最新パーツ性能チェック 第448回
Ryzen 9000シリーズの成長を見守る
TDP 105W動作にするとRyzen 7 9700X/Ryzen 5 9600Xはどの程度化ける? レッドゾーン寸前を攻める絶妙な設定だが、ゲームでの効果は期待薄
2024年09月03日 13時00分更新
Ryzen 7 9700XのTDP 105W設定は
Zen 5ダイのレッドゾーン寸前を攻めるような絶妙な設定
ではTDP 65W/ 105W/ 120Wの各設定において、なにがRyzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xの限界を決めているのだろうか? HWiNFO ProではPPT/ TDC/ EDCおよびThermal(CPU温度)の“Limit”をパーセント単位で観測できる。
例えばPPT Limitが50%ならPPT枠の半分を使用していること(142Wなら71W)になるし、Thermal Limitが100%なら温度の限界点(95度)に到達してしまった、という意味になる。まずはRyzen 5 9600Xのデータから見ていこう。
Ryzen 5 9600Xの場合、TDP 65W設定ではPPT Limitが常時100%に張り付く一方で、TDC Limitは75%程度、EDC Limitに至っては最大でも50%しか使われていない。つまりCPU温度よりもCPUが受け取る電力が制約要因であることが示されている。PPTが88Wにおさまるよう、見事にCPUの挙動を制御しているわけだ。
ところがTDPを105W設定にするとThermal Limitが幅を効かせるようになり、100%付近で安定するようになる一方、PPT Limitは90%弱に抑制される。先のグラフでRyzen 5 9600XをTDP 105W設定にした場合のPPTは120Wをやや越える程度と出ていたが、PPT定格142Wの90%が約120Wなのだから、計算通りの値になっている。
TDC LimitやEDC Limitの値はどのTDP設定でも十分余裕があるため、PPT LimitもしくはThermal LimitがCPUの挙動制御における支配的要素であることがわかる。
Ryzen 7 9700Xに関しても同様のデータが得られた。すなわちTDP 65W設定ではPPT Limitの枠を使い切ってしまうためCPUの温度や消費電力が上昇しないが、TDPを105W以上の設定にするとThermal Limitが優位気味になる。
ただRyzen 7 9700XのTDP 105W設定ではThermal LimitもTDC Limitもほぼ100%近くまで使われてしまうが、PPT Limitが常時100%に張り付いている。つまりRyzen 7 9700XのダイはPPTを142Wの限界まで使いきることでThremal Limitもほぼ限界まで攻められる。Ryzen 7 9700XのTDP 105W設定はZen 5ダイのレッドゾーン寸前を攻めるような絶妙な設定であるとみなせる。
TDP 105W設定でもCurve OptimizerやCurve Shaperでチューニングすればもっとパワーを絞り出せる可能性はあるが、製品ごとのバラツキがあっても安心して使えるTDP設定ということでTDP 65Wが選ばれた可能性もある。
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