最新パーツ性能チェック 第467回

RX 7700 XTや RX 7800 XTと性能で並ぶ？

Radeon RX 9060 XT 16GB、コスパの一点突破でRTX 5060 Tiに勝つ

「DOOM: The Dark Ages」

　DOOM: The Dark Agesでは画質は「ウルトラナイトメア」、FSR/ DLSS「クオリティー」ならびにフレーム生成（MFG 3x含む）も追加した。

　今回はVRAM搭載量の多いGPUを使用しているため「テクスチャープール（グラフではTPと表記）」の設定を最大値である4096MBに設定している。こうすることでVRAMに保持されるテクスチャーデータがより多くなるが、同時にVRAM使用量が増大する（フルHD時で平均11.1GB）。

　RTX 5060レビューの時はデフォルト値（2046MB）としていたためVRAM平均使用量は7.5GB程度と大幅に減少する。そこで、参考データとしてRTX 5060 Ti 8GBのみ、テクスチャープール設定を最低値（1546MB）とした場合のデータも併記した。

　テストはキャンペーン最初のステージにおいて一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

DOOM: The Dark Ages：1920x1080ドット時のフレームレート。

DOOM: The Dark Ages：2560x1440ドット時のフレームレート。

DOOM: The Dark Ages：3840x2160ドット時のフレームレート。

　DOOM: The Dark AgesにおいてRX 9060 XT 16GBはRX 7700 XTよりも平均フレームレートで常に上回るという成果をあげた。最低フレームレートはRX 7700 XTの方が高いが、平均ではRX 9060 XT 16GBの方が優秀。

　4KではVRAM不足によりRX 7700 XTのフレームレートが急に出なくなるのに対し、RX 9060 XT 16GBは安定している。RX 9060 XT 16GBは4Kでも数字の上では平均60fps以上出ているが、FSR 3 FG込みの数値であるため、プレイフィールはよろしくない。RX 9060 XT 16GBであればWQHDまでが実用上の限界だろう。

　ライバルRTX 5060 Tiに対してもFSR 3 FGとDLSS FGの対決であればRX 9060 XT 16GBは互角以上の立ち回りを見せている。RTX 5060 Ti 8GBレビューにおいて、解像度を上げるとVRAMが不足しDLSS MFGがキャンセルされてしまう点を指摘したが、テクスチャープール設定を4096MBに設定にするとRTX 5060 Ti 8GBはフルHDでもDLSS MFGどころか普通のDLSS FGすら使えなくなる。

　RTX 5060 Ti環境でウルトラナイトメア設定運用をしたければ、RX 9060 XT 16GBより高価なRTX 5060 Ti 16GBの選択が必須である。DLSS MFG 3x（あるいは4x）まで視野に入れると、RTX 5060 Ti 16GBの方がより高フレームレートになるのはこれまでの検証と同傾向である。

DOOM: The Dark Ages：ベンチマーク中におけるTotal Board Powerの平均値（左3つ。単位：W）、および10Wあたりのフレームレート（右3つ。単位：fps）。

　RX 7800 XTの方がRX 9060 XT 16GBよりフレームレートが出るが、TBPの上昇分ほどの仕事はしていないため、ワットパフォーマンスではRX 9060 XT 16GBの方に軍配があがる。

「F1 25」

　つい先日公開されたばかりのF1 25は画質「超最大」としパストレーシングを有効化、異方性フィルタリングは16x、FSR/ DLSS「クオリティー」およびフレーム生成（MFG 3xも含む）も追加。ゲーム内ベンチマークを“ラスベガス＆ウェット”設定で再生した際のフレームレートを計測した。

F1 25：1920x1080ドット時のフレームレート

F1 25：2560x1440ドット時のフレームレート

F1 25：3840x2160ドット時のフレームレート

　まずRadeon勢ではVRAM不足によりRX 7700 XTがいち早く脱落する。GPUそのものの性能は低くても、RX 7700 XTよりVRAMの多いRX 9060 XT 16GBやRX 7600 XTはギリギリ4Kでも動けるのだ。

　一方GeForceの場合VRAMの少ないRTX 5060 Ti 8GBでもWQHDまで難なく動作している点が興味深い。だがこれは「Indiana Jones and the Great Circle」において、VRAM搭載量が12GB以下のRadeonはGeForceより低い解像度で動作困難になる事と根っこは同じである。

　RX 7700 XTが早期に脱落するのにRTX 5060 Ti 8GBがなぜ動くかは、まだレイトレーシングの負荷を軽減する技術がRadeonでは十分に整備されていないことが一因であると筆者は考えている。

　現GeForceにはAIを利用して直接・間接照明の計算を高速化する「Ray Reconstruction（レイ再構成。DLSS 3.5に含まれる）」があるが、現行Radeonでは利用できない。現在AMDは「FSR Redstone」の一部としてDLSS Ray Reconstruction相当の機能である「Ray Regeneration」を開発中だが、これが使えるようになって初めてRadeonはパストレーシングで戦えるようになるのではと期待している。

　また、Radeon環境ではフレーム生成に起因するアーティファクト（崩れた描画）が画面上に多数出現する点にも触れておくべきだろう。F1 25以外にもMonster Hunter: Wildsでフレームレートが低い状態でFSR 3 FGを有効化すると画面にアーティファクトが盛大に出現するが、F1 25の場合はRTX 9070でも頻発する。

　この点に関してもAIで強化されたフレーム生成機能がFSR Redstoneで実装されることで大きく改善することが期待できる。

Radeon環境におけるアーティファクトの例：一見正常だが、サイドミラーの外側にミラーの残像が描画されている。Optical Flowの処理が今ひとつなのがこの理由である。パストレーシング（超最大）設定から1段落とした従来型のレイトレーシング設定でもこの残像は出現する

Radeon環境におけるアーティファクトの例。タイヤの残像が非常に目立つ

F1 25：ベンチマーク中におけるTBPの平均値（単位：W）、および10Wあたりのワットパフォーマンス（単位：fps）

　RX 9060 XT 16GBには処理が重いのか、RX 9060 XT 16GBのワットパフォーマンスはRX 9070より大きく下がっている。むしろRX 7700 XT（フルHDのみ）やRX 7800 XTの方がワットパフォーマンスは高いので、CU数がある程度多くないとF1 25のパストレーシング設定では満足に動かすのが難しいといえる。

　この点ではRTX 5060 TiはVRAM 8GBでもワットパフォーマンスが高く、WQHDまでであれば安定したパフォーマンスが期待できる。