設定が簡単なAV over IPスイッチで、役員会議室向けの映像/音声IPネットワークをすべて統合
イトーキが考える「進化し続けるオフィス」、それを支えるネットギア「M4350」スイッチ
2025年02月03日 11時00分更新
“明日の「働く」を、デザインする。”をミッションステートメントに掲げるイトーキ。その言葉どおり、現在の事業領域はオフィス家具の製造/販売にとどまらず、オフィス空間の設計/構築、働き方のコンサルティング、さらには最新ICTの活用による“オフィスDX”の推進にまで及んでいる。
そのイトーキが2024年11月、本社オフィス兼ショールームの「ITOKI DESIGN HOUSE」をリニューアルオープンした。訪れたゲストが“明日の「働く」”を体感できる場であると同時に、イトーキ社員が働きながら新たな課題を発見し、ソリューションを考え、イノベーションの種を育てていく場でもある。
ITOKI DESIGN HOUSE内にある役員会議室「Decision Room」は、もともと対面+オンラインの“ハイブリッド会議”時代に対応した設備を備えているが、ここでもアップデートが図られた。対面参加者もオンライン参加者もストレスなく会議に参加し、活発な発言で「アイデアの創出」や「迅速な経営判断」をうながす空間設計や映像/音響(AV)設計が行われており、映像/音響ネットワークの中心にはAV over IP対応のネットギア「M4350シリーズ」スイッチを採用している。
役員会議室のリニューアルを手がけたイトーキの椎野由郷氏は、「空間デザインだけでなく、AV/ICTの面からも会議をアクティブなものにする仕組みを作りました。それにはネットギアのスイッチが必須でした」と語る。次世代のオフィスにおけるAV/ICTの役割から、今回のリニューアルにおけるポイント、そしてネットギアM4350スイッチを選んだ理由などをうかがった。
「常に新しいワークスタイルとワークプレイス」を提案するイトーキ
椎野氏が室長を務めるシステムデザイン室は、空間とICTを高度にインテグレーションし、革新的なコミュニケーション環境を実現させるAV/ICT専門の部署だ。主には会議室の映像/音響システムや、オフィスに必要となるサイネージ、コンテンツ、来客予約システム、位置情報システム、会議室予約システムなどを取り扱う。
「お客様ごとに、オフィスに求める機能や空間デザインの好みは異なります。そのため、必要となるソリューションを都度検討して、ご提案しています」
2022年に外資系ITベンダー出身の湊宏司氏が社長に就任したこともあって、現在のイトーキでは「TECH×DESIGN(テック・バイ・デザイン)」戦略を大きな強みとしている。空間デザインの力に最新テクノロジーの力を掛け合わせ、融合させることで、時代に即した新しい働き方をサポートするオフィスが提案できる。
さらにイトーキでは、現在を「Office 3.0」時代と位置付けている。オフィス家具だけを提供する“Office 1.0”、空間デザインの提案や働き方コンサルティングまで提供する“Office 2.0”を経て、IoTやデータ分析による「データドリブンなオフィスDX」をサポートするのが“Office 3.0”だ。
Office 3.0時代のオフィスは、これまでのような静的、固定的なものではなく「進化し続けるオフィス」になるという。コロナ禍で多くの人が経験したように、働き方やオフィスの位置づけは日々更新されていく。データ分析によって「オフィスがどう利用されているか」の変化をとらえ、オフィスを「継続的にアップデート」させていく、という考えだ。
「ITOKI DESIGN HOUSEは3フロアありますが、実は毎年1フロアずつリニューアルしています。ここでイトーキ社員自身が経験した課題を、次のフロアのアップデートに適用する。この取り組みによって、お客様の課題を先行解決できるオフィスづくりを目指しています」
“ハイブリッド会議時代”のさらなる変化に適した役員会議室にリニューアル
役員会議室の「Decision Room」でも、明確に目標を設定したリニューアルが行われた。
まず目標とされたのは「時代のスピードに合わせて迅速に意思決定ができるように、参加者から積極的な意見が出る、活発な議論ができる会議室」だ。それを実現するために、座席を馬蹄形に配置した次世代のレイアウトが採用された。デスクやソファもその形に沿ってカーブしている。
「一般的な『報告会』のような会議ではなく、役員どうしが活発に議論できるような座席レイアウトを目指しました。馬蹄形にしたことで、お互いに視線を合わせて議論することができ、会話中に前の電子ボード(大型ディスプレイ)まで行って説明するのもスムーズです」
もうひとつの目標が「快適なハイブリッド会議の実現」である。この会議室ではWeb会議システム「Microsoft Teams Rooms」を導入しているが、リモート参加者は「発言者が2人以上の場合に誰と誰が会話しているかよく分からない」「発言者の表情がよく分からない」といったストレスを抱えがちだった。
