当初はクローズドで公開したが、低評価の圧力に押される
CivitaiのIllustrious XL v1.0のページ。左側のクラウド生成には1回約1.5円かかる。ウェイトモデルが公開されている現在、レビューは「概ね肯定的(Mostly Positive)にまで改善している
ただし、マネタイズの難しさが壁になり、リリース直後は評判が良くありませんでした。というのも、最初は画像生成AIのデータ共有サイト「Civitai」の中にある画像生成ツールを使う形で、クラウド利用を前提として、ウェイトモデルがダウンロードできない、半ばクローズドモデルとして提供したからなんです。
ユーザーは、Civitai内でのみ使えるポイントを利用して、特定のモデルを使い、クラウド上で画像を生成できます。この仕組みでは、画像生成に使用されたモデルの提供者にも、ユーザーの利用に応じた報酬が支払われるようになっています。ONOMA AIとしては学習にかかった費用を回収したいという意図があったのでしょう。しかし、もともとSDXLというオープンモデルをベースにしていて、なお、v0.1では無料で公開していたものに制限がかかったということで反発を集め、レビューに低評価の爆弾を落とされてしまったわけです。
結局は、低評価の圧力に押される形で、公開から3日後の2月14日に、同じような形で公開していた中国のTensor.Artで、10ドル(約1500円)でモデルのダウンロードを認めるように切り替え、その後、Civitaiでも同様の対応に切り替えました。
Illustrious XLの開発者は2月13日、韓国のSNSで実情を説明する投稿をしています。それによると、v1.0の開発のために、NVIDIA H100を8台、2ヵ月借りたとのことです。マイクロソフトAzureでは月9000万ウォン(約900万円)がかかると明らかにしているため、1億8000万ウォン(約1800万円)かかった計算になります。10ドルは1時間分の計算量になるとのことで、ユーザーに対して協力を呼びかけました。
一方で、2000万円あれば追加学習モデルが作れてしまうこともわかります。なぜ低コストで作れるのかといえば、Danbooruを利用している点が大きいです。データの収集とタグ付け、クオリティーコントロールで楽ができているわけです。Danbooruを使うことに議論はありますが、データセットがあればこうしたモデルは比較的安価に作れることがわかってきました。
しかし基盤モデルとして使用している「Kohaku XL」の規約に拘束を受けることもあり、再配布の禁止や、他のモデルとのマージ(結合)を禁止という条件を追加で入れることはできません。そのため、一度公開してしまうと他のユーザーが自由にアップロードして再配布できることになり、課金するユーザーがほぼいなくなることが予想でき、実際にそうなってしまいました。Tensor.Artでの有料ダウンロード数は328回に過ぎません。

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