「AWS Summit New York」のアップデート振り返り
AWSジャパンが、AIエージェントの部品集「Bedrock AgentCore」と仕様駆動型IDE「Kiro」を解説
2025年07月23日 08時00分更新
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)が、2025年7月16日(現地時間)に米国で開催された「AWS Summit New York City 2025(以下AWS Summit New York)」の主な発表内容を振り返る説明会を開催した。
同イベントでは、AIエージェント開発の敷居を下げるサービス群「Amazon Bedrock AgentCore」を発表。前週には、「仕様駆動開発」によって、Vibe Codingの本番実装における悩みを解決するAI統合開発環境(IDE)「Kiro」をリリースしている。
AWSジャパンのサービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長である小林正人氏は、「AWSは、AI エージェントを開発・運用する上で、最適な“場”を提供する。Bedrock AgentCoreは、それを体現するサービスのひとつ」と説明する。
AIエージェント開発の困りごとを解決するサービス群
AWS Summit New Yorkで、小林氏が「最も重要な発表」と位置付けたのが「Amazon Bedrock AgentCore(以下、Bedrock AgentCore)」である。一言でいうと「実用かつセキュアなAIエージェントを作るための“部品の集合体”」だ。
AIエージェントの開発には、現状、さまざまな課題が点在するという。具体的には、「セキュアかつ拡張性を備えた実行環境」「過去のやり取りを記憶し、学ぶ能力」「エージェントやツール、データへの適切なアクセス権限」などが挙げられる。これらの課題に対応した部品を提供することで、“AIエージェント開発の敷居を下げる”のが、Bedrock AgentCoreのコンセプトである。
現在、部品として、「Runtime」「Memory」「Gateway」「Identity」「Code Interpreter」「Browser Tool」「Observability」の7つのサービスが用意されている。ここからは、各サービスについて紹介する。
「Bedrock AgentCore Runtime」は、動的なAIエージェントやツールをデプロイ・稼働するための、セキュアでサーバーレスな実行環境である。セッション(ユーザーとAIとの対話)ごとに隔離された小さなVM環境を用意して、ゼロから数百万の同時実行まで自動スケールする。
「Bedrock AgentCore Memory」は、AIエージェントの「短期記憶(1回のセッションの記録)」「長期記録」の仕組みをサーバーレスで提供する。短期記憶によりユーザーからのレスポンスが開いても対話を再開でき、長期記憶により過去の対話を呼び出して、パーソナライズされた応対が可能になる。
「Bedrock AgentCore Gateway」は、APIやLambda関数、既存のサービスを、数行のコードでMCP対応させる仕組みを提供する。AIエージェントと外部の呼び出し先の間に位置して、セッションのやりとりや認証の処理も担う。
「Bedrock AgentCore Identity」は、AIエージェント契機のアクセスに対する認証許可を、既存システムで管理するためのサービスだ。AWS IAMやOAuth 2.0、APIキーなどに対応し、既存のアイデンティティプロバイダーと連携可能にする。
「Bedrock AgentCore Code Interpreter」は、AIエージェントがタスク処理する際に生成したコードを、安全に実行できるサンドボックス環境を提供する。複雑な数値計算など、基盤モデル自身では答えが出せないが、プログラムを書くことで解決できるようなタスクでの利用を想定する。
「Bedrock AgentCore Browser Tool」は、AIエージェントが安全にウェブサイトを扱うためのブラウザ環境を提供する。コンテナ化された独立環境で、ウェブサイトからの情報抽出やウェブアプリケーションのテスト、ウェブベースでの処理を実行するAIエージェントがを実装できる。
最後は、「Bedrock AgentCore Observability」だ。Amazon CloudWatchを基盤として、AIエージェントのトレース・デバッグ・パフォーマンスモニタリングを提供する。OpenTelemetry形式での出力により既存のオブザーバビリティツールとも統合可能だ。
Bedrock AgentCoreは、一部地域でプレビューが開始されており、価格形態は、アクティブなCPU・メモリに連動した従量課金となる予定だ。
さらに、AWS Marketplaceにも、「AIエージェントとツール」のカテゴリが追加された。AIエージェントに必要なツールや構築済みのエージェントの調達・提供が、より効率化的に行えるようになっている。

















