カメラ記者クラブは5月30日、42回目の開催となる「カメラグランプリ2025」の贈呈式を開催した。贈呈セレモニーでは、各賞を受賞した担当者がスピーチをおこない、開発秘話を披露した。
カメラグランプリは、カメラ・写真雑誌・WEBの編集部で構成されるカメラ記者クラブが主催する年に1度のイベントで、記者やプロカメラマンの投票によって、2024年4月から2025年3月までに発売となった全カメラとレンズを対象に、製品を表彰するものだ。

TIPA(The Technical Image Press Association)のSecretaryの Johan Elzenga氏、携帯電話でカメラはなくなるという議論がありましたが、これからもカメラをつねに持ち歩くことを勧めていきたい。
大賞
キヤノン「EOS R1」
キヤノン株式会社 イメージング事業本部IMG第一事業部長 加藤 学氏
10年ぶりの大賞をいただきありがとうございます。大賞をいただける製品を出せたことを嬉しく思っております。
2018年のEOS R発売以来、ユーザーの皆さんから「R1」はいつ出るのか、期待されてきました。フラッグシップカメラには大きなこだわりを持っており、妥協なき開発を進めてきました。
パリ五輪では豪雨の開会式で試作機をプロカメラマンに試用していただき、エージングを完了することができました。AIやディープラーニングといった最新技術も投入しながら、「1」としての使い勝手は伝統もひきついでおり、プロの方々に満足して使っていただける製品に仕上がっています。
ぜひより多くの皆さんに手に取っていただけるとありがたいです。
レンズ賞
ソニー「FE 28-70mm F2 GM」
ソニー株式会社 レンズテクノロジー&システム事業部 イメージングエンタテインメント事業部長 岸 政典氏
ソニー株式会社 商品設計第5部門 光学設計部統括部長 金井 真実氏
Eマウント初のF2通しレンズの開発にあたり、大口径のズームレンズではなく「焦点距離が変えられる単焦点レンズ」を目指しました。
F2ということで、どうしても大きく重くなるのですが、より多くの方にF2のズームを体験していただこうと思い、小型軽量化にもチャレンジしました。
GMマスターレンズを出して9年になり、レンズそのものだけでなくアクチュエーターや生産技術まで、研ぎ澄ますことができ、このレンズが誕生しました。
FE 50-150mm F2 GMも発売しましたので、よろしくお願いいたします。
初のF2通しのズームレンズ設計ですが、過去のF2.8通しと似たレンズ構成になっています。これまでの非球面レンズより一段精度が高いレンズの製造が間に合い、可能となりました。
ズーム時の繰り出しを小さくしようと工夫した結果、メカ構造の軽量化が実現できました。
さらに、このレンズでは画面の大きな部分を占めるであろう「ボケ」にもこだわっています。カタログでも数字で表現しづらいですが、解像力とうまくバランスできました。
こういう絵が撮りたい、こういうレンズが欲しいという声を頂ければ、今後の製品に反映できますので、今後ともよろしくお願いいたします。
あなたが選ぶベストカメラ賞
キヤノン 「EOS R5 Mark II」
キヤノン株式会社 イメージング事業本部IMG開発統括部門 IMG製品第一開発センター所長 佐藤 洋一氏
キヤノンの開発者として、R1も重要ですが、「5」にも大きな思い入れがあります。「R5」受賞以来、コロナなど世界は変化してきましたが、また受賞出来てうれしいです。
MarkⅡの設計にあたり、動画の撮影機能も重視、より多くのみなさんに満足していただきたく、初代に何を加えていくのか、しっかり議論して設計しました。
初代、2世代が受賞して、MarkⅢも受賞しないといけないというプレッシャーがありますが、今後も精進を続けて参りますので、よろしくお願いいたします。
あなたが選ぶベストレンズ賞
キヤノン 「RF70-200mm F2.8 L IS USM Z」
キヤノン株式会社 イメージング事業本部 IMG光学統括部門 IMG光学開発センター部長 中下 大輔氏
RFレンズは2018年以来、50本以上発売してきました。70-200は何世代も積み重ねてきたレンズで、この賞をいただけて非常にうれしいです。ユーザーのみなさんからも、これまでの最高傑作というお声をいただいております。
設計にあたり、ズーミング時にフォーカスが変動しないことを重視しました。ズーミング動作によって機械的に動くレンズと電子で動くレンズがありますが、この2つの光学系を高精度で動かすことで、変動を極限まで減少しています。
カメラ記者クラブ賞【技術賞】
ニコン 「Z50 II」
株式会社ニコン 映像事業部開発統括部 設計部長 八木 成樹氏
Z9から始まるシリーズの技術をギュッと凝縮したカメラです。高い性能を持ちながら、初めてカメラを使われる方でも簡単に撮影していただけるカメラになっています。
憧れのクリエイターの絵づくりから、自分らしい表現まで、本格的な動画撮影まで、クリエイティビティ―を簡単に実現できるカメラです。
このカメラで、いつでも持ち歩いて、被写体と向き合いファインダーで写真を撮るということをより多くのみなさんに体験していただきたいです。
カメラ記者クラブ賞【企画賞】
リコーイメージング 「PENTAX 17」
リコーイメージング株式会社 カメラ事業本部長 濟木 一伸氏
フィルムカメラの計画を2022年末に公表したところ、世界中のみなさんから大きな反響があり、本腰を入れて作る決意をしました。
しかし、21年間フィルムカメラを出していないので、設計ノウハウが無くなっており、OBのみなさんにお願いして助けていただいたり、調達できないパーツは自社で製造することで、製品化できました。
若い人たちがフィルムカメラを新しい表現の道具として使い、発信してくれているのがうれしいです。
ASCIIによる実機レビューはこちらです。ぜひ購入の参考にしてみてくださいね!
