュレートでバックライト点灯を精密に制御可能にした部分が、G-SYNC Pulsarの独自性といえる。
続いては補償パルスだが、NVIDIAが「斬新なアルゴリズム」というだけで具体的な仕組みは一切公開されていない。補償パルスの発光時間やタイミングを調整することで、画面の点滅を肉眼では知覚させないレベルに制御できる技術のようだ。
ローリングスキャンの概念図(相当に簡略化している)。バックライトは画面全体ではなく、横に長い10のゾーンに分割され、上から下に順次発光→消灯を繰り返す。発光→消灯→書き換えというサイクルで画面が更新されるわけだ
バックライトが点灯するゾーンは、新しいフレームの内容に描きかわるライン(白い線)のすぐ下にあるゾーンCである。ゾーンAはまだドット内の液晶分子が動ききってない(応答時間中)可能性があるし、ゾーンBは描画途中のフレームの内容を含むため、点灯させてはまずい。Cは絵の内容も液晶分子も安定しているので点灯してよいゾーンになる
さらに、ローリングスキャンの発光パターンはフレームレートだけでなく、環境光の影響も加味されて調整される。周囲が暗い場合はバックライトの点灯時間を極限まで詰めて動き明瞭性を重視し、明るい場合は長くして周囲の明るさに負けない輝度を確保するといった調整機能(Ambient Adaptive Technology)も搭載している。今回テストしたASUS製ディスプレーの場合、この機能をオフにはできないようだ。
なぜいまどきリフレッシュレートが360Hzなのか?
G-SYNC Pulsarの理屈はわかるが、なぜリフレッシュレートは360Hzなのか? という疑問をもつ人もいるだろう。IPSでもリフレッシュレート500Hzのディスプレーは存在するし、OLEDならば540Hzどころか720Hz対応を謳う製品もある。500Hz液晶のG-SYNC Pulsarディスプレーや、540Hz OLEDのG-SYNC Pulsarは存在しないのだろうか?
その問いに答えると、まずG-SYNC Pulsarは現状OLEDでは展開できないという話がある。ローリングスキャンは液晶のバックライト制御技術であり、画素そのものが発光するOLEDにはそのまま使えないからだ。そもそも輝度の高さがOLEDの長所でもあるため、輝度が犠牲になる黒挿入とは相性が悪い。
ゆえに、高リフレッシュレートの液晶ならまだ望みはある。NVIDIAは現状の仕様(360Hz)はあくまで「現状における保守的な選択の結果」と述べているため、500HzのG-SYNC Pulsarは今後出る可能性は残されている。
だが、G-SYNC Pulsarは動きの滑らかさ(Fluidity)よりも動きの明瞭性(Clarity)を目指した技術である、という点を忘れてはいけない。高リフレッシュレートにしても人間の眼には区別が難しいという意見があるが、それはあくまでも滑らかさの話だ。動きの明瞭性の認識はホールドぼけの解消が必要となる。
つまり、360HzでもG-SYNC Pulsarを利用すれば、リフレッシュレートを無理に引き上げずとも、モーション明瞭性を上げられる。これが360Hzにとどまっている理由だ。その裏付けがG-SYNC Pulsarの謳い文句「1000Hz以上のモーション明瞭性」である。これは次のような理屈で説明できる。
●リフレッシュレートは250Hzと仮定する(VRRなのでフレームレートも250fps)
●250fps動作時のフレームタイムは4ms
1000ms/250=4ms
●バックライト点灯期間をフレームタイムの25%とした場合、点灯時間は1ms
4ms×0.25=1ms
●人間の網膜には1msぶんの光しか届かない(つまり、実質1000Hz相当)
1000ms/1ms=1000
黒挿入を適切に使用すれば、リフレッシュレートは360Hzで250fpsという中途半端なフレームレートでも、1000fps相当の「CRTに近い」映像が得られる。360Hzのパネルの性能をフルに使い切れば、1440Hz相当のモーション明瞭性が得られる……というのがNVIDIAの主張だ。あくまでも理屈上の話ではある。
だが、往々にして我々はつい数字に心を奪われてしまうものだ。540Hz対応のOLEDと360Hz対応のG-SYNC Pulsarでは数字の大きいOLEDが良いように思える。そして、540HzのOLEDで最高の見え方を確保するには、フレームレートも540fps出す必要があるという点を忘れてはいけない。
「VALORANT」に代表される超軽量なゲームはともかく、「Forza Horizon 6」のような描画の重いゲームでは540fpsはフレーム生成を使ってもハードルが高い。ゲームやPCのスペックによっては200fpsが精一杯という場合もあるだろう。そんな時は、画質や解像度を下げることでフレームレートを確保するという手もある。
また、最近流行をみせているデュアルモードで解像度とリフレッシュレートの組み合わせを切り替えられるディスプレーの場合、超高リフレッシュレートの時は画面解像度が半減する。NVIDIAはこういった画質の犠牲を避けるポリシーがあるようだ。つまり、G-SYNC Pulsarは画質の犠牲を伴わず利用可能、という点にアドバンテージがある。
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