Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第3回

【株式会社Stroly・高橋真知氏】「手描きなど様々な地図→視点の地図」が人を動かす。位置情報×ナラティブが書き換える、歩行の未来

文●玉置泰紀(一般社団法人メタ観光推進機構理事)

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「正確な地図」の先にある、歩行者の「愛着と行動」をどう設計するか

玉置: ここからは具体的なお仕事の話を。これ、今日の本題でもあるんですが、一つ目に伺いたいのが「正確な地図と、それを使う歩行者の愛着・行動をどう設計するか」という点です。Googleマップは最短距離を教えてくれる情報のインフラですが、Strolyは手書きのマップに現在地が出る。あえての「歪み」や「イラストの温度感」がある体験型メディアですよね。こうしたサービスを実際に形にしていくきっかけや、その設計思想についてお聞かせください。

高橋: きっかけは、イラストマップに現在地を出したときに感じた「急な没入感」という私自身や、共同創業者の高橋徹の原体験なんです。最初は、著作権の切れた古地図を「ちずぶらり」に登録して海外のコレクターさんにも許可をもらって歩いてみたんですが、どこを歩いても急に街の顔が見えてくる。

玉置: 街の顔、ですか。

高橋: ええ。例えば「溜池山王」を歩いていて、地図に本当に池が描いてあるのを見ると「あ、本当に溜池があるじゃん!」と気づく。あるいは「紀尾井町」で、紀州・尾張・井伊の屋敷跡が結合しているところに自分が「すとん」と立っている感覚になる。現在地を基準にすると、周りの見え方が劇的に変わるのが面白くて。

玉置: 現在地が「歴史」や「物語」と結合する瞬間ですね。

高橋: 共同創業者の高橋徹はAIの研究者ですが、私はもともと美術史がバックグラウンドで、シカゴ美術館などでインターン経験もありました。ただの「絵」だったものにGPSがポンと入っただけで、主観的な世界が自分の体験に繋がっていく。その「寄り道」の楽しさこそが、地域の体験を深くし、好きになってもらうことに繋がるんだと確信しました。サービス名の「Stroly」も、居酒屋で考えたんですけど(笑)、「Story(物語)」と「Stroll(散策)」を掛け合わせたものなんです。

膨大なアーカイブと「神代植物公園」の超絶書き込み

玉置: かつて「東京文化資源会議」のプロジェクトで、文京区・千代田区・台東区の三区地図協議会と一緒にやりましたよね。あの時、膨大な数の商店街マップをアーカイブしたり、神田祭でお神輿の位置をリアルタイムで出したり。あれも面白かった!

高橋: 楽しかったですね! あのお仕事があったから、大量の地図をマッピングするノウハウもできましたし、同じ場所でも「文学」や「自然」など切り取り方でこんなに見え方が違うんだと、私たちも勉強になりました。

玉置: 最近の自治体案件では、どういったものが印象に残っていますか?

高橋: 去年、東京の神代植物公園さんとご一緒したのですが、これがもう「超絶」なんです。花の一つひとつまで書き込んだ、ものすごいクオリティのイラストマップをプロデュースしまして。

玉置: 僕、調布に住んでいたから分かりますけど、あそこの植物の量は凄まじいですよね。

高橋: そうなんです。メタセコイアの木が冬は枯れているけれど、夏には緑のステッカーを貼ったり、秋には紅葉バージョンにしたり。季節ごとに「貼り剥がし」ができる機能を運用されているんです。

玉置: 地図が生きているんだ。

高橋: 実際に歩くと、ゲームの世界に迷い込んだようなバーチャル感があるのに、目の前には本物の植物がある。普通に歩くよりも全然楽しい、面白いという反響をいただいています。大正時代の鳥瞰図絵師・吉田初三郎さんの作品で歩くのも面白いですが、自分たちでロケハンして、地域の皆さんと「何を伝えたいか」を掘り下げて作る地図には、やはり特別なストーリーが宿りますね。

「神代植物公園&深大寺公式探索マップ」

「明治初年神田祭巡行路図」東京文化資源区プロジェクトで神田祭巡行路を古地図に表示

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