Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第3回
【株式会社Stroly・高橋真知氏】「手描きなど様々な地図→視点の地図」が人を動かす。位置情報×ナラティブが書き換える、歩行の未来
街づくり、街おこし、そして都市計画。その最前線には、常に常識を書き換える「キーマン」たちがいる。元ウォーカー総編集長であり、長年日本の街を見つめ続けてきた玉置泰紀が、いま最も話を聞きたい相手に直撃、大きく変容する日本の「新しい街の形」を紐解いていく。
第3回は、イラストマップとGPSを連動させるプラットフォームを展開する株式会社Stroly(ストローリー)の代表、高橋真知氏。Googleマップが「効率」を極める一方で、Strolyが追求するのは、あえて「歪み」や「物語」を残した体験型の地図だ。位置情報テクノロジーが、単なる移動をどう「冒険」に変えるのか。世界が注目する日本発の地図メディアの真髄に迫る。
【高橋真知氏プロフィール】
高橋真知 米国カールトン大学卒業(美術史専攻)。シカゴ美術館などでインターンを経験し、帰国後、ITベンチャーに新卒入社。関西学研都市のATRにてミュージアムメディア事業部を立ち上げ、傘下の子会社の社長に就任。 2016年にMBOを行い、京都を拠点とするスタートアップ「株式会社Stroly」を創業。エリアの魅力を発信するプラットフォーム「」を立ち上げる。 グッドデザイン賞受賞。SXSW Pitch 2019では日本人初のファイナリストに選出。関西財界セミナー賞2026「輝く女性賞」受賞、Forbes JAPAN「Women In Tech 30」選出。
「ちずぶらり」から「Stroly」へ。iPhone以前から始まった「位置情報×イラスト」の実験
玉置: 実は僕、2026年6月いっぱいでKADOKAWAを辞めることになりまして。その節目に、これまでお世話になった方々にインタビューを……という、極めて個人的な動機からこの連載を始めています(笑)。Strolyさんとはずっと「何か一緒にやろう」と言いながら、北九州のプロジェクトなど一部に留まっていたので、ここで改めてしっかりその神髄を伺い、未来に引き継いでいきたいなと。
高橋: そう言っていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
玉置: 高橋さんとの出会いは、まだサービス名が「ちずぶらり」だった頃ですよね。ATR(国際電気通信基礎技術研究所)発のベンチャーとして。
高橋: そうです。もともとはATRという、京都の関西文化学術研究都市にある通信系の研究所の社内ベンチャーとしてスタートしました。ロボットの石黒浩先生などもいらっしゃる、AIやロボットやロボットの研究が盛んな場所です。
玉置: 石黒先生!あの自分そっくりのロボットが受付にいたりする、あの研究所ですね。
高橋: はい、出社したら受付に石黒先生(のロボット)が座っているのは日常風景でした(笑)。共同創業者の高橋徹もATRで人工知能の研究をしていて、その中で生まれたのが「Stroly」の種になる技術だったんです。
iPhone以前、「お弁当箱」のような端末で街を歩いた
玉置: 最初はテーマパークの地図をデジタル化したのがきっかけだったとか。
高橋: ええ。東映太秦映画村の地図をそのまま使って位置情報を出してみたんです。当時のGoogleマップは搬入路まで正確に描かれていて、テーマパークとしての没入感が削がれていた。でも映画村のイラストマップなら、時代劇のセットが描かれていてワクワクする。そこに「現在地」が出せたら面白いよね、と。緯度経度をイラストに付与するシステムを編み出しました。
玉置: それが2008年頃。まだiPhoneが日本で出るか出ないかの時期ですよね。
高橋: そうなんです。最初はiPhoneじゃなくて、シャープの「お弁当箱」みたいなタッチパネル端末にGPSを外付けして実験していました。その後、PSP(プレイステーション・ポータブル)やニンテンドーDSのブラウザも試したり……。そんな時にiPhoneが登場したんです。「これだ!」と思いましたね。ブラウザがしっかりしていて、GPSも標準搭載されている。
玉置: 僕もiPhoneが日本で発売された日に心斎橋で買って、アクティベートした瞬間に「あ、これでウォーカー(雑誌)は終わったな」と直感しました(笑)。
高橋: 私たちも同じです。それまでのモバイルの概念が全部変わるな、と。私たちはとにかく「ブラウザ」で動くことにこだわっていました。iモードのようなクローズドな環境ではなく、インターネットとブラウザがあればどこでも体験できる。そのこだわりは、独立した今も続いています。
「研究」から「ビジネス」へ、2016年の独立
玉置: 2016年に独立して、2017年から「Stroly」に。研究からスタートアップへと舵を切ったのはなぜですか?
高橋: 研究所の中にいると、研究資金が尽きたらプロジェクトが終わってしまうんです。新しい人を雇うことも、大きな資金調達も難しい。でも、この技術は世界中の看板やパンフレットの地図をすべてメディア化できる可能性がある。だったら自分たちで株式を取得して、外から資金を調達して、持続可能なビジネスとして育てようと決意しました。
玉置: その頃、政府のスタートアップ支援プロジェクト「始動」の1期生だった矢野さん(※注:元メンバー)を介して、僕とも深く繋がっていったんですよね。当時は「ちずぶらり」の印象が強かったけれど、高橋さんたちが狙っていたのは、もっと大きな「地図のプラットフォーム化」だった。
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