安定した転送速度を確保できるI/Fとして重宝される
このように、1990年代にパラレルSCSIは外部周辺機器や内蔵HDDの接続用I/Fとして大変にポピュラーであった。家庭用だけでなく、例えば計測装置からのデータ収集などの用途にも、SCSIは安定して「それなりの」転送速度を確保できるので重宝された。特にこれが顕著だったのは企業向けで、より広帯域かつ同時接続台数を増やした規格が後追いで追加されることになる。
下表がパラレルSCSIの簡単な概略である。まず、1986年に標準化されたのが初代SCSI、SCSI-1と呼ばれることもあるが、単にSCSIと表記される場合は大体このSCSI-1を指す。
| パラレルSCSIの概略 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 標準規格 | 仕様群名 | 仕様名 | 信号速度 | 転送バス幅 | 転送帯域 | 伝送方式 | LUN数 | コネクター |
| ANSI X3.131-1986 | SCSI-1 | SCSI | 5MHz | 8bit | 5MB/sec | SE/HVDiff | 8 | 50pin |
| ANSI X3.131-1994 | SCSI-2 | Fast SCSI | 10MHz | 8bit | 10MB/sec | SE/HVDiff | 8 | 50pin |
| Fast Wide SCSI | 10MHz | 16bit | 20MB/sec | SE/HVDiff | 16 | 68pin | ||
| INCITS T10 | SCSI-3 | Ultra SCSI | 20MHz | 8bit | 20MB/sec | SE/HVDiff | 8 | 50pin |
| Ultra Wide SCSI | 20MHz | 16bit | 40MB/sec | SE/HVDiff | 16 | 68pin | ||
| Ultra2 SCSI | 40MHz | 8bit | 40MB/sec | LVDiff | 8 | 50pin | ||
| Ultra2 Wide SCSI | 40MHz | 16bit | 80MB/sec | LVDiff | 16 | 68pin | ||
| Ultra160 | 40MHz DDR | 16bit | 160MB/sec | LVDiff | 16 | 68pin | ||
| Ultra320 | 80MHz DDR | 16bit | 320MB/sec | LVDiff | 16 | 68pin | ||
構造は8bitのパラレルバスで、実は伝送方式はSingle EndedとDifferentialの両方がサポートされている。
信号電圧そのものは5Vであり、Differentialの場合は電位差が最低1Vとなっている。おもしろいのはSingle EndedとDifferentialでピンの物理形状はまったく同じであり、信号の割り当て方のみが異なる格好だ。
なにしろ1980年代の規格なので、クロック信号に同期するわけではなく、基本はREQ(Request)/ACK(Acknowledge)の信号を利用してのハンドシェイクに同期する形でDB0~DB7までの信号(+パリティのDBP)を送受信する格好である。SCSIもSASIを元にしただけのことはあり、1本のSCSI BUSに複数デバイスが接続できるあたりはSASIにそっくりである。
ただSASIは「規格上」8台まで接続可能だったが、SCSIは本当に8台の接続が可能である。この際にそれぞれのデバイスの区分けをするのがLUN(Logical Unit Number)で、通常SCSIコントローラーが0、ドライブ類が1~7を使う格好になる。この設定のためにDIPスイッチやロータリースイッチがSCSIコネクターのそばに用意されるのが通例だった。
筆者宅に転がっていたSCSIのドライブケース。"4"となってる部分がロータリースイッチで、ここから3本のジャンパー線が伸びてSCSI機器に接続する格好になっていた。ちなみにHDDやMOドライブなどはコネクターのそばにスペースが足りないので、別の場所にジャンパーピンなどが設けられた
なおSCSIの仕様(2つ上の画像)では見事に省略されているが、SCSIバスのケーブルは通常ディジーチェーン式に伸ばすことが可能であり、一番最後にターミネーターを接続する必要がある。これは別にデバイスではないので、LUNは振られない。あくまでも電気的な問題で、信号が終端で反射して戻らないように減衰させるためのものである。
コネクターはSCSI-1の場合、Non-Shield SCSI Device Connectorとして50ピンのフラットタイプが定義されたが、外部接続用のコネクター類は実は未定義のままである。記事冒頭の画像に示す左側はHigh-density SCSI Connector、右はLow-density SCSI Connectorであるが、これが定義されたのは次のSCSI-2からである。だからこそ、連載771回の冒頭で触れたがMacintosh PlusではSingle Endedに絞った形で25ピンのD-Subで外部SCSI用コネクターを出すなんていうことが可能だったとも言える。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ















