最新パーツ性能チェック 第457回
“Battlemage”世代の尖兵「Arc B580」レビュー【前編】
インテル新GPU、Arc B580の実力は?AI&動画エンコードは前世代より超強力に
2024年12月12日 23時00分更新
“フルHDの王者”よりメモリー周りがリッチ
まずはArc B580のスペックを近傍の製品と比較しておこう。B580はA750どころか前世代のA580よりも回路規模(Xe-coreの数など)が絞られているが、逆にL1/L2キャッシュは増加している。
Arc B580のTotal Board Power(いわゆるTDP)は190Wと高く設定されているが、キャッシュを多く搭載すればメモリーアクセスが減り、描画負荷が低い場合は消費電力抑制に繋げられることが多い(これの成功例がRTX 40シリーズだ)。キャッシュを盛って実使用時の消費電力を抑えつつ性能も稼ぎ、ブーストクロックも高く設定してさらに上の性能を目指す、といった感じだろうか。
VRAM周りはデータレート19.2Gbpsという高速なGDDR6メモリーで12GBを搭載する、という点がRTX 4060やRX 7600に対するアドバンテージとなる。最近のAAAゲームはVRAM消費量が多いだけに、この仕様は嬉しい。
1つ注意点として、Arc B580に限らず既存のArcシリーズGPUを利用する場合は、プラットフォームがResizable BAR(あるいはSmart Access Memory)に対応していることを確認しておこう。ArcシリーズはResizable BARを利用して初めて性能を出すことができる設計になっているためだ。
具体的にはインテルなら第10世代以降、Ryzenなら3000シリーズ以降(3000Gシリーズは除外)であれば、Resizable BARに対応している可能性がある。マザーボードのBIOSでResizable BARやSmart Access Memoryの項目がない場合は、BIOSアップデートも必須だ。
Arc Bシリーズにおけるビデオプロセッサー、すなわち「Xe Media Engine」は、これまで通り「MFX」を2基並列で搭載している。Arc AシリーズのXe Media Engineはコンシューマー向けのGPUとしてはいち早くAV1のハードウェアエンコードにも対応したが、今回新たに「AV1 Screen Content Coding」に対応。低ビットレートでも文字の輪郭などをより明瞭にエンコードすることが可能になった。
ドライバーも進化したが、録画関係の機能が消滅
Arc B580のドライバーでは、設定アプリが「Intel Graphics Software」となり、UIも大幅刷新された。まだβ版だからなのかは不明だが、旧設定アプリ「Intel Arc Control」にあった録画関連の機能が消えてしまったのが残念だ。ただこの変更はβ版だからなのか、今後復活するのかは不明だ。
Intel Graphics Softwareのメイン画面。落ち着いていて見やすい。ホットキー(Alt+I)では呼び出せなくなったが、Alt+Iは割と他のアプリ(Lightroom Classicとか)でバッティングしやすいので、むしろ助かる
Intel Graphics SoftwareでフレームレートやGPUの各種状態を監視する画面。フレームレートも平均と99パーセンタイルを分けて表示するなど、かなりベンチマークツール(「CapframeX」)に近い出来のようだ
ドライバー以外の更新点として、インテルがArc向けに公開しているローカルAIお試し環境「AI Playground」も見ておくとよいだろう。プロンプトからの画像生成、あるいはプロンプトからの文章生成(いわゆるLLM)などを簡単に試せる。現在AI Playgroundの公式(https://github.com/intel/AI-Playground/releases)にはバージョン1.22bまでしか登録されていないが、そのうち筆者が試したバージョン2.0も登録されることだろう。

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