最新パーツ性能チェック 第475回
Core Ultra 200S Plusシリーズを検証【前編】
Core Ultra 7 270K Plusは定格運用で285K超え!Core Ultra 5 250K Plusは265Kにほど近い性能
2026年03月23日 22時00分更新
Core Ultra 200S Plusシリーズの新機能は2つ
Core Ultra 200S Plusシリーズのアーキテクチャーは据え置きだが、新機能が2つ追加された。まずは4ランク(4R)CUDIMMへの対応だ。DDR5のモジュールを1枚だけ装着すると64ビットのメモリーチャネルに接続され、同容量で2枚挿すとさらに別のメモリーチャネルに接続される(これがデュアルチャネル)。だが、DDR5ではモジュール内部にもメモリーチップを動かすための系統を複数持てる。
この系統を1つしか持たないDDR5なら1RのDDR5モジュール、2つ備えているならば2RのDDR5モジュールという感じだが、Core Ultra 200S Plusシリーズからは4RのCUDIMMも運用可能になった。1枚のモジュールの表と裏に2Rの回路が実装されているような感じ、と考えよう。
4RのCUDIMMを抽象化するとこんな感じになる。まずChip Selectでアクセスしたいrankを指定してから、対応するSubchannelを経由し、Subchannelに接続されているメモリーチップにアクセスするイメージだ。メモリーチップからデータが出てくるまでの待ち時間の間に次のrank、さらに待ち時間の間に次のrank……とすることでレイテンシーが軽減でき、実効速度も向上する
ただし、4RのCUDIMMはこのメモリー不足のご時世を考慮すると相当高価になるだろう(筆者も実物をまだ拝んでいない)。メモリーを山のように搭載したい人、かつCUDIMMという現状インテル製プラットフォームでしか利用できないモジュールに大金を突っ込める人のためのものだ。
もう1つの新機能はIntel Binary Optimization Tool、略して「Intel BOT」である。これはインテルの「ソフトウェア最適化」に対するアプローチが大きく変わったことを示す機能である。
ゲームやアプリを開発する場合、そのゲームやアプリの開発段階で最高の状態に最適化できれば苦労はないが、大抵の場合はあとから最適化されることになる。開発スケジュールが押していて手が回らない場合もあるし、最新CPUのアーキテクチャーでは今までの最適化では足りなくなる場合もある。OSが進化して新たな最適化が必要になる場合もあるだろう。
インテルが第12世代Coreプロセッサーの時に出した最適化ツールがIntel Application Optimization、略して「Intel APO」だ。これはCPUのコア数を見て、全コアに処理を分散させてしまうようなゲームが起動した際、適切なコアに処理を振り分けるようにOSスケジューラーに働きかけるツールだ
Intel APOはIntel Thread Directorの判断をオーバーライドする形で機能するので、システムレベルの最適化だ。Intel DTT(Intel Dynamic Tuning Technology)の有効化とドライバー導入が必要だが、最近のマザーボードはデフォルトで有効になっていることが多い
もちろん、最適化が必要と判断された際に開発者がすべて対応してくれれば問題ない。しかし、現実はそううまくいかないこともある。対応するスタッフがいない場合、コスト的に無理と判断される場合、果ては開発チームが消滅している場合すらある。そして、インテル的に厄介な点は、すべてのゲームやアプリがCore Ultra向けに最適化されているわけではないこと。とくに、家庭用ゲーム機でも販売しているタイトルは、AMDのアーキテクチャー用に最適化されている場合もある。
Intel BOTはこうした「アップデートが止まった」とか「家庭用ゲーム機向けに最適化されている」ゲームを、Core Ultra 200S Plusシリーズでより効率良く動作させようという機能である。ハードウェアの進化は先にしか進まないが、Intel BOTはうしろを向いて遅れたものをすくい上げようという機能なのだ。
Intel BOTの最適化前(左)と最適化後(右)のイメージ。最適化されておらず隙間だらけで積まれた「テトリス」のピースが、Intel BOTによって隙間なく詰め込まれる。つまり、より効率良く処理できる(テトリスなら隙間があまりない状態)ようになる、というわけだ
