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先行販売価格は2万円台、Bluetoothスピーカーでおすすめはステレオペア

これは音がいい……と静かに興奮、米国ブランドKlipschの「Nashville」を聴く

2024年08月13日 18時00分更新

文● HK 編集●ASCII

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デザインはギターアンプのイメージ?

 まずは外観から。前面と背面にはパンチングメタルを用いたグリルがあり、その上にKlipschの文字が筆記体であしらわれている。このロゴは創業者ポール・W・クリプシュ氏の自筆文字をモチーフにしたものだという。色といい、形といい、狙っているのはギターアンプだろうか? なるほど、見た目からもロックの再生に合いそうな雰囲気を漂わせている。

クリプシュ(Klipsch)のNashville” title=

クリプシュらしいテイストを保ちつつ高品質な外観

 デザインは全体に重厚感を感じさせるもの。ちなみに、黒地にブロンズという色の組み合わせは、ほかのクリプシュ製品にも共通したデザインテイストだ。天面には斜めの柄が入っており、カーボンファイバーを想起させる。まとめると、コンパクトでどこでも置けるサイズであると同時に、高い質感、所有感を感じさせる本体だ。

音いいじゃないですかー

 デモでは最初に単体、次にステレオペア(スピーカーの距離が近いセッティングと遠いセッティング)で再生。ソースはスマホとレコードが選択された。本体にはアナログ入力がないので、レコードの音もBluetooth経由だった。

 その音質は素直に「素晴らしい」と称賛できるもの。まず印象的なのは低域の力強さと音の広がり。デモのスペースはかなり広く、相応の音量を出さないと迫力を感じられないが、その広さに負けない力強さがあり、部屋を音楽で満たしていた。

 発祥の地域が関係しているのか、得意なのはカントリーミュージックやブルースなのだという。もちろんロックもいい。いずれも実にアメリカらしいジャンルである。

 音の傾向としては、ピラミッドバランス的な太く腰のすわった低域、無音からスパンと気持ちよく立ち上がる打楽器、音階がとにかく明確なベース音、ピンと弾くギターの弦の明瞭さ、付帯音が少なく爽快感のあるボーカル……などが特徴的だ。

 一言でまとめるなら「とにかく聞いていて気持ちがいい音」。爽快かつおおらかに音楽の魅力を引き出してくれる。

 高域を欲張らないウォームなトーンバランスだが、低域から高域まで全ての帯域で抜け感はよい。音は澄み渡った空のように晴れやかで、人の声などの表現はカラッとしている。響きに堅苦しさがなく、よくほぐれて、軽快かつ天真爛漫だ。前後の空間に音が大きく広がっていくので、大型スピーカーで再生した際に感じるような、音に包み込まれるような感覚も味わえる。

 このサウンドは、クリプシュの単品スピーカーにも通じるテイストでもある。ユニット構成などはまったく異なるのだが、まっすぐ飛んでくるホーンの音、高効率で細かな音も豊かに表現する表現力などを思い起こさせ、どこかで通じている感じがする。少なくとも、価格やサイズは違っても共通の思想の上に作られた製品なのだと実感できた。

充実した低音と、反応/抜けがいい中音域

 カーペンターズ、MR. BIG、石川さゆりなど、用意された何曲かのデモを聞いてみた。音楽のニュアンスがよく伝わる理由は、低域の音階感がよくつかめ、打楽器やベースといったリズム帯の立ち上がりが速く、明瞭に聞こえるためだとわかった。低域がこもったり、声など中域にかぶったりすることもほぼないので、音抜けも非常に良い。

 高解像度な音というと、高域がキツめなサウンドを思い浮かべる人が多いかもしれないが、そこは欲張らず刺激なくまとめる一方で、歌い手の呼吸までとらえるような鋭敏な音の変化、ニュアンスの変化に追従できる。

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試聴風景

 特に素晴らしいと感じたのは、複数の楽器がある編成で、個々の音の音色がきちんと描き分けられ、かつ、きちんと分離する点だ。例えば、「イエスタディ・ワンス・モア」を歌うカレン・カーペンターの声は付帯音が少なくカラッとした印象。低めで少しハスキーな声の質感が感じられ、解像感の高さがある。その一方で、立ち上がりの速いドラムス、広がりのあるストリングスの音なども印象的。一体型のスピーカーであるにもかかわらず、これらの音が混濁せず、明瞭に再現されるのがいい。

 ステレオペアにすると、左右の広がりが出るのはもちろんだが、前後の奥行きがより深くなる印象がある。デモ環境ではスピーカーの数メートル後ろにある壁にカレンのボーカルが定位するように聞こえた。一方、ストリングスやドラムスなどの伴奏はその前方に展開される。少し面白い配置だが、ボーカルのレイヤー、伴奏のレイヤーがくっきりと分かれ、その対比が楽しめるのが印象的だ。

 邦楽やブルース系などほかにも様々なジャンルの音を体験できた。トーンバランスの関係か、相性がいいのは女性ボーカルよりも男性ボーカルで、アコースティック楽器を取り入れたメリハリ感のあるサウンドに向いているというのが筆者の感想だ。

 とはいえ、竹内まりやの「告白」のようなシティーポップ系の楽曲も、ベースラインのビート感、キラキラしたシンセの音、硬質で空間にスパンと立ち上がるドラムスなどが印象的で心地よかった。

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前方、後方の360度に音が広がっていく

 また、360度スピーカーは前方にスイートスポットができる一般的なスピーカーとは異なり、発生した音がそこから周囲に広がり音声を作る。ある意味、楽器の鳴り方にも近い方式だ。石原裕次郎の「夜霧よ今夜も有難う」など、サックスは左、ストリングスは右、ボーカルは中央のように楽器を鳴らす位置がはっきりと分かれた古いタイプのステレオ音源などと思いのほか相性がいい(距離を離して置くと、それぞれの楽器がその位置から鳴っているように聞こえる)。

 全体のテイストとしてはJBLなど、伝統的なアメリカのスピーカーのサウンドともシンクロする。アコースティックギターなどを絡めたロックなどとは相性抜群だが、低域が太く音場が広いので、オーケストラや映画のサウンドトラックを、スケール感あふれるサウンドで楽しみたい人にもいい選択だろう。

 試しにYMOの「テクノポリス」を聞いてみたが、各音が非常に明瞭。特にベースラインの再現が非常によく、量感もある。キックの音などがしっかりとして、グルーブ感がよく出ていた。S/N感(無音と有音の対比)がいいためか、ボコーダー的な音も空間に浮き上がる。

 抜け感もよく、音場の広がり、ストリング系の音色の滑らかさがあって、柔らかい音と、硬い音の対比がしっかり出る。低域の量感があり、かつ音程やビート感の再現が優れている点はダンス系の音楽の再生にもプラスに働くだろう。

 最近ではBluetooth接続するソース機は広がり、スマホやパソコンだけでなく、アナログレコードプレーヤーやテレビなども広く活用されている。こうしたソースの再生先として、Nashvilleを選択してみるのも面白い。コンパクトで広いスペースに負けない広がりあるサウンドを再現できるスピーカーだと実感できるはずだ。

 このようにNashvilleのサウンドクオリティーは非常に高く、迫力と心地よさの両立が楽しめるスピーカーだった。微細な音も非常によく再現(分離)するが、眉間にシワを寄せて細かい音の違いに神経を尖らせるのではなく、もっとおおらかに構えて、いい音楽を演奏された空間の雰囲気を感じつつ聞く使い方に合っていると言えそうだ。

 興味を持った人はデモを体験したり、製品を手にしたりして、クリプシュらしい音の世界を体験してほしいものだ。

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