最新パーツ性能チェック 第460回
Arc B580からVRAM12GB→10GB、メモリーバス幅192bit→160bitの是非を問う
Arc B570でもRTX 4060/RX 7600は超えられるのか? ゲーム10本で検証
2025年01月21日 13時00分更新

本稿は2025年1月16日23時に販売が解禁したインテルの最新dGPU、「Arc B570」レビューの第2弾である。前回はArc B570の概要とごく基本的なパフォーマンス検証で力尽きてしまったが、今回は実際のゲームでテストする。
Arc B570の初値は同B580よりも5000円ほど安く、税込みで4万5000円程度に設定されている。しかし、安くなったぶんGPUの回路規模はArc B580よりも1割程度縮小。さらに、近年のゲームでは重要な要素であるVRAMはArc B580では12GBだったが、同B570では10GBになっている。
また、メモリーバス幅も同様に、192bit→160bitと絞られている。このあたりが最新の重量級ゲームではどう響くのか? 4万円台半ばの価格帯でどこまで解像度や画質を攻められるのかに注目していただきたい。

検証にあたってお借りしたASRockのArc B570搭載カード「Intel Arc B570 Challernger 10GB OC」(型番:B570 CL 10GO)。初値は4万5000円前後。入荷数が少ないのか2025年1月20日時点での流通在庫は払底していた
Arc B580やRTX 4060、RX 7600と性能比較
今回の検証環境も前回とまったく同じだ。Arc B570はASRock製のファクトリーオーバークロックモデルを、同B580はインテル純正のLimited Editionを用意。比較対象として、GeForce RTX 4060(以下、RTX 4060)と、Radeon RX 7600(以下、RX 7600)も準備した。CPUはCore Ultra 9 285Kで、OSはWindows 11(24H2)を選択。
なお、ドライバーはGeForceがGameReady 566.36、RadeonがAdrenalin 24.12.1を使った点は前回と共通だが、Arcはリリース直後に公開された最新ドライバー101.6458/101.6257に変更した。Resiazble BARやSecure Boot、メモリー整合性やHDRなどはひと通り有効化、ディスプレーのリフレッシュレートは144Hzに設定した。
検証環境 | |
---|---|
CPU | インテル「Core Ultra 9 285K」(24コア/24スレッド、最大5.7GHz) |
CPU クーラー |
EKWB「EK-Nucleus AIO CR360 Lux D-RGB」 (簡易水冷、360mmラジエーター) |
マザー ボード |
ASRock「Z890 Taichi」(インテルZ890、BIOS 2.22.AS03) |
メモリー | ADATA「LANCER RGB DDR5 AX5U6400C3216G」(16GB×2、DDR5-6400) |
ビデオ カード |
インテル「Arc B580 Limited Edition」(12GB GDDR6)、 ASRock「Intel Arc B570 Challenger 10GB OC」(10GB GDDR6)、 MSI「GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC」(8GB GDDR6)、 AMD「Radeon RX 7600リファレンスカード」(8GB GDDR6) |
ストレージ | Crucial「T700 CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe 5.0)、 Silicon Power「PCIe Gen3x4 P34A80 SP002TBP34A80M28」(2TB M.2 SSD、PCIe 3.0)×3 |
電源 ユニット |
ASRock「TC-1300T」(1300W、80 PLUS TITANIUM) |
OS | Microsoft「Windows 11 Pro」(24H2) |
各ゲームのフレームレートはすべて「CapFrameX」で計測しているが、従来の「MsBetweenPresents」ではなく、「MsBetweenDisplayChange」準拠としている。これはXeSS FGや(今はまだ試せないが)GeForce RTX 50シリーズのDLSS MFGで生成されたフレームを正しく評価するためには必須の変更となる。
従来の指標(MsBetweenPresents)でも平均フレームレートは結果はたいして変わらない。しかし、ディスプレー上に表示されるフレームがスタッターを起こしているか否かの判定が。MsBetweenDisplayChange準拠でないと大きく変わってしまうのだ。

XeSS FG使用環境において、「Marvel Rivals」のフレームレートを計測した時のデータ。MsBetweenPresents基準のデータだと、最低フレームレートが60fps近くまで下がっている。右下の円グラフは、すべてのフレームがスタッターを起こしていると判定されている
また、CapFrameXでフレームレートを計測すると同時に、HWBustersの「Pownetice v2」でベンチマーク時に各ビデオカードが消費する電力(TBP:Total Board Power)の平均値も計測した。これと平均フレームレートの値を利用し、「10Wあたりのフレームレート」(すなわち、ワットパフォーマンス)も算出している。
もしもあるゲーム・設定がほかのゲーム・設定よりも消費電力が圧倒的に低い場合は、なんらかの理由(最適化不足やドライバーのクセ、あるいは超過負荷な状況)で“GPUが仕事をしていない”状況であると考えられる。
「Overwatch 2」
まずOverwatch 2では画質「エピック」をベースにレンダースケール100%、フレームレート上限600fps、FSR 2はオフ(レンダースケール:RS=100%)に設定。マップ「Eichenwalde」におけるBotマッチを観戦中のフレームレートを計測した。
フルHDではRTX 4060やRX 7600に勝てず、イマイチな印象が強い。ただし、解像度を上げるほどに徐々に挽回し、4KになるとRTX 4060を超えた。これはVRAMやメモリーバス幅の優位性が効いたといった感じだ。
とはいえ、Arc B570の主戦場であるフルHDやWQHDでは、既存のGPUに対してアドバンテージがない、といったところか。むしろArc B570によって同B580の完成度の高さが強調されてしまった格好だ。
Arc B570の消費電力は、同B580より最大35Wほど下になる。解像度が低いほどTBPが抑える傾向はArc B580と同じ。RTX 4060に比べるとTBPの絶対値はやや高いものの、大騒ぎするほどの差ではない。

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