麻雀を完璧に打ちこなすロボットも登場
滑らせるように牌を持ち上げて打牌する驚異の技術
ロボットも負けてはいない。2025年7月末、上海で開かれた世界人工知能大会(WAIC 2025)のロボット展示エリアで100体近くロボットが展示された。当時すでに中国人の観衆はさまざまなロボットを見ていて、ちょっとやそっとのロボットでは驚かなくなったが、そうした中でひときわ人だかりをつくっていたのが、霊初智能のロボット向け大規模モデル「Psi-R1」を実演するブースだった。
ブースに設置された雀卓で3人と1体のロボットが黙々と麻雀を打つというもので、ロボットは人が牌を捨てるたびに一瞬アームを止め、視覚センサーで卓面の変化を確認し、淡々と動作する。その人とロボットが自然に卓を囲んでいる光景自体が、ディストピア的なのか、多くの来場者にとって新鮮な衝撃だったと多くのメディアがレポートしている。
雀卓の上にはカメラが取り付けられている。ロボット側のモニターには、ロボットの「思考過程」がテキストで表示されており、「3条(3索)を捨てる」「この牌を残す」といった、打牌選択の理由を中国語で確認できるようになっていた。
このロボットは、山を崩さずに1つだけ取り、他の牌に触れずに自分の牌だけを並べ替える作業もできる、ミリ単位の高難易度の精密操作可能なのだが、その困難たるやベリー系の果物などの傷つきやすい物体をつかみ分けるマニピュレーションと同等かそれ以上の難度だとされ、「麻雀牌の縁を滑らせて持ち上げる」ような人間らしい指先の動きまで模したと紹介されている。
認識して思考し、正しく打つ。これを何十分にもわたる人間との対局で動作し続ける麻雀ロボットを展示したのには意味がある。Psi-R1はロボットそのものではなく、ロボットに載せる長時間の考えながら動く仕事をやらせるための、Vision-Language-Action(VLA)+強化学習モデルなので、その事例として麻雀が打てるようにしたロボットを展示したというほうが正確だ。
中国製ロボットの技術進化はスゴいが
その応用例として、広く愛されている麻雀が使われた
霊初智能が麻雀を選んだ理由はいくつかある。まず1つ目に、麻雀を打つということは、プレイヤーは牌が見えず情報が不十分な状況下で、リスクと期待値を天秤にかけながら長期的な報酬の最大化を狙うことが求められる。これは配送ルートの最適化や在庫補充の判断など、現実世界の意思決定に近い構造を持つと説明される。
2つ目に長時間に渡り、麻雀牌をつかんで捨てる操作を繰り返す。Psi-R1に接続されたロボットハンドが長い間誤動作せず動くことをアピールするのにも使える。
3つ目に雀卓を囲んで、人とロボット、ロボット同士、ロボットと環境が複合的に関わり合うインタラクションの実験場として設計されていること。そして麻雀は中国で国民的遊戯で誰もがわかり、ロボットで再現す難しさが直感的にわかってくれるということも大きな理由だ。
景気が悪いと言われているが、海外に進出とか、ロボットやAIなどで技術力が高く応用が効きそうな製品にはベンチャーキャピタルなどによる資本のバックアップがつく。今後もスマートグラスやロボットを使った麻雀ソリューションのような何かがでてくるはずだ。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」、「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)、「移民時代の異国飯」(星海社新書)などを執筆。最新著作は「異国飯100倍お楽しみマニュアル ご近所で世界に出会う本」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク)
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