このページの本文へ

石川温のPCスマホニュース解説 第268回

mineoが“フルMVNO”に挑む理由 格安スマホ市場の変化が背景に

2026年02月02日 07時00分更新

文● 石川温

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 MVNO市場が新たな局面を迎えそうだ。

 MVNOサービス「mineo」を手がけるオプテージが「MVNOビジネスの支援事業」を2026年下期、「フルMVNO事業」を2027年下期に、それぞれ開始すると発表したのだ。

 MVNO市場は「格安スマホ」として、緩やかな成長を遂げてきた。

 2020年ごろの菅義偉政権による「官製値下げ圧力」によって、NTTドコモ「ahamo」が誕生。大手キャリアが大胆な値下げプランを提供したことで、MVNOは苦しい立場に追いやられた。

 そんななか、MVNO市場で久々のヒットと言えたのが、2025年に登場した「JALモバイル」だ。

 日本航空が、JALマイレージバンクの会員向けに「マイルが貯まりやすいMVNO」として、通信サービスを提供。「2GB 850円で国内航空券が手に入る」という触れ込みで、一気に契約を獲得したのだった。

企業のMVNO参入が相次いでいる

 実際にJALモバイルで通信サービスを提供するのは日本航空ではない。MVNO最大手のIIJがサービス基盤を提供しており、通信プランや会員の管理システムなどもIIJmioと全く一緒となっている。

 JALにとってみれば、JALマイレージバンクの会員における顧客満足度を上げることができるし、IIJにとってはJALという接点により、これまでリーチできなかった新たな顧客層を開拓できる。

 ここ最近、企業に対して、MVNOサービスへの参入を支援するMVNOが増えている。今回、mineoが発表した「MVNOビジネスの支援事業」もJALモバイルの成功を受けて、影響を受けたと言ってもいいだろう。

 minioではリーチできない顧客基盤を持つ企業を掘り起こせるか。また、競合である他のMVNOに先に奪われないかが、成功のカギとなる。

MVNOとしての個性を出すのは至難の業

 2027年下期に開始するというフルMVNO事業はオプテージにとってリスクを伴うビジネスといえる。

 これまでMVNOはNTTドコモやKDDI、ソフトバンクといった通信キャリア(MNO)の設備を借りてサービスを提供してきた。

 MVNOは「仮想移動体通信事業者(Mobile Virtual Network Operator)」とも言われ、基地局はもちろん交換機やSIMの発行や管理、加入者管理装置など、ほとんどのMVNOに間借りしている。

 MNOにお願いをすれば、MVNOになれてしまうので、参入障壁はとても低い。総務省によれば、2024年12月末現在で日本国内にMVNOが1991社あり、1年で100社近くも増えている。

 当然のことながら、3社もしくは4社という限られた通信キャリアから回線や設備を借りてサービスを提供するとなれば、料金体系など他社と似たようになってしまい、差別化はしにくい。

 一般ユーザー向けだけでなく、防犯カメラなどIoT向けのMVNOなども増えているが、MVNOとして個性を出していくのは至難の業になりつつあるのだ。

 そこでオプテージでは、これまでMNOから借りていた音声の交換機、SMS交換機、加入者管理装置などを自社で保有し、基地局以外は一体的に管理、運用する体制を整えるという。今回、まず手始めにau回線を使うことになるが、すでにKDDIには申し入れをしている。

“フルMVNO”として多様なサービス提供

 フルMVNOに関しては、2018年にIIJがすでに参入している。しかし、IIJはデータ通信のみであった。一方で、オプテージは音声通話にも対応しているというのが他社にはない特徴となる。

 ここ最近、090や080、070といった電話番号を使った音声通話というのは使用頻度が減っている印象がある。「データ通信のみのフルMVNO」でもいいような気がするが、同社のモバイル事業推進本部モバイル事業戦略部長の松田守弘氏は「音声があるからこそ、メインのスマホとしての回線になりえる。音声やデータの枠組みを超えたサービスなども検討し、多くの機能を備えたフルMVNOを目指したい」と語る。

 では、フルMVNOになることでどんなサービスが提供できるようになるのか。

mineoの資料では「かけ放題メニュー等の通話サービスの柔軟な設計」「海外ローミングの提供」といったサービスを上げている。特に海外ローミングはこれまでのMVNOでは提供できていなかったサービスだけに、是非とも欲しいと思う人もいるだろう(その数は少ないと思われるが)。

 アンテナピクトの部分はMNOの名前ではなく「mineo」にすることができる。

 APIを開放することによって、新たなコミュニケーションサービスを作り出すことも不可能ではない。また、SIMアプレットと呼ばれる、SIMカードの中にプログラムを格納することで、新たな付加価値を提供することもできると見られている。

 自前で設備を持ち、フルMVNOになることで、他のMVNOにはできない、多様なサービスを提供できるようになるだろう。

ファンサイト「マイネ王」に活路か

 ただ、問題は画期的で革新的な「フルMVNOしかできない、新たなサービス」を生み出せるかどうか、だろう。

 このあたりは、どう知恵を絞るかが重要となる。

 ただ、mineoでは「マイネ王」というmineoユーザーやスタッフが交流できるファンサイトが存在する。

 「フルMVNOとして、mineoがどんな面白いサービスを提供すれば良いか」をmineoファンと一緒に創り出せると、さらにMVNOとしての個性を発揮できるのではないだろうか。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

カテゴリートップへ

この連載の記事

ASCII倶楽部

注目ニュース

  • 角川アスキー総合研究所

プレミアム実機レビュー

ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン