ASUSのROG Strix Pulsar XG27AQNGVで検証
ホールドぼけ対策とVRRの共存!FPSゲームのすばやい動きもブレずにパキッと見える「G-SYNC Pulsar」を完全解説
2026年09月10日 10時00分更新
VRR技術「G-SYNC」の登場と限界
ティアリングとスタッターを克服するための技術が、可変リフレッシュレート(VRR:Variable Refresh Rate)技術だ。可変リフレッシュレートは、文字通りリフレッシュレートをGPUの描画に合わせて調整する。2013年に登場したG-SYNCは、単体PCディスプレー向けにVRRを実用化した技術である。
G-SYNCと同系統の技術として、G-SYNCのルーツというべきVESAの「Adaptive Sync」、そしてAdaptive SyncをベースにRadeon専用の技術としてブランド化した「FreeSync」がある。FreeSyncとG-SYNCは目指すところは同じだが、G-SYNCは低フレームレート時も同期が外れにくく、オーバードライブの調整が細かくできるなど、技術的なアドバンテージがある(そのぶん製品価格が高価なのだが……)。
初代G-SYNCモジュール。中央にはAltera製のFPGA、上部には合計768MBのDDR3メモリーを搭載している。のちのG-SYNC UltimateではFPGAが強化され、バッファーメモリーも3GB(DDR4)に増量された。そのおかげでG-SYNCディスプレーは高額にならざるを得なかった
その後、G-SYNCは2017年に1000nitの高輝度HDR対応を果たした「G-SYNC HDR(のちにG-SYNC Ultimateへ改称)」へ進化したが、G-SYNCの機能自体に変化はない。
また、2019年に登場した「G-SYNC Compatible」は、ディスプレー側にG-SYNCモジュールを必要としないぶん安価(FreeSync対応であればほぼ対応)、HDMIでも機能するというメリットがあった。しかし、低フレームレート時に一瞬同期が外れることもあるというデメリットもある。
というわけで、G-SYNCの登場によって、GeForceユーザーはティアリングやスタッターによる問題を「概ね」克服できた。しかしながら、高速で動いている物体がブレて見える、ホールドぼけという問題がまだ残っている。
G-SYNC Pulsarでホールドぼけを克服する
CRTは画素が一瞬(0.001~0.01ms)だけ光ることで映像を表現する。これに対し、液晶やOLEDでは、画素は一度点灯したら画面が描きかわるまで点灯状態をずっと維持(100fpsなら約10ms)することで映像を表現する。同じ1ドットを表現していても、光の出方が根本的に異なるのだ。
最近の液晶やOLEDは、応答速度が1ms~0.03msと非常に高速だが、「次のフレームまで画素の状態をホールドし続ける」点は今も昔も変わっていない。長時間ドットが発光し続けるため、網膜に像が長時間残る。これがゲームにおいては大きな弱点となるのだ。
例として、画面を標的が横切るシーンを考えてみよう。眼でこれを追いかける場合、無意識のうちに次の位置を予測しながら視点を動かすことになる(この動きはSmooth Pursuitと呼ばれる)。
だが、画面上の標的は次のフレームの内容に更新されるまでその場(点灯している画素)から動かないし、動きが速いほど画面上の動きは飛び飛び(離散的)になる。視点は無段階で動かせることに対し、画面上の標的は離散的にしか動かせない。人間の脳はこの差をぼけとして知覚してしまう……。これが「ホールドぼけ(Persistent Blur)」と呼ばれるものだ。
液晶ディスプレーでホールドぼけが出る様子(やや誇張して描いている)。右へ移動する標的(オレンジ)を眼が追いかけるという状況において、眼球は標的の未来位置を予測して滑らかに視点を動かせる。しかし、標的は離散的にしか動かないため、その差がホールドぼけとなって認識される
もちろん、ホールドぼけ対策もある。まずフレームレートを上げ、動きのコマ割りを増やせばホールドぼけもある程度軽減される。だが、対策としては「黒挿入」のほうが強力だ。黒挿入はバックライトを一瞬だけ点灯、あるいは黒フレームを一瞬表示させることで実現する。液晶のバックライトを一瞬だけ点灯させる「バックライトストロボ」は黒挿入技術の1つである。
バックライトストロボによる黒挿入の効果。上図はフレームタイム(≒リフレッシュレート)の4分の1の時間だけバックライトを点灯させたと仮定して作図している。消灯している間は見えていないので、ホールドぼけも格段に小さくなる
黒挿入で点灯時間を絞れば絞るほど、ホールドぼけは軽減されるが、画面が暗くなるというデメリットも出てくる。この点灯時間はディスプレーによって異なるが、縮めたとしてもフレームタイムの25%が実用上の限界になっているようだ。
NVIDIAは2014年に「ULMB(Ultra Low Motion Blur)」、2023年には「ULMB 2」をG-SYNCディスプレー向けに実装しているが、どちらもG-SYNCと併用できない。G-SYNCを使用すると毎フレームごとにリフレッシュレートが変化するが、これにバックライトストロボを同期させ、なおかつチラつきがなく輝度を一定に保つような制御方式の実装が難しかったからだ。
NVIDIAはこの問題の解決に10年以上の年月を費やすことになる。その研究の集大成として登場した技術が、G-SYNC Pulsarだ。ちなみに、ASUSの「ELMB Sync」もVRRと黒挿入の同時使用を目指した技術だが、G-SYNC Pulsarほど繊細に調整できないため、フレームレート変動時のにじみが出やすいなどの欠点がある。ただし、Radeon(つまり、FreeSync)でも利用可能という点はG-SYNC Pulsarにはないメリットだ。
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