このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

データ・エコシステム構築の未来まで語られたprimeNumberイベント・セッションレポート

サイバー攻撃を乗り越えたのはニコニコだけじゃない KADOKAWA、データ基盤移行の舞台裏

2026年01月14日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2024年6月、KADOKAWAグループを襲ったサイバー攻撃。この事件を受け、グループ会社のドワンゴはニコニコサービスのフルクラウド化を前倒しした。一方で、KADOKAWAグループのデータ基盤もまた、復旧と同時に「アーキテクチャの見直し」に迫られたという。

 データ基盤サービスのprimeNumberは、2025年11月末、年次カンファレンス「DATA SUMMIT 2025」を開催。KADOKAWAのデータエンジニアリングチームである塚本圭一郎氏、中野貴文氏のセッションでは、ハイブリッドクラウドから「フルクラウド」へ、オールインワンCDPから「コンポーザブルCDP」へと、データ基盤の刷新に取り組んだ“激動の一年”の動きが語られた。

「未曾有のサイバー攻撃を乗り越えて、KADOKAWAが挑んだコンポーザブル型データ基盤への道」と題したセッションをレポートする

想定外のサイバー攻撃によりデータ基盤のアーキテクチャ見直しへ

 60社を超える企業からなる総合エンターテインメント企業・KADOKAWAグループ。ニコニコやカクヨムといったUGCサービス、カドコミやカドストといったデジタル事業の顧客データから、紙書籍の売上や管理会計のビジネスデータまで、多様なデータを扱っている。

 これらのデータを利活用するための基盤を担う塚本氏らデータエンジニアチームは、2024年度、KADOKAWAのデジタル事業の顧客データを扱うCDP(顧客データ基盤)の移行プロジェクトに着手した。これは、Treasure Dataによって構築された基盤である。

KADOKAWA デジタルマーケティング局 データマネジメント部 部長 塚本圭一郎氏

 移行の主な理由は、歴史的な経緯から“4つのサービス(Snowflake/Amazon Redshift/BigQuery/Treasure Data)の並列運用”になっていたクラウドDWHの統合である。Treasure DataをSnowflakeに統合することで、コストと運用負荷を削減する狙いだった。2024年度内に新ECサービスのリリースが予定されていたこと、Treasure Dataの契約更新も迫っていたからことから、時間的な制約が存在していた。

 このCDP基盤の移行にあたり、同チームがとったアプローチが、「オールインワンCDP」から「コンポーザブルCDP」へのシフトである。Treasure Dataは、タグマネジメントからETL、ユーザーセグメンテーション、リバースETLまで、デジタルマーケティングに必要な機能がオールインワンで揃っており、「ゼロからCDPを構築するには良い選択肢」だと塚本氏は語る。

 ただ、複数のクラウドDWHを並列運用するようになると、オールインワンCDPは“割高”だった。そこで、マルチクラウド対応のSnowflakeを軸に、足りない機能は特化型SaaSで補う形の「コンポーザブルCDP」(もしくはModern Data Stack)を採用。多様な事業の異なるニーズに応えられる柔軟性も決め手となっている。

「オールインワンCDP」から「コンポーザブルCDP」へのシフト

 しかし、ここで想定外の事態が発生する。2024年6月にKADOKAWAグループを襲ったサイバー攻撃だ。自社運用のプライベートクラウドが全面的に利用できなくなり、Snowflakeにはアクセスできるものの、プライベートクラウド上に載せていた主要機能が軒並み停止してしまう。

 こうして、ハイブリッドクラウドからフルクラウドへのシフトが決定的となり、前倒しする形で、Snowflake周辺のSaaSを整備する必要に迫られた。「プライベートクラウドの復旧を待つ選択もあったが、Snowflake自体の復旧も社員から求められた。2024年度は、緊急度(復旧)と重要度(移行)が高い2つの案件が同時並行する年になってしまった」(塚本氏)

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

アクセスランキング

  1. 1位

    TECH

    訓練だとわかっていても「緊張で脇汗をかいた」 LINEヤフー、初のランサムウェア訓練からの学び

  2. 2位

    ITトピック

    若手が言わない“本音の退職理由”上位は/「データ停止は景気後退よりも企業の脅威」6割/クライアントに告げずAI活用するフリーランス、ほか

  3. 3位

    ビジネス・開発

    最悪のシナリオは「フィジカルAI」による基幹産業の衰退 日本の勝ち筋は、“同期技術”と“ドメイン知識”

  4. 4位

    Team Leaders

    ファイル名が命名規則に合っているかの自動チェック、Power Automateのフローで実現しよう

  5. 5位

    TECH

    糖尿病超早期を採血なしで検出、予防へ! 代謝や臓器のつながりに着目した予防法開発

  6. 6位

    データセンター

    液冷技術の最先端が集うイノベーションラボ「DRIL」、印西のデータセンターに現わる

  7. 7位

    ビジネス

    廃校がAIの心臓部に!? 地方の遊休施設を「AIデータセンター」に生まれ変わらせるハイレゾの挑戦がアツいぞ

  8. 8位

    TECH

    “GPUなし”ノートPCで動くLLMで、ローカルAIエージェントを自作する

  9. 9位

    Team Leaders

    バックオフィス業務もAIに“丸投げ” マネーフォワードが「Cowork」機能を2026年7月に投入へ

  10. 10位

    TECH

    合成ゴムが及ばない天然ゴムの高性能のメカニズムを、現象発見から100年後に解明

集計期間:
2026年04月09日~2026年04月15日
  • 角川アスキー総合研究所