業務を変えるkintoneユーザー事例 第312回
ベテランの記憶を“現場の行動”につなげた笹森産業の2年間のチャレンジ
74歳の職人技を“kintone×評価制度”で共有知に 「背中を見て覚えろ」から脱却する仕組みづくり
2026年06月12日 12時00分更新
学びを行動に変える「チャレンジアプリ」 人は想いではなく報酬で動く
そして、動画で学んだことを、行動に移すための仕組みとして、kintoneで作成したのが「チャレンジアプリ」だ。これは、社員ごとに設定した1年の大きな目標に対し、必要となる小目標や毎週のチャレンジを設定・報告できるアプリである。
ただ、こうしたチャレンジは社員にとって、面倒なものに他ならなかった。平山さんも、「やらなくても仕事はできますし、やらなくてもいいことはやりたくないのが人の常」と当時を振り返る。佐々木社長が、どれだけ熱くチャレンジアプリの意義や想いを伝えても、社員はなかなか動かない。そこで「人参」をぶら下げることにした。
その人参とは、チャレンジの結果に対してポイントを付与し、獲得ポイントに応じて賞与の上乗せするという制度だ。効果はてきめんで、社員のやる気は目に見えて向上し、意識も少しずつ変化していった。
「設定したチャレンジだけではなく、日々のチャレンジも日報でアピールする社員も増えました。ただ目の前の仕事をこなすだけではなく、“目標達成のためにどう仕事をするか”という意識が芽生え始めたのです」(平山さん)
こうした変化は、どのような成果を生んだのか。例えば、Aさんの場合、加工量アップのチャレンジを立てたことで、1時間の加工数を16個から22個にまで増やすことができた。Bさんは、1年前に88分かかっていた作業を、今では36分にまで短縮。こうした個々の社員の成長が、会社全体の成長にもつながっている。
記憶を記録にし、皆で使えるようになって初めて資産に
同社では、不具合対応の管理などにもkintoneの活用範囲を広げている。ただ、kintoneの導入からまだ2年ということもあり、現場のすべてに浸透しているわけではない。
平山さんも最初はアプリを作るのが精一杯で、現場の活用や定着にまで視野を広げるには時間を要した。だからこそ、彼女の今後の目標は、「kintoneを日常的に触ってもらえる仕組みを作ること」だという。その一歩として、工場にタブレットを設置し、意見箱や掲示板のアプリを通じて、双方向のコミュニケーションをとり始めている。
最後に、佐々木社長は、「技術は人の身体に宿りますが、そのままでは何も残りません」と語る。「kintoneは、情報を誰かが知っているものから、誰もが知っているものへと変えてくれます。記憶を記録に変え、みんなが使えるようになって初めて、技術や情報は資産になるのです。『技術の次世代への継承』の実現に向け、今後も試行錯誤を続けていきます」と締めくくった。
セッション終了後には、サイボウズ中部営業所の柴田知佳さんとのアフタートークが繰り広げられた。
柴田さん:実際にはアプリを使わない総務として、現場の社員のために工夫された点はありますか?
平山さん:スマホもLINEも使いこなせない社員も多かったので、なるべく記入式ではなく選択肢のUIにこだわりました。
柴田さん:高齢化が進む中でのDXの推進は大きな決断だったかと思います。どういう想いで取り組みを進められたのでしょうか。
佐々木さん:とにかく「ある資源全部を有効利用したい」という想いが、まずありました。高齢者に寄り添うのももちろんですが、現状の課題の中で、DXをしないと先がないと声をかけて変化を受け入れてもらっています。
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