その原因は、会議室に設置されたカメラの映像である。リニューアル前は、正面のディスプレイ上部と後方に設置された2台のカメラを切り替えて、発言者をとらえていた。だが、これでは会議室の前に立ってプレゼンテーションを行う人や、座席に座っている人の表情がとらえにくい。
そこで、今回のリニューアルではCrestron社の1BEYONDカメラを採用し、部屋の4方向にカメラを設置して、発言者がどこにいても表情をクリアにとらえられるようにした。合計8台のカメラ(PTZ7台、固定1台)を設置し、シーリングマイクが解析した発言者の位置データを使って、リアルタイムに追尾/クローズアップするモードも用意した。
「映像モードの1つとして『Conversation(会話)』モードもあります。これは、2人の話者を画面分割で同時に映すモードで、リモート参加者の『誰と誰が話しているのか分からない』というストレスを減らします」
「絶対にやってはいけない」をくつがえしたネットギアスイッチ
このDecision Roomのリニューアルにおいて、AV/ICTの側面ではもうひとつ新たに「映像と音声、制御のIPネットワーク統合」も行われた。PTZカメラや固定カメラ、映像のエンコーダー/デコーダー、シーリングマイク、ワイヤレスマイク、さらにそれらの制御システムは、すべて1台のM4350スイッチに接続され、VLANを切ることもなく1つのIPネットワーク上でデータを伝送している。
「映像、音声とも、IPネットワークで伝送する規格は以前からありますが、業界的には『それらを混ぜてはいけない』(ネットワークを統合してはいけない)というのが暗黙のルールでした。混ぜると音声が途切れるなど、必ずトラブルが起きる。だから絶対やっちゃいけない、というのがセオリーでした」
しかし、シンプルな構成で安定したシステムを実現したいとの思いからネットギアの専門エンジニアに相談してみたところ、「映像も音声も1つのネットワークで問題ない」と断言された。椎野氏は「ネットギアさんの自信を感じて、実際の運用環境に導入してみました」と振り返る。
M4350シリーズをはじめとするネットギアのPro AVスイッチでは、主要な映像/音声プロトコルに対応した最適な通信設定がプリセットされている。たとえ映像と音声のプロトコルが混在する構成であっても、Web GUIや専用アプリ“NETGEAR Engage”でポートごとに接続するデバイス(プロトコル)を選ぶだけで、トラブルのないAV over IPネットワークが実現できる。
「スイッチの導入は、IPアドレスを変えて、ポートごとにプロファイルの設定をしたくらいで、ほとんど何もしていないですね。デバイスをスイッチにつなげただけで、ほぼ完成の状態になりました。工期も短かったので、とても助かりました」
ちなみにこのネットワークには、Crestron社のNVXやNDIによる映像伝送、Danteの音声伝送に加えて、Microsoft Teams Roomsによる通信、つまりインターネット通信も統合されている。それでもトラブルは起きていないという。
「いろいろな規格の通信を扱うネットワークを、設定もほとんどなしで一本化できる。そういう理想を突き詰めていったら、ネットギアのスイッチにたどり着いたという感じですね」
「進化し続けるオフィス」を前提に考えた機材の設置も
このDecision Room向けに導入されたM4350スイッチは、10Gのアップリンク回線経由でほかのフロアにも接続されている。スペースの関係で1カ所に集まり切れないオフィス内でのイベント開催時などに、各フロアにある大型ビジョンに直接、映像/音声を配信できる仕組みだ。
「以前はTeamsを使っていたのですが、オフィスにいる社員全員が接続すると遅延や品質劣化が発生して、話の大事な部分を聞き落としたりもします。在宅勤務の人向けには引き続きTeamsを使いますが、社内はフロアをまたいでダイレクトに配信するかたちも対応できるようにしました」
椎野氏は、こうした“社内向けライブ配信”の仕組みは、顧客向けのソリューションとしても提案できるのではないかと話す。近年、リモートワークやオンライン会議が増加し、大型の会議室を設置するオフィスは減っている。そのため、全社集会など大人数が集まる会議のために、社外の会場を借りる企業も多い。だが、オフィス内に配信ができればその必要もなくなる。つまり、限られたオフィススペースの役割をダイナミックに変化させ、有効活用ができるわけだ。
もうひとつ、Decision Room向けのM4350スイッチは、あえて室外の共用スペースにある移動式のラックに設置している。ほかのフロアに設置されたスイッチも同様だ。これは、「進化し続けるオフィス」という考えを前提に、将来的な部屋の移動やレイアウト変更などにも柔軟に対応できるようにするためだと、椎野氏は説明した。
「最近では、オフィスの移転やリニューアルを“コストではなく投資”と考える経営者の方が増えています。そのため、これからのオフィスも『作ったら完成』ではなく、実際に使われているかどうか、成果につながっているかどうかをデータで確認しながら『常に変化していく』ものになります。われわれAV/ICTチームとしても、こうした新しいワークスタイルの変化にあわせて、デジタルの側面から新しいご提案をしていきたいと思います」
