Lunar LakeのGPU動作周波数はおよそ1.65GHz
Vector Engineの構造もだいぶ変わった。というよりもともとのXeが変だったのかもしれないが、従来は2つの256bit Vector Engineで1つのスレッドコントロールを共有する、つまり1つのスレッドコントロールが2つの256bit Vectorを管理する)という構造で、それぞれ別にレジスターファイルを持つ構造だったのが、今回1つにまとめられることになった。
おそらくはこれによって、内部のスケジューリングが多少簡単になり、それが冒頭の画像に出てくる"Higher utilization"につながっていったと考えられる。
ちなみにMXMの構成は1サイクルあたり2万48Ops(FP16)ないし4096Ops(INT8)となっており、これは現在のIntel Arcで利用されているXe-HPGのものと同じ性能である。
ここからLunar LakeにおけるGPUコアの動作周波数が推定できる。上の画像にあるように、XMXはINT8なら4096 Ops/サイクルとなっている。これとは別にVector Unitの方ではDP4A命令が実行できる。
MXMはMeteor Lakeの時代にも搭載されていたもので、XeSSなどでも利用されているものだ。その処理性能をまとめたのが下の画像であるが1024 Ops/サイクルとなっており、合計で5120 Ops/サイクルとなる。
これはXe-Core1つあたりの処理性能なので、8 Xe-CoreのLunar Lakeでは4万960 Ops/サイクルとなる。この処理性能で67TOPSを実現しようとすると、動作周波数は1.6357...GHzとなる計算だ。
1.6GHzでは65.5TOPS、1.65GHzだと67.6TOPSほどになるので、現実問題としては1.65GHzで、これを丸めて67TOPSと称しているのではないかと推定できる。
この数字、Meteor Lake世代は1.75~2.35GHzとやや高めだったことを考えると低いという感じもするが、前回説明したようになにしろメモリー帯域がMeteor Lakeよりも低めである。
また前回説明はしなかったが、Memory Side CacheはGPUからアクセスできないことが質疑応答の際に明らかになっている。これはどういうことかというと、Memory Side CacheをGPUのワークエリアとして利用することは一切想定していないという話である。
8MB程度では、テクスチャーキャッシュ、あるいはレイトレーシング用のワークエリアとしては明らかに不十分であって、しかも前回の筆者の推定が正しければMemory Side Cacheはスヌープキャッシュやライトバックキャッシュとしても使われるため、GPUに割けるような領域はほとんどないだろう。
ということは、Lunar LakeはMeteor Lakeと比べても6割程度のメモリー帯域でGPUのやりくりをしないといけないわけで、無駄に動作周波数を上げてもメモリー帯域が間に合わないからGPUが空転することになりかねない。この1.65GHzというのは、メモリー帯域を使い切るギリギリの数字なのかもしれない。
ちなみにVector EngineやXMXだけでなく、レイトレーシング・ユニットの強化も行われている。ただこれに関しては、Meteor Lakeの時代からどの程度向上したのかが明確にされていない。
効率は間違いなく向上しているのだろうが、絶対性能という観点で見るとMeteor Lakeと比較して同等くらいが精いっぱいかと想像される。理由は、レイトレーシングもまたメモリーアクセスを多用するためだ。
この連載の記事
-
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第787回
PC
いまだに解決しないRaptor Lake故障問題の現状 インテル CPUロードマップ -
第786回
PC
Xeon 6は倍速通信できるMRDIMMとCXL 2.0をサポート、Gaudi 3は価格が判明 インテル CPUロードマップ -
第785回
PC
Xeon 6のIOチップレットには意地でもDDR5のI/Fを搭載しないインテルの強いこだわり インテル CPUロードマップ -
第784回
PC
Intel 3は300~500MHz動作周波数が向上する インテル CPUロードマップ -
第783回
PC
Lunar LakeにはWi-Fi 7があるがPCIe x16レーンは存在しない インテル CPUロードマップ -
第782回
PC
Lunar LakeはNPUの動作周波数がアップし性能は2倍、ピーク性能は4倍に インテル CPUロードマップ -
第780回
PC
Lunar Lakeに搭載される正体不明のメモリーサイドキャッシュ インテル CPUロードマップ -
第779回
PC
Lunar LakeではEコアの「Skymont」でもAI処理を実行するようになった インテル CPUロードマップ - この連載の一覧へ