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「ミライアップデート・ラボ 2025 by ASCII」開催レポート

中小企業が“AIを味方にする”秘訣は「やってみよう」の気持ち 現場視点のパネルディスカッション

2025年11月25日 11時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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「やってみよう」という気持ちさえあれば、AIがすべて手伝ってくれる時代

 まずは「データ活用&AI活用をすると 実際のところ、何ができるの?」というテーマです。

 デイサービス事業を運営するCLOVERの野口さんは、各地の事業所に勤務する社員からの弔事連絡(親族が亡くなった際の連絡)を効率化するために、連絡用のWebフォームを作った経験談を披露しました。

 ひんぱんに発生するわけではない弔事連絡は、連絡する側の社員も慣れておらず、会社として必要な情報(いつお葬式があるのか、いつまで休みたいのかなど)がうまく集まらないという課題に悩んでいたとのこと。必要事項を備えた連絡フォームを作り、社員にそのURLを配布すれば良さそうですが、具体的にどうすればいいのか分かりません。

 「AIに『どうやって作ればいいかな?』と相談したところ、『GitHubを使えば無料でURLが発行できます』『GAS(Google Apps Script)でメールを送信できます』『コードはすべてAIから提供できます』などと答えてくれました」(野口さん)

 社員の利便性を高めるべく、静的な入力フォームではなく入力内容に応じて入力項目が動的に追加されたり、入力内容に問題がないか自動チェックをしたりといった処理も付け加えたいと考えた野口さんですが、エンジニアではないためコードは書けません。そこで、ClaudeとChatGPTのウィンドウを並べて開き、どんなコードを書けばいいのかも相談してすべて教えてもらい、最終的には弔事連絡フォームを完成させることができました。

 野口さんは「ほかの業務も行いながら、2~3日で完成した」「びっくりするほど簡単にできた」と振り返ります。なお、AIは「いい感じにやっといて」では通用しませんから、「自分が実現したいことを、できるだけ“解像度高く”伝えること」が必要だと付け加えました。

野口さんがAIと相談を繰り返しながら完成した連絡フォーム。AIはコードだけでなく、Webページをホストする無料サービスやその登録方法まで教えてくれたそうです

 KDDIアジャイル開発センターの御田さんは、野口さんの体験談は、最近エンジニア界隈で注目されている「AI駆動開発」そのものだと説明します。

 「『AI駆動開発』というキーワードだけ聞いたら、ビジネスマンには関係ないでしょ? と思われるかもしれません。でも、実はもう、AIを使えば誰でもコードが書ける、プログラムが作れる状態になっています。必要なものは『やってみようかな』と思う、その気持ちだけです!」(御田さん)

 もちろんやりたいこと(目的)によっては、コードすら書く必要がなく、既存のWebサービスなどを使って解決できることもあると思います。野口さんのように、まずはChatGPTなどのツールに「こういうことがやりたいんだけど……」と相談することから始めてもよさそうです。

きれいなデータを準備しなくてもよいし、なければ「作る」のもよい

 次のテーマは「データが“ない”(整理されていない)企業は どうしたらいいの?」です。

 DXを進めたい、AIを活用したいとき、たいていは「まずは社内にあるデータを整理しましょう」という話になりますが、そもそもそれって本当なのでしょうか? 御田さんは、必ずしもそうではなくなってきている、と説明します。

 「AIを活用したいと言うと、『まずは情報をデジタル化したうえで、そのデータをきれいに加工して、AIが読み込めるようにしないとアカンのやで』などと言われたりします。正直、それをやっていると日が暮れるんですよね(笑)。ただしいまは、『デジタル化されたデータがFileMakerなどのデータベースにあります』くらいの状態になっていれば、MCP(Model Context Protocol)の仕組みを使って簡単に、AIエージェントにそのデータを参照させることができます。すごくきれいなデータにしなくても、とりあえずAI自動化の検証(POC)くらいはできちゃいます」(御田さん)

 もちろん、きれいに加工されたデータを使ったほうが、AIの処理精度は高まります。ただし、そこまでの精度が必要なのかどうかはケースバイケースでもあります。データ整理の段階でつまずくよりは、すでにあるデータで検証まで進めてしまって、あらためてデータをきれいにする必要があるかどうかを考える――そんなやり方を検討してみるのもよいでしょう。

 またソラコムの松下さんは、「必要なデータがなければ『作る』というアプローチもあります」と語りました。IoTやAIの力を借りれば、これまで存在しなかったデータを「作る」ことも簡単にできるようになっています。

 「たとえば、Webカメラで撮った映像をAIに解析させて、『メーターの数値がいまいくつになっているか』『いま何人の人が映っているか』といったデータを簡単に取得できるようになっています。さらに、人間が見ていない時間帯も含めて、データを自動的に記録させることもできます。『データを収集しようという意志』さえあれば、データがなくても作ることができる。そう考えることが必要ではないでしょうか」(松下さん)

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