VRAMを8GBに増量したRadeon RX 6500 XTが登場
ライトゲームをフルHD解像度、低~中画質で遊べれば十分という層に向けたエントリーGPUとして、2022年早々に投入されたAMD RDNA 2世代の「Radeon RX 6500 XT」。4GBのVRAM容量に、64bitのメモリーバス幅、PCI Express4.0×4接続のインターフェース、ハードウェアエンコード機能の非搭載、さらに映像出力はDisplayPortとHDMIの2系統出力のみと、かなり絞ったスペックになっているが、そのぶん価格は2万円前後とかなり安価。
そんなRadeon RX 6500 XTのVRAM容量を8GBに増やしたモデルが、日本でも近日登場予定となっている。今回はPowerColor「AXRX 6500 XT 8GBD6-DH/OC」を、テストする機会を得られたので、改めてそのパフォーマンスを確かめてみることにした。
結論から言うと、8GB版の買いと言える価格はかなり微妙なラインになりそうだ。一部メーカーのRadeon RX 6500 XT 4GB搭載ビデオカードは、特価で1万円台後半~2万円台前半が出ている。2万円台後半となるとRadeon RX 6600 8GBが買えてしまう。
記事執筆時において価格は未定だが、価格次第ではローエンドGPU搭載ビデオカードの選択肢のひとつにはなりそうだ。しかしビデオメモリーを増量しただけなので、ビデオメモリーを消費するゲームや作業をするかしないかが、選択の分かれ目となるだろう。
なお、Radeon RX 6500 XT 8GBの基本的なスペックは4GB版とまったく同じになるが、4GB版では6ピン×1だった補助電源が、8GB版のAXRX 6500 XT 8GBD6-DH/OCでは8ピン×1になっている。現状、公称資料が届いていないのだが、PowerColorのサイトでも8GB版の推奨電源ユニット容量は、4GB版から50W増した450Wになっていたので、消費電力は増しているようだ。
パフォーマンスを改めてチェックしてみた
8GB版の概要を理解したあとは、テストPCにAXRX 6500 XT 8GBD6-DH/OCを搭載して、その実力をみていこう。
ミドルレンジ帯CPUのRyzen 5 7600や、DDR5-6000駆動の32GBメモリー、AMD B650チップセット採用マザーボードなどを使った自作PCを使用し、比較用ビデオカードには、ワンランク上になるミドルローに位置しているNVIDIA GeForce RTX 3050 8GB搭載ビデオカードを選んでいる。
なお、GeForce RTX 3050には、VRAM容量に加えCUDAコア数など全体的にスペックダウンされた6GB版が、2024年2月にひっそりとデビューしている。最安モデルは3万円台を切っているなど、同クラスでの比較という面では、GeForce RTX 3050 6GBのほうが適しているのだが、今回は手元にあったGeForce RTX 3050 8GBを使用している。
| Radeon RX 6500 XTのスペック | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 製造プロセス | 6nm RDNA2 | |||||
| Compute Unit数 | 16基 | |||||
| ストリーミングプロセッサー数 | 1024基 | |||||
| Ray Accelerator数 | 16基 | |||||
| ゲームクロック | 最大2685MHz | |||||
| ブーストクロック | 最大2825MHz | |||||
| テクスチャーユニット数 | 64基 | |||||
| ROP数 | 32基 | |||||
| Infinity Cache | 16MB | |||||
| メモリーデータレート | 18Gbps | |||||
| 搭載メモリー | GDDR6 4GB/8GB | |||||
| メモリーバス幅 | 64bit | |||||
| Board Power | 120W(4GB版)/不明(8GB版) | |||||
| PCIeインターフェース | PCIe4.0×4.0 | |||||
| 補助電源 | 6ピン(4GB版)/8ピン(8GB版) | |||||
ファクトリーOCモデルのAXRX 6500 XT 8GBD6-DH/OC。ブーストクロックは2825MHzに設定されている。ドライバーは「AMD Software:Adrenalin Edition 24.4.1」を使用した
| テスト環境 | |
|---|---|
| CPU | AMD「Ryzen 5 7600」 (6コア/12スレッド、最高5.1GHz) |
| CPUクーラー | CORSAIR「Hydro XC7 RGB PRO ウォーターブロック」 (本格水冷、360mmサイズラジエーターなど) |
| マザーボード | MSI「MPG B650I EDGE WIFI」 (AMD B650チップセット、Mini-ITX) |
| メモリー | CORSAIR「VENGEANCE DDR5 」 (DDR5-6000、16GB×2) |
| ビデオカード | PowerColor「AXRX 6500 XT 8GBD6-DH/OC」 (Radeon RX 6500 XT、8GB GDDR6)Palit「GeForce RTX 3050 StormX OC」 (GeForce RTX 3050、8GB GDDR6) |
| ストレージ | Samsung「980 PRO 2TB」 (2TB M.2 SSD、PCIe4.0 NVMe) |
| 電源ユニット | FSP「Hydro PTM PRO ATX3.0(PCIe5.0) 1000W」 (80PLUS PLATINUM、1000W) |
| OS | Microsoft「Windows 11 Home 64bit」(23H2) |
動画エンコードは苦手
ゲーミングパフォーマンスの前に、Radeon RX 6500 XT 4GB版はハードウェアエンコード機能が一切搭載されていないのだが、これは8GB版も同じになっている。最新Ryzen APUのRyzen 8000Gシリーズにも、AV1対応のハードウェアエンコーダ(AMD VCE)機能を搭載しているなか、これはかなり用途を限定してしまう。
まずは、Adobe Premiere Proを用いて動画を編集する「UL Procyon Video Editing Benchmark」を実行して、変換に要する時間を確認してみると、ハードウェアエンコード機能の有無による差は歴然だった。動画再生に関しては、ハードウエアデコードに対応しているので、問題ないがエンコードを行なうなら、Radeon RX 6500 XTは選択肢に含めてはいけないだろう。

この連載の記事
-
第473回
デジタル
Ryzen 7 9800X3Dと9700Xはどっちが良いの?! WQHDゲーミングに最適なRadeon RX 9060 XT搭載PCの最強CPUはこれだ! -
第472回
sponsored
触ってわかった! Radeon RX 9070 XT最新ドライバーでFPSゲームが爆速&高画質に進化、ストレスフリーな快適体験へ -
第471回
デジタル
8TBの大容量に爆速性能! Samsung「9100 PRO 8TB」で圧倒的なデータ処理能力を体感 -
第470回
デジタル
HEDTの王者Ryzen Threadripper 9980X/9970X、ついにゲーミング性能も大幅進化 -
第469回
デジタル
ワットパフォーマンスの大幅改善でHEDTの王者が完全体に、Zen 5世代CPU「Ryzen Threadripper 9000」シリーