業務を変えるkintoneユーザー事例 第309回
現場×産学連携で取り戻した“子どもと向き合う時間”
幼稚園教諭の「走り回る」仕事をkintoneとIoTでゼロに 業務改善のヒントは“ブロック遊び”にあった
2026年05月27日 11時30分更新
ICカードを顔認証に、ディスプレイを合成音声に“ブロックを入替え”
色々なブロック(仕組み)を組み合わせるという発想で、谷井先生は、いっそ「顔認証」にしたらどうかと大阪産業大学に提案。kintoneというブロックは変えず、ICカードリーダーから顔認証用のカメラへとブロックを置き換えた。顔認証で入り口が開き、園内でもう一度顔認証することで、登降園も記録される。加えて、子どもを抱っこしたままでも、ハンズフリーで記録ができるようにもなった。
その後も、カメラの機材や設置方法を試行錯誤しつつ、顔認証の弱点を補う、タブレットで記録できる打刻アプリも開発している。
さらに、預かり保育部屋の問題は、ディスプレイというブロックを「合成音声」に変えることで解決。登降園管理アプリに表示されたクラスと名前を、合成音声で園内に流した。こうすることで、預かり保育部屋がどんな状態でも、保護者と話したいが担任の先生がどこにいても、誰のお迎えが来たかが気付けるようになった。
「保護者との信頼関係において最も大事なもの、それはその日の出来事を直接伝えることです。この放送システムは、担任の先生と保護者のコミュニケーションを取り戻す仕組みにもなりました」と谷井先生は語る。
ところで、ICカードリーダーというブロックはどこに行ったのか。今では、ICカードを職員のデータに書き換え、勤怠管理アプリと連動し、タイムカードの代わりになっている。この仕組みは、大阪産業大学との連携ではなく、谷井先生ひとりで開発したものだ。
“人が走り回る”業務の改善は、kintoneとIoTが特効薬に
こうしたkintoneを中心とした仕組みづくりで、幼稚園業務は大きく変わっている。
ボタンひとつで集計されるため、料金計算の業務は月8時間から10分未満に。1日最大120件あった保護者のインターホン対応も、10件以上発生していた先生間の呼び出しもゼロになり、お迎え対応全体で月50時間の業務削減につながっている。
数字以上に大きかったのは先生の気持ちの変化だ。「自分たちが走り回る場面が減った」「ミスへの不安が減った」「子どもに向き合うことに意識を戻しやすくなった」といった声が上がるようになった。
今回のくるみ幼稚園の取り組みは、kintoneとさまざまなIoT機器・ツールを組み合わせることで実現している。例えば門の自動開錠は、保護者がICカードでタッチすると、小さなコンピューターである「Raspberry Pi」が園児台帳アプリのデータと照合し、IoT機器に物理的なボタンを押すよう指令が出され、門が開錠されるという流れだ。
こうした仕組みは、当初、大阪産業大学の先生や生徒がプログラムを書いていたが、今では「Node-RED」というローコードツールが活用されている。谷井先生は、「kintoneとNode-REDがあったからこそ、私たち現場の先生でも、運用することができている」と強調する。今は、GPSを利用して、通園バス到着時に自動で放送が流れる仕組みを構築中だ。
谷井先生は、「私はITの専門家ではなく、あくまで現場の先生です」と語る。「現場にいるからこそ、誰がどこで困っているか分かりました。色々な問題を拾って、たくさん試行錯誤を繰り返して、kintoneが真ん中でつなぎ続けてくれました。今日伝えたかったのは、幼稚園でもここまでDXができる ―― というだけではなく、kintoneは業務そのものを変えるということです」(谷井先生)
加えて、谷井先生は、「まずは作ってみて、崩れたら組み換え、必要なら足すという積み重ねで現場は変えられると、子どもたちから教わった」と振り返る。「もし皆さんの現場にも、人が走り回ってつないでいる業務があれば、その改善の一歩はkintoneとIoTで必ず踏み出せます」と締めくくった。
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