このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

最新パーツ性能チェック 第442回

内蔵GPUを削除したRyzen 7 8700FとRyzen 5 8400Fに存在価値はあるのか?

2024年05月30日 11時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2024年5月29日11時、AMDは日本国内におけるSocket AM5ベースの新プロセッサー「Ryzen 7 8700F」および「Ryzen 5 8400F」の販売を解禁した。実売価格(税込)はRyzen 7 8700Fが4万9800円、Ryzen 5 8400Fが3万2800円となる。

Ryzen 7 8700Gの表面。Ryzen 8000Gシリーズと同様に基板表面のキャパシターが「表から」見える所には配置されていない(ヒートスプレッダーの下にすべて隠れている)

 型番末尾に「F」があることからも分かる通り今回の新モデルは内蔵GPUを搭載しない。強力な内蔵GPUを持つがゆえにRyzen Gシリーズは「APU」を名乗っていたわけだが、F付きなので果たしてAPUと呼んで良いものなのだろうか? それとも単なるCPUと呼ぶのが正しいのだろうか?

Ryzen 5 8400Fの表面

 些末な疑問はさておき、この2モデルは既存のRyzen 7 8700GやRyzen 5 8500Gと同じ、モバイル向けのRyzen 7000シリーズに開発されたコア(Phoenix)をベースにした製品である。

 今回筆者は幸運にもAMDよりRyzen 7 8700GおよびRyzen 5 8400Fの2モデルをお借りできた。すでに海外では発売済みであるためやや新鮮味には欠けるものの、Socket AM5のエントリークラスを補強する製品(特にRyzen 5 8400F)はどの程度の性能か気になるところだ。このあたりをベンチマークを通じて検証していきたい。

Ryzen 7 8700Fの情報:「CPU-Z」で情報を取得

Ryzen 5 8400Fの情報:Ryzen 7 8700Fよりもコア数が少ない

PCI Expressのレーン数とNPUの有無に注目

 Ryzen 7 8700GとRyzen 5 8400Fのスペックは、それぞれの上位モデル(8700Gおよび8500G)と同じコア数だが内蔵GPUを取り去りわずかに動作クロックを下げたもの、と考えれば分かりやすい。Phoenixベースであるため4nmのモノリシックダイ構成を採用することで部品や配線コストを削減したモデルとなる。Ryzen 7 8700GはZen 4のみで構成されるPhoenix1ベース、Ryzen 5 8400FはZen 4とZen 4cを混在するPhoenix2ベースである点も既存のRyzen 8000Gシリーズと共通となる。

 Ryzen 7 8700Fと8700Gの差分は非常に小さい一方で、Ryzen 5 8400Fは8500GよりもPCI Expressのレーン数において8500Gより勝っている部分がある、という点に注目したい。Ryzen 5 8500Gはユーザーが利用可能なPCI Expressのレーン数は合計10レーンと少なく、うちM.2が4レーン+2レーン使用するためビデオカードが使えるのはわずか4レーンという弱点があった。

 ところがRyzen 5 8400Fは合計16レーンであり8レーンをビデオカードに、さらに4レーン×2をM.2に割り振れる。Ryzen 5 8500Gは内蔵GPUだけを使ったローコストPCを組むという点では優秀だが、そこからビデオカードを増設して強化していくことを考慮すると、4レーンで接続するというのは大きなハンデだ。しかしRyzen 5 8400Fはビデオカードが必須という制約があるぶん、強力なGPUを接続してもしっかり使ってくれる(既存のRadeonやGeForceではx16をx8接続にしたところで性能低下はほぼ無視できる)だろう。

 下表は、Ryzen 7 8700F/ Ryzen 5 8400Fと、その近傍の製品とのスペック比較だ。PCI Expressのレーン数はチップセットと接続するための4レーン分を含む。