前置きが長くなったが、Intel BOTはゲームやアプリが特定の機能をコールする処理をフックして、Intel BOTで最適化済みの処理にオーバーライドする形で実行される。つまり、アプリすべての機能が最適化されるのではなく、昔のままでは非効率な特定処理にターゲットを絞り、その処理がからむところだけを高速化する。NVIDIAのDLSSオーバーライドやAMDのFSR 4のオーバーライドをイメージすればよいだろう。
Intel BOTを利用するにはIntel APOの利用が大前提となる。Intel APOのアプリをCore Ultra 200S Plusシリーズで開くと、そこにIntel BOTのスイッチが出現する。スイッチを切り替えたら「システムを再起動」することで効果が発揮される。現状ではIntel BOTはオフがデフォルトになっているが、そのうちオンがデフォルトになるのかもしれない。
Core Ultra 7 270K PlusでIntel APOのアプリを開いた状態。最適化させたいゲームを選んでオンにする形。ちなみに、Intel APOとIntel BOTのスイッチが並んでいる場合、Intel APOのスイッチをオフにするとIntel BOTのスイッチは操作不可になる
このIntel BOTはAppleにおけるRosetta(かつてはPowerPC→x86、今はx86→armのリアルタイム変換)のようなリアルタイム変換ではなく、事前に生成されたプロファイルを通じて、実行時にシステムコール呼び出しをリダイレクトする形で機能する。
こういった仕様であるため、現在Intel BOTは基本的にシングルプレイヤーゲーム専用となっている(FF14のみ例外?)。アンチチート機能があるゲームの場合、Intel BOTが理由でBanされかねないためだ。インテルはゲームメーカー側と調整を行っており、承認が取れ次第Intel BOTのプロファイルに追加する予定だという。
インテルはIntel APOを含め、さまざまな最適化のためのツールやドライバーを出しているが、数が多すぎて面倒になってきたことも確かである。そこで、現在ではIntel Platform Performance Package、略して「Intel PPP」という統合パッケージを提供している。これはIntel APOやIntel BOTを利用するために必要なアプリやドライバーを1パッケージにしたもの。AMDのようにチップセットドライバーといっしょにしてしまえばよいと思うのだが、インテルによればまだ時期尚早とのことだ。

この連載の記事
-
第474回
自作PC
Core Ultra X9 388H搭載ゲーミングPCの真価はバッテリー駆動時にアリ Ryzen AI 9 HX 370を圧倒した驚異の性能をご覧あれ -
第473回
デジタル
Ryzen 7 9800X3Dと9700Xはどっちが良いの?! WQHDゲーミングに最適なRadeon RX 9060 XT搭載PCの最強CPUはこれだ! -
第473回
自作PC
「Ryzen 7 9850X3D」速攻検証:クロックが400MHz上がった以上の価値を見いだせるか? -
第472回
sponsored
触ってわかった! Radeon RX 9070 XT最新ドライバーでFPSゲームが爆速&高画質に進化、ストレスフリーな快適体験へ -
第472回
自作PC
Core Ultraシリーズ3の最上位Core Ultra X9 388H搭載PCの性能やいかに?内蔵GPUのArc B390はマルチフレーム生成に対応 -
第471回
デジタル
8TBの大容量に爆速性能! Samsung「9100 PRO 8TB」で圧倒的なデータ処理能力を体感 -
第470回
デジタル
HEDTの王者Ryzen Threadripper 9980X/9970X、ついにゲーミング性能も大幅進化 -
第469回
デジタル
ワットパフォーマンスの大幅改善でHEDTの王者が完全体に、Zen 5世代CPU「Ryzen Threadripper 9000」シリーズをレビュー -
第468回
自作PC
こんなゲーミングPCを気楽に買える人生が欲しかった Core Ultra 9 285HX&RTX 5090 LTで約100万円のロマンに浸る -
第467回
デジタル
Radeon RX 9060 XT 16GB、コスパの一点突破でRTX 5060 Tiに勝つ - この連載の一覧へ
















