業務を変えるkintoneユーザー事例 第310回
kintoneを用いて現場のプライドを守るチャレンジ
「そんなことも知らんで、介護やってるんですか?」 救急隊員の一言からkintone×AIの組織変革が始まった
2026年05月29日 09時00分更新
本丸「利用者情報の集約」に挑戦 でも現場からは「無理ですよ」の声
ここからいよいよ本丸である「利用者情報の集約」に移る。「二度と救急隊員にあんなこと言わせるか」と柳井さんの鼻息も荒い。とはいえ、利用者情報といっても食事、入浴、バイタル、排泄、経過記録などさまざまなので、まずは食事からスタートした。
これまでのアプリ開発の知見があったため、アプリ自体はすぐに完成。タイムカードを同じく、ポータル画面からアプリを立ち上げ、利用者を選択、担当者、部署、名前などを選択した後、日付と食事の記録を登録する。「入力画面で注意したのは、紙媒体と見た目があまり変わらないようにしたこと」と柳井さんは説明する。出力は1週間の食事量がグラフと表で出力される。「今まで30分かかっていたものが、1分で出るようになりました。一瞬ですわ」と柳井さん。
これで救急の場面が来ても大丈夫だと考え、意気揚々と食事管理のアプリを展開したものの、社内で浸透しないという問題が吹き出した。「めちゃくちゃいいものができた」と自負していた柳井さんは、「お客さまのためなんだから、急ごうよ」と職員Aさんに詰め寄ると、「月末・月初忙しいの知ってるでしょ! 1ヶ月くらいないと無理ですよ」という反発が戻ってくる。
「相手は使いたくない」を前提に設計する
こうした感情的な議論の末、柳井さんは「救急隊からあんんこと言われて、腹たたんの?みんながんばってるのに、なんであんなこと言われなああかんねん」と言ってしまう。そうするとAさんからは「なんですか? その話、聞いたことないです」という答え。職員は柳井さんの憤りも、救急隊員の一言も知らなかったのだ。
「食事のアプリが浸透しない理由。それは忙しいからじゃなくて、目的がまったく伝わってなかった」と柳井さんは振り返る。しかし、この目的が伝わったこの日を境に状況は好転する。その職員Aさんが、率先して食事アプリの利用を現場に啓蒙してくれるようになったのだ。
今回の課題解決で気づいたことは、まず相手目線で設計すること。「kintoneやりたいという人なんて、ごく一部。だから、『相手は使いたくない』という前提で作る」と柳井さんは語る。次は目の前の課題解決ではなく、使わざるを得ないように「環境を変える」こと、そして「目的をしっかりと共有すること」だという。「私はお客さまのために共有したつもりでしたが、本当の目的は現場のプライドを守ることでした」(柳井さん)。
「私は特別な技術をもって、kintoneを浸透させたわけではありません。でも、順序を守れば、これはどの組織でも再現できると感じました。現場のプライドをkintoneを使って守ることができると確信できました」と語る柳井さん。最後、「私はエンジニアではありません。でも、組織は変えられました。『人』を変えるより、『環境』を変える。『環境』が変われば、『組織』が変わる」と講演を締めた。
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