“DeNAの開発チーム流アジャイル”が突破口に【CEDEC2025レポート】
「ポケポケ」開発チームが直面した“いつまでも完成しない問題” リモート×大規模な組織づくりの難しさ
2025年08月04日 10時00分更新
リモートワーク×大規模開発に発生しがちな“あるある”
DeNAの今別府デニス幸生氏は、ポケポケのプロジェクトが陥った、リモートワークかつ大規模なチーム開発の“あるある”を挙げる。
まずは、リモートワークの“あるある”だ。DeNAでは元々、Slackを利用していたため、全員がチャットベースの“非同期コミュニケーション”に慣れていた。そのため、“同期コミュニケーション”の質や量が低下。出社していた頃と比べて、テキストを読む/書く負荷が増え、会議を開かないと話す機会も生まれず、ノンバーバル(非言語)のコミュニケーションが減少していた。
さらに、プロジェクトの規模が急にスケール(大規模化)したことで、3つの“あるある”に見舞われる。
まずは「フラットすぎる組織」問題だ。もともとDeNAでは、上下関係や組織の縦割りがなく、どの社員とも話しやすい働き方を実践してきた。ただし、フラットな状態のままでチームの人員が増えると、誰が何の担当なのかが分かりづらくなり、相談すべき人が増えていく。
そうしてコミュニケーションラインが増えると、労力がかかるため、コミュニケーション自体が減少。また、責任がメンバー間に分散することで、オーナーシップも希薄化していった。「縦割りのないフラットな組織でも“縦割りのような状態”になってしまい、タスクの取りこぼしも発生し始める。やはり、一定規模以上の組織には、健全なピラミッド構造が必要」(今別府氏)
2つ目は「PMへの管理一極集中」問題だ。
DeNAでは、メンバーが開発に集中できるよう、外部のPMがタスク管理やスケジュール管理を担うことが多かった。ただし、PMは専門知識がないため、仕様の判断権限を持たない。組織の人数が増えるにつれ、タスクの割り込みや遅延も多く発生するようになったが、スケジュールを延ばすことでしか対応できなくなり、次第にメンバーのスケジュールに対する責任感も薄れていく。
最後は「会議少なすぎ」問題だ。少人数であれば、チャット主体でも十分なコミュニケーションが可能であり、「会議はムダ」と感じることすらある。しかし、人が増えると関係性が薄いメンバーも多くなり、テキストだけでは伝わらないことが増える。加えて、ポケポケの場合は、会議をやろうにもその文化がなかった。そうすると、分からないことは放置され、手探りのままで開発が進んでしまう。
これらの問題の背景には、DeNAがこれまで育んできた組織文化がある。ポケポケ開発チームは、前に進むために、組織のスケーリングとリモートワークに適した“新たな文化”への転換に迫られていた。











