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最新ユーザー事例探求 第63回

月間約1.7万時間の業務削減、アクティブユーザー率“8割越え”達成の定着策

社員発の“カスタムGPT”は2000個以上 MIXIの「ChatGPT Enterprise」全社導入で起きた2つの変化

2025年08月27日 12時15分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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月間約1万7600時間の業務削減、さらに「想定外だった2つの成果」

 こうした積極的な活用促進の結果、全社導入から3か月未満で、ChatGPT Enterpriseの1週間あたりのアクティブユーザー率(WAU)は80%に到達し、その後も高い利用率を維持しているという。

 3か月経過時点での社内アンケートでは、99%が「生産性の向上」を実感しており、90%以上が「時間を節約できた」と回答。さらに、全社で月間約1万7600時間の業務削減効果が見込まれるという。

 これに加えて吉野氏は、「当初の想定を超えた2つの変化が生じた」と語る。

 ひとつは、目的に応じた独自のChatGPTである「カスタムGPT」を自発的に作る社員が急増したことだ。2025年7月末までに作られたカスタムGPTの数は2322個にも上り、アクティブなものも654個と、実に社員の約3分の1がカスタムGPTを活用している状況だ。最も利用が多いのは「法務との相談の論点をまとめるGPT」だという。

 部署独自のカスタムGPT作りも活発で、例えば「家族アルバム みてね」のチームでは、特に広告クリエイティブの制作で活用が進んでいるという。コピーライティングがサービスの世界感に合っているかをレビューする「文言チェッカーGPT」、サービスバリューやユーザー属性を踏まえたマーケティングコピーを多言語で生成する「Creative Planning GPT」などのカスタムGPTが生まれている。

文言チェッカーGPT

 なぜ、ここまで大量のカスタムGPTが作られたのか。一番のきっかけは“研修”だという。カスタムGPTについての研修を全社規模で開催した結果、カスタムGPTの数は約3倍に増えた。「カスタムGPTを作ることまでは推奨していなかったので、ここまで増えたのは予想外」と吉野氏。すっかり定着化したことで、何か困ったことがあっても、現場内で力を合わせて解決する好循環も生まれているという。

 そして、吉野氏がもうひとつ驚いたというのが、「非エンジニア職もプログラミングを始めたこと」だ。これまでエンジニアに依頼していた業務支援ツールなどの開発を、ChatGPTのコーディング支援を受けながら自ら構築するケースが増えてきており、「働き方そのものが変わりつつある」という。

 こうしてMIXIは、ChatGPT Enterpriseの導入により、「社員の余力をつくり、生まれた時間で新たな価値を作る」という目標の達成に、着実に近づいている。吉野氏は、ここまで順調な理由は「全社導入」だと分析する。「業務委託の人なども含めて、使えない人がいないという状況を作ることで、会話が生まれ、サポートし合う環境が築けた」。

 今後期待するのは“データに対する意識変革”だ。AI活用を繰り返すことで、「データの管理・運用の重要さ」が社員に浸透していくという。吉野氏は、「これからは非エンジニアでも、生成AIを使ってデータの応用までが完結できるようになっていく。それにより、より価値を生むデータドリブンな取り組みが増えることを期待したい」と展望を語った。

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