先日、NTT東日本が発表した光ファイバーセンシング技術の応用プロジェクトは画期的だった。地下に敷設された通信用の光ファイバーで地下空洞を早期発見するというものだ(関連記事:危険な道路陥没に先手を 地中にある光ファイバーで地下空洞を検知)。地味なニュースだが、国内に張り巡らされた光ファイバー網の可能性を拡げる用途として注目に値する。
1月に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故は、道路の下にある管路が経年劣化したことで発生した地下空洞が原因だ。今回は大規模な人身事故だったため大きく報道されたが、国土交通省のまとめ(2022年度)によると、同様の道路陥没は年間に1万件以上も起こっているという。1万件以上だ。しかし、地下2メートル以上深い位置にある地下空洞を、道路を掘り起こさずに地表から発見するのは難しい。そこでセンサーとして動作する光ファイバーセンシングの登場である。
光ファイバーセンシングは1970年代から研究開発が進められてきた実績のある技術だ。NTT東日本のプロジェクトでは、通信用の光ファイバーの両端にセンサーを取り付け、周辺地盤の振動データを収集。振動特性の変化を時系列で比較し、空洞を検知する。ここで重要なのは「既設の光ファイバーをそのまま利用できる」という点。新たな設備増強を必要とせず、しかも無給電で常時モニタリングできる。本来人手とコストがかかるインフラ監視を実現できたら、通信以外の光ファイバー網の価値を大きく高めることになる。
地下管路を含む、日本のインフラの老朽化は国土保全においてきわめて大きな課題。多くの自治体がその対応に苦慮している。しかし、国内に張り巡らせた光ファイバー網を通信だけではなく、センサーとして活用できるのであれば、まさに光ファイバー網は日本の血管になると言っても大げさではないのではないだろうか。
文:大谷イビサ
ASCII.jpのクラウド・IT担当で、TECH.ASCII.jpの編集長。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、楽しく、ユーザー目線に立った情報発信を心がけている。2017年からは「ASCII TeamLeaders」を立ち上げ、SaaSの活用と働き方の理想像を追い続けている。

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