Ryzen 7シリーズとの比較表
  Ryzen 7 8700G Ryzen 7 8700F Ryzen 7 7700
アーキテクチャー Zen 4 (4nm) Zen 4 (4nm) Zen 4 (5nm+6nm)
コア/スレッド Zen 4 x8 / 16 Zen 4 x8 / 16 Zen 4 x8 / 16
ベースクロック 4.2GHz 4.1GHz 3.8GHz
ブーストクロック 5.1GHz 5GHz 5.3GHz
L2キャッシュ 8MB 8MB 8MB
L3キャッシュ 16MB 16MB 32MB
対応メモリー DDR5-5200 DDR5-5200 DDR5-5200
PCI-Express Gen4 20レーン Gen4 20レーン Gen5 28レーン
TDP 65W 65W 65W
内蔵GPU Radeon 780M -- Radeon Graphics
CU数 12 -- 2
GPUクロック 2.9GHz -- 2.2GHz
NPU ×
TOPS 16TOPS 16TOPS --
対応ソケット AM5 AM5 AM5
CPUクーラー Wraith Spire Wraith Stealth Wraith Prism w/LED
Ryzen 5、Ryzen 3シリーズとの比較表
  Ryzen 5 8500G Ryzen 5 7500F Ryzen 5 8400F Ryzen 3 8300G
アーキテクチャー Zen 4 (4nm) Zen 4 (5nm+6nm) Zen 4 (4nm) Zen 4 (4nm)
コア/スレッド Zen 4 x2+ Zen 4c x4 / 12 Zen 4 x6 / 12 Zen 4 x2+ Zen 4c x4 / 12 Zen 4 x1+ Zen 4c x3 / 8
ベースクロック 3.5GHz
Zen 4: 4.1GHz
Zen 4c:3.2GHz
3.7GHz 4.2GHz
Zen 4: ??GHz
Zen 4c:??GHz
3.4GHz
Zen 4: 4GHz
Zen 4c:3.2GHz
ブーストクロック 5GHz
Zen 4c: 3.7GHz
5GHz 4.7GHz 4.9GHz
Zen 4c: 3.6GHz
L2キャッシュ 6MB 6MB 6MB 4MB
L3キャッシュ 16MB 32MB 16MB 8MB
対応メモリー DDR5-5200 DDR5-5200 DDR5-5200 DDR5-5200
PCI-Express Gen4 14レーン Gen5 28レーン Gen4 20レーン Gen4 14レーン
TDP 65W 65W 65W 65W
内蔵GPU Radeon 740M Radeon 760M -- Radeon 740M
CU数 4 8 -- 4
GPUクロック 2.8GHz 2.8GHz -- 2.6GHz
NPU × × ×
TOPS -- 16TOPS -- --
対応ソケット AM5 AM5 AM5 AM5
CPUクーラー Wraith Stealth Wraith Stealth Wraith Stealth  

Ryzen 5 8400F環境にPCI Express x16接続の「Radeon RX 7800 XT」を接続するとx8でリンクする

 また、Ryzen 7 8700Fには兄弟分である8700Gと同様にAI処理に特化した「NPU(Neural Processing Unit)」が搭載されている一方で、Ryzen 5 8400FはNPU非搭載となる。NPUが有効なアプリが非常に少ない(Premiere ProのようにNPUを使うアプリはあるが、NPUを使うとされる機能を使ってみてもNPUの負荷はちっとも上がらない)現状を考えると大したデメリットではないが、NPUを利用したAI処理を視野に入れているなら、Ryzen 7 8700Fや8700G、もしくはRyzen 5 8600Gといった上位モデルを選択するほうがいいだろう。

Ryzen 7 8700Fを組み込んだシステムにおいて「HWiNFO Pro」のセンサー一覧を見ると、CPU内にNPUのクロックや使用率を示す項目が出現する

Ryzen 5 8400FにはNPUが搭載されていないため、NPUがセンサー一覧から消えている

今回検証に使用したマザー(ASUS「ROG STRIX B650-A GAMING WIFI」)には、Ryzen 7 8700F専用のNPUドライバーが配布されていた

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

ピックアップ

ASCII.jpメール アキバマガジン

ASCII.jp RSS2.0 配信中