最新パーツ性能チェック 第446回
「Ryzen 9 9950X」「Ryzen 9 9900X」は“約束された”最強のCPUになれたのか? ベンチマークで見えた利点と欠点
2024年08月14日 22時00分更新
TDPが上昇したぶん、消費電力も大きく増えた
続いては「Handbrake」による動画のエンコード時間比較だ。4K@60fps、再生時間は約3分の動画を用意し、これをHandbrakeのプリセットである“Super HQ 1080p30 Surround”と“Super HQ 2160p60 4K HEVC Surround”でエンコードする時間を計測した。エンコード処理はCPU側だけで処理し、メインストリームCPUだと処理に3分以上はかかるため、CINEBENCH 2024に近い傾向になると予想される。
予想通りCINEBENCHのグラフを反転させたような傾向になったが、H.265(Super HQ 2160p60 4K HEVC Surround)では、Ryzen 9 9950XはDDR5-5600でもCore i9-14900Kを上回る処理速度を発揮。Ryzen 9 9900XもCore i7-14700Kを僅差でかわした(Core i9-14900KとCore i7-14700Kの差がないのは、電力制限の影響が強いためだと思われる)。
Ryzen 9000シリーズの上位モデルはDDR5-6000にするとわずかではあるが性能が伸びるのに対し、Ryzen 7 9700X以下の2モデルでは逆に処理時間が延びてしまう(確信が持てるまでOSのクリーンインストールも含め時間をだいぶ無駄にした)。この対比が非常に興味深い。
メモリークロックを上げることでIODの消費電力が上がり、その結果としてCCD側が使える電力が減らされたためと考えられる。逆にTDPに余裕のあるRyzen 9 9950XおよびRyzen 9 9900Xでは、IODの消費電力が少々上がってもさほど影響はない……という理屈だ。
このHandbrakeでSuper HQ 1080p30 Surroundを使用したエンコード処理中に、どの程度の電力が消費されているかをHWBusters「Powenetics v2」を利用して実測してみよう。システム全体の消費電力(ATX+EPS12V×2+PCIe 8ピン×2+PCIe x16スロットの合計値)と、CPUだけの消費電力(ESP12V×2)を比較する。
このグラフでは高負荷時のデータは3種類あるが、これらはエンコード中に消費された電力の平均値/ 99パーセンタイル値(99%Tileと表記)/ 最大値である。また、アイドル時はアイドル状態だが3分間計測した平均値だけを示している。
Ryzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xの場合はTDPを65Wに絞ったモデルであるため、TDPの高い前世代よりも消費電力が目に見えて下がった。しかし今回のRyzen 9 9950XおよびRyzen 9 9900Xの場合はTDPが170Wと120Wと大きいため、既存のモデルに比べ省電力になった、という印象はない。それどころかRyzen 9 9950Xの場合、同じTDP設定の7950Xよりも平均値で21W、99パーセンタイル値でも26W上昇した。
Ryzen 9 9900XはTDPが120Wとやや絞られているモデルだが、TDP 170W設定の7900Xとほぼ同程度の消費電力になった。そしてDDR5-6000使用時は消費電力がわずかに上昇するが、特にアイドル時の消費電力増加が顕著だ。
先のHandbrakeでエンコードしている裏でCPUのクロックや温度、Package Powerといったデータはどう変動するのか? 「HWiNFO Pro」を利用し追跡した。
前回Ryzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xの検証を行なった際も、Ryzen 9000シリーズは7000シリーズの同格モデルに比してクロックが下がる傾向が観測できたが、これは上位モデルでも同じである、ということが分かる。TDPが前世代と同じRyzen 9 9950Xにおいても、7950Xより200MHz程度低いが、9950XにDDR5-6000を組み合わせた場合はさらに下がるが、下げ幅は100MHzにも満たない。
一方Ryzen 9 9900Xと7900Xに関しては、動作クロックはほぼ差がない。こちらにおいてもRyzen 9 9900XとDDR5-6000の組み合わせにおいて、9950Xと同様にクロックが下がっていることが認められたが、同様に誤差程度の落差にとどめている。
この連載の記事
-
第458回
自作PC
Arc B580のRTX 4060/RX 7600超えは概ね本当、11本のゲームで検証してわかった予想以上の出来 -
第457回
自作PC
インテル新GPU、Arc B580の実力は?AI&動画エンコードは前世代より超強力に -
第456回
デジタル
「Ryzen 7 9800X3D」は高画質設定でも最強ゲーミングCPUであることに間違いはなかった -
第455回
デジタル
「Ryzen 7 9800X3D」が最強ゲーミングCPUであることを証明する -
第454回
デジタル
性能が最大50%引き上げられたSamsung製SSD「990 EVO Plus」は良コスパSSDの新星だ -
第453回
デジタル
性能も上がったが消費電力も増えた「Ryzen 7 9800X3D」最速レビュー、AI推論の処理速度は7800X3Dの約2倍! -
第452回
自作PC
Core Ultra 200Sシリーズのゲーム性能は?Core Ultra 5/7/9を10タイトルで徹底検証 -
第451回
自作PC
Core Ultra 9 285K/Core Ultra 7 265K/Core Ultra 5 245K速報レビュー!第14世代&Ryzen 9000との比較で実力を見る -
第450回
デジタル
AGESA 1.2.0.2でRyzen 9 9950Xのパフォーマンスは改善するか? -
第449回
デジタル
Ryzen 9000シリーズの性能にWindows 11の分岐予測改善コードはどう影響するか? -
第448回
デジタル
TDP 105W動作にするとRyzen 7 9700X/Ryzen 5 9600Xはどの程度化ける? レッドゾーン寸前を攻める絶妙な設定だが、ゲームでの効果は期待薄 - この連載の一覧へ