ルビコン川を渡って約10年、次の時代を切り開く新シリーズ
現代のDALIの魅力が存分に詰まった新スピーカー「RUBIKORE」シリーズ発表
2024年08月26日 11時00分更新
磁性流体をなくした新開発ツィーター
RUBIKOREシリーズが採用した主要技術と、各製品の違いについて紹介しよう。ポイントとなるのは一新されたドライバーユニット群だ。中核をなすのは他のモデルと同様「ソフトドーム・トゥィーター」と「ウッドファイバーコーン」だが、KOREの設計思想(KORE Technology)を盛りこんだ新しいものとなっている。
ソフトドーム型ツィーターは29mmと口径の大きなものを採用。これは下の帯域まで特性を広げ、ウーファーとのクロスオーバー(下の帯域の再生)を楽にするためだ。25mmから1mmずつ大型化し、ついにこのサイズにまで大型化した。
高域ユニットは、指向性を広くするために幅17×高さ45mmのリボン型ツィーターを組み合わせたハイブリッド構成。各部品はアルミダイキャスト製のマウントプレートでガッチリと固定している。「RUBIKORE 2」はリボンがなくソフトドームのみだが、これは高さの増加を嫌ったためだという(とはいえ、基本となるのはこの2ウェイ構成であり、トールボーイ型はこれに高域や低域を増強するためのユニットを追加したものと考えられる)。
なお、リボンツィーターは振動板が縦長なので、音が水平方向に広がる効果がある。ラインアレイの線音源に似た効果だろうか。逆に垂直方向の広がりは抑えられる。設置時にはリボン型ユニットが耳の高さにくるようセッティングするといいそうだ。
リボンツィーターはスーパーツィーターに近い役割を果たすが、ソフトドーム型も高域は切らず自然に減衰するところまで伸ばしている。ウーファー同様、ツィーターもスタガー接続になっているわけだ。
リボン型ユニットを採用した目的は、20kHzまでの指向性をしっかりと確保するためだという。実はソフトドームも20kHzを超す高域の再現が可能だが、10kHz以上の音になると指向性が鋭く(ビーム状に)なり過ぎてしまう。薄いシルク素材を使ったソフトドームと金属製のリボンツィーターでは音色が全く異なるが、リボンツィーターが担当するのは14kHz以上の高域となるため、音色におよぼす影響はほぼないという。
高域ユニットでKOREから継承した技術が「Low-Loss ドーム・トゥイーター」だ。特徴は磁性流体を使用しない点にある。
通常のドライバーでは、ボイスコイルを差し込む磁気回路の隙間(エアーギャップ)にオイルを流す。このオイルが磁性流体で、不活性なオイルに鉄粉を溶かすことで、流体でありながら磁性も帯びている。
1970年代の終わりごろから使われ始め、磁気回路のギャップを狭くしてドライバーの性能を出すためには必要な技術だった。また、放熱効果を持ち、固体同士とは異なりボイスコイルがこすれて生じるノイズが発生しにくく、製造時の品質を保ちやすいなど使用するメリットが多いため、現在ではほぼ全てのドーム型ユニットがこのオイル(磁性流体)を採用している。
ただし、液体である以上は粘り気があり、高域の鋭敏な反応をわずかに阻害する面もある。特にソフトドームツィーターで利用するオイルは、振動板素材のシルクが油を吸い上げないようにするため、粘性が高いものを利用するのが通常であるという。
澤田氏の説明では「B&Wが金属ドームやダイヤモンドドーム向けに利用しているものより10倍粘る」そうだ。
とはいえ、一般のメーカーはそこはあまり問題視せず、便利さや製造管理のしやすさなどの利点を取る。しかし、DALIはこのわずかな違いを嫌って、量産できる範囲でぎりぎりの柔らさを持つオイルを使ってきたという。
この思想をさらに突き詰めて、磁性流体を使わないユニットを開発したのがKOREであり、RUBIKOREでもその技術を継承した製品である。また、Low-Loss ドーム・トゥイーターを製造するためには、オイルを使わなくても問題がない耐熱性能、稼働する部分がこすれないようにする高度な品質管理、そのための設計技術などが必要である。
その実現に徹底的に取り組んだ成果とも言える。
使用するマグネットを大きくして能率を高めているほか、ドームの裏側にくる吸音材や空気室に導く構造にも気を遣っている。背面の蓋(樹脂製)にも、リブを入れて鳴かないようにした。
「RUBICONと比較すると一発でツィーターの音の違いがわかるはず」とのことだが、見た目にも決め手となるボイスコイルのボビンの精度(真円度やスリッドの精度など)が現れている。


















