Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第3回
【株式会社Stroly・高橋真知氏】「手描きなど様々な地図→視点の地図」が人を動かす。位置情報×ナラティブが書き換える、歩行の未来
オーバーツーリズムを超え、物語(ナラティブ)で「人を流す」技術
玉置: ここで2つ目の質問、オーバーツーリズムについて伺いたいんです。今、各地で混雑が大きな課題になっていますが、Strolyは「物語」で人の流れを変えていますよね。先日、メタ観光の真鍋さんとお話しした際、Googleマップだと街が「べたっ」と平面に見えて、お茶の水の渓谷のような「高低差」や「地形」の魅力が伝わりにくいという話が出ました。Strolyの地図なら、そのあたりもデザインで解決できそうですね。
高橋: おっしゃる通りです。イラストマップだと山並みや茂みを強調して描けるので、平面でありながら実際の「体感的な奥行き」が出せるんです。面白いのが、日本の絵巻物のように「行ってほしくない場所」をあえて「雲」で隠すという手法も使っています。
玉置: 雲で隠す! それは面白い。住宅街への迷い込み防止とかですか?
高橋: そうです。今、京都の嵐山でまさにその「ポジティブな分散観光」の実証実験をやっています。嵐山って、渡月橋や竹林のあたりに人が一極集中して、歩行困難やポイ捨てが深刻なんです。そこで、京都市さんと協力して、あえて「駅から北側のエリア」を中央に据えたマップを公開しました。
玉置: 中心をずらすことで、エリアの範囲を「再定義」したわけですね。
高橋: はい。さらに地図の中にライブカメラを埋め込んで、混雑具合をリアルタイムで見られるようにしました。でも、ただ「混んでるから行くな」と言うのではなく、空いている北側のエリアに磯田道史先生(歴史学者)の解説動画などを置いて、「こっちの方が面白い物語があるよ」とポジティブに誘うんです。
玉置: 実際、人の動きは変わったんですか?
高橋: 劇的に変わりました。ジオテクノロジー社さんの一般人流データと比較したのですが、一般的な観光客の8割が橋の周辺に滞在するのに対し、Strolyのユーザーは3割以上、スタンプラリー実施時には参加者ほぼ全員が北側の静かなエリアまで足を運んでくれました。
玉置: まさに「幸せな観光分散」ですね。
高橋: もう一つ、デザインの力だなと思ったのが「雲」の効果です。Googleマップだと住宅街の細い道も克明に出ますが、Strolyでそこを「雲」や「木」で覆い隠すと、観光客の侵入率が一般に比べて激減したんです。「ここはあなたに関係のない場所ですよ」というメッセージが、言葉ではなく直感で伝わる。
玉置: 警備員を立てるようなネガティブな規制ではなく、地図の描き方ひとつでマナーや行動変容を促す。これはASCII読者のエンジニアやデータサイエンティストにとっても、UI/UXが社会課題を解決する最高の事例になりそうです。
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