「Oracle Alloy」採用の3社が語る、それぞれのソブリンクラウド戦略とサービス
国産クラウド+メガクラウドの“いいとこ取り”実現 NRI/NTTデータ/富士通のソブリン戦略
2025年02月20日 08時00分更新
NRI:すでにサービス提供を開始、セキュリティやAI向け環境の強化を発表
OCWT TokyoのAlloyパートナー3社のセッションを見ていこう。まずはNRIグループからだ。
野村総合研究所(NRI) マルチクラウドインテグレーション事業本部 エキスパートテクニカルエンジニアの高橋佑輔氏、NRIセキュアテクノロジーズ 戦略ITイノベーション事業本部 サプライチェーンセキュリティ事業開発部長の鈴置一夫氏、NRI ITソリューションズアメリカ Financial Enterprise AI Center シニアソフトウェアアーキテクトの依田涼太氏
NRIは、2023年にAlloyの採用を発表し、2024年4月には稼働開始して顧客向けのIaaS/PaaSサービスを開始するなど、国内のみならず、世界的に見てもAlloyの事業化をリードしてきたパートナーだ。
OCWTのセッションでは、NRI、NRIセキュアテクノロジーズ、NRI ITソリューションズアメリカの3社が、NRIグループが進めるマルチクラウド戦略とAlloyの位置付け、新たに発表した2つの強化サービスを説明した。
NRIでは、2010年代初頭からマルチクラウド戦略を推進してきた。AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、OCIという4つのパブリッククラウドと、プライベートクラウド環境(NRIクラウド)を活用して、顧客サービスを提供している。2020年には、新たにOCI DRCCを自社データセンターに導入して、金融業界向けSaaS(BESTWAY、T-STAR、THE STAR)の提供基盤をNRIクラウドから移行した。
NRIの高橋佑輔氏は、NRIデータセンターで提供する各種パブリッククラウド/プライベートクラウドサービスと統制サービス、4つのパブリッククラウドサービス、それらすべてを包括するネットワーク/運用/セキュリティのサービスを提供するのが、NRIのマルチクラウド戦略の全体像だとまとめる。
今回は、このマルチクラウド戦略をさらに強化する2つの新サービスの提供開始が発表された。「NRIデジタルトラスト」と「NRI金融AIプラットフォーム」の2つだ(いずれも仮称)。
NRIデジタルトラストは、NRIのマルチクラウド環境にサイバーセキュリティ機能を組み込んだかたちで提供するプラットフォームサービスである。その第一弾として、2025年上期から、Oracle Alloy向けに、3つのコンポーネントでサービスを開始する。
3つのコンポーネントとは、“セキュリティバイデザイン”を実現するための「セキュア開発プラットフォーム」、マルチクラウド環境の包括的な状態管理やアセスメント、脆弱性管理を実現する「セキュリティビルトインクラウド」、XDRによる継続的な監視と迅速なインシデント対応を行う「サイバーフュージョンセンター」である。以後も順次、対象クラウドの拡大や機能強化を進める。
NRIセキュアの鈴置一夫氏は、IPA「情報セキュリティ10大脅威 2025年版」や、NRIセキュアが予想する2025年の重要セキュリティテーマでは、「サプライチェーン攻撃」や「国家背景のサイバー攻撃」の脅威が重視され始めていることを指摘。同サービスでは、“ITインフラの安全を守る”という従来の「サイバーセキュリティ」の考え方を“ビジネス領域(経済安全保障、各国規制対応など)の信頼の担保”までを含めた「デジタルトラスト」へとアップデートしていきたいと説明した。
NRI金融AIプラットフォームは、金融機関が安心してAI導入を進められるように支援するプラットフォームである。AIソリューションをセキュアに開発/実行できる顧客専用環境を、Alloy上で構築して提供する。さらに、このプラットフォームを活用した、営業やコンプライアンス業務、事務作業を支援するAIツール群も提供する。提供開始は2025年度上期中を予定している。
NRI ITソリューションズアメリカの依田氏は、このプラットフォームの強みを「金融ビジネスに最適化されたLLM」「データ主権を確保した個社専用のAI環境」「AI活用を支援するプラットフォーム」だとまとめる。1つめの金融ビジネス最適化LLMは、CohereのLLMをベースに、NRIが蓄積してきた金融ビジネスの知見やソリューションのデータ、顧客のデータを取り込んで最適化するもの。NRIの検証では、およそ25%の精度改善が見られたという。














