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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第775回

安定した転送速度を確保できたSCSI 消え去ったI/F史

2024年06月10日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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安定した転送速度を確保できるI/Fとして重宝される

 このように、1990年代にパラレルSCSIは外部周辺機器や内蔵HDDの接続用I/Fとして大変にポピュラーであった。家庭用だけでなく、例えば計測装置からのデータ収集などの用途にも、SCSIは安定して「それなりの」転送速度を確保できるので重宝された。特にこれが顕著だったのは企業向けで、より広帯域かつ同時接続台数を増やした規格が後追いで追加されることになる。

 下表がパラレルSCSIの簡単な概略である。まず、1986年に標準化されたのが初代SCSI、SCSI-1と呼ばれることもあるが、単にSCSIと表記される場合は大体このSCSI-1を指す。

パラレルSCSIの概略
標準規格 仕様群名 仕様名 信号速度 転送バス幅 転送帯域 伝送方式 LUN数 コネクター
ANSI X3.131-1986 SCSI-1 SCSI 5MHz 8bit 5MB/sec SE/HVDiff 8 50pin
ANSI X3.131-1994 SCSI-2 Fast SCSI 10MHz 8bit 10MB/sec SE/HVDiff 8 50pin
Fast Wide SCSI 10MHz 16bit 20MB/sec SE/HVDiff 16 68pin
INCITS T10 SCSI-3 Ultra SCSI 20MHz 8bit 20MB/sec SE/HVDiff 8 50pin
Ultra Wide SCSI 20MHz 16bit 40MB/sec SE/HVDiff 16 68pin
Ultra2 SCSI 40MHz 8bit 40MB/sec LVDiff 8 50pin
Ultra2 Wide SCSI 40MHz 16bit 80MB/sec LVDiff 16 68pin
Ultra160 40MHz DDR 16bit 160MB/sec LVDiff 16 68pin
Ultra320 80MHz DDR 16bit 320MB/sec LVDiff 16 68pin

 構造は8bitのパラレルバスで、実は伝送方式はSingle EndedとDifferentialの両方がサポートされている。

ANSI X3.131-1986の表紙。当時のことだから規格書は当然紙でしか提供されていない

 信号電圧そのものは5Vであり、Differentialの場合は電位差が最低1Vとなっている。おもしろいのはSingle EndedとDifferentialでピンの物理形状はまったく同じであり、信号の割り当て方のみが異なる格好だ。

左がSingle Ended、右がDifferential。なのでSingle Endedのみで使うなら、25ピンで済むことになる

 なにしろ1980年代の規格なので、クロック信号に同期するわけではなく、基本はREQ(Request)/ACK(Acknowledge)の信号を利用してのハンドシェイクに同期する形でDB0~DB7までの信号(+パリティのDBP)を送受信する格好である。SCSIもSASIを元にしただけのことはあり、1本のSCSI BUSに複数デバイスが接続できるあたりはSASIにそっくりである。

SCSIの元となるSASIの仕様

こちらがSCSIの仕様。SASIの規格書からそのままコピーしただけでは? というくらいそっくりな構図

 ただSASIは「規格上」8台まで接続可能だったが、SCSIは本当に8台の接続が可能である。この際にそれぞれのデバイスの区分けをするのがLUN(Logical Unit Number)で、通常SCSIコントローラーが0、ドライブ類が1~7を使う格好になる。この設定のためにDIPスイッチやロータリースイッチがSCSIコネクターのそばに用意されるのが通例だった。

筆者宅に転がっていたSCSIのドライブケース。"4"となってる部分がロータリースイッチで、ここから3本のジャンパー線が伸びてSCSI機器に接続する格好になっていた。ちなみにHDDやMOドライブなどはコネクターのそばにスペースが足りないので、別の場所にジャンパーピンなどが設けられた

 なおSCSIの仕様(2つ上の画像)では見事に省略されているが、SCSIバスのケーブルは通常ディジーチェーン式に伸ばすことが可能であり、一番最後にターミネーターを接続する必要がある。これは別にデバイスではないので、LUNは振られない。あくまでも電気的な問題で、信号が終端で反射して戻らないように減衰させるためのものである。

 コネクターはSCSI-1の場合、Non-Shield SCSI Device Connectorとして50ピンのフラットタイプが定義されたが、外部接続用のコネクター類は実は未定義のままである。記事冒頭の画像に示す左側はHigh-density SCSI Connector、右はLow-density SCSI Connectorであるが、これが定義されたのは次のSCSI-2からである。だからこそ、連載771回の冒頭で触れたがMacintosh PlusではSingle Endedに絞った形で25ピンのD-Subで外部SCSI用コネクターを出すなんていうことが可能だったとも言える。

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