最新ユーザー事例探求 第64回
「Azure OpenAI Service」を活用した高速かつ低コストな顧客分析
1000人アンケートはわずか45分間 日本ハム、AI生成の“仮想顧客”分析で商品開発を加速
2025年09月24日 08時00分更新
“Azure OpenAI Serviceの活用基盤”と“DXチャレンジ制度”
日本ハムでは、2024年4月から、GC分析の開発プロジェクトをスタート。「Azure OpenAI Service」を活用し、「GPT-4o mini」によって開発を進めた。また、UIアプリはPythonによって内製しており、クライアントPCで動作する。
この取り組みのベースにあるのが、全社でチャット型アシスタントを活用し、生成AIアプリの内製化を推進する独自基盤の存在だ。使いやすいUIで、手軽に利用できる環境を構築しており、約6000人が月間8万回のチャットを利用している。さらに、AIーOCR機能やデータ分析エージェント、社内ポリシーにあわせた画像解析処理などの生成AIアプリを内製している。
「加えて、『DXチャレンジプロセス』という仕組みもある。スモールスタートな内製化の費用を負担するもので、PoCやPoBを通じて規模を大きくしながら、本番化を目指してもらう。本番化したところで、初めて利益者負担となる仕組み。内製化をチャレンジしやすい環境を整備していることも、DX推進やAI利用が広がっている理由」(藤本氏)
現在は、DXチャレンジプロセスへの応募案件が多く、IT戦略部がDX案件を自ら探しにいく必要のない状況だという。GC分析もこの制度を通じて内製化を推進しており、きっかけが顧客からの要請ではなく、社員の気づきという点も興味深い。
商品開発に加えて、意思決定プロセスでの活用も計画
GC分析の開発着手から約1か月後には、コンビニチェーンへの商品提案に活用を開始。そこで得られた顧客の反応を基に、改善を繰り返した。IT部門と営業部門が密接に連携しながら、短期間で完成度を高め、改善フェーズは約4カ月で完了したという。そして、2024年8月から本格的な活用が始まり、複数商談の成功に貢献している。
今後は、コンビニ業界だけではなくスーパーや外食業界へも展開し、さらに商品開発以外の意思決定プロセスにも応用していく考えだ。そのために、さらなる顧客理解のためのデータの追加や、コンビニ以外に最適化したプロファイルデータの整備を進めていく。なお、現状ではGC分析の外販は考えていないという。
さらに、社内の生成AI活用についても、「自律型AIエージェントや音声対話型AIエージェントの活用などを進めていく。将来的には、AI社員の登場や、AIによる省人化といった成果も考えられる。だが、業務効率化の位置づけではなく、戦略的に業績拡大に貢献するアーキテクチャーとして位置づけている」と展望が語られた。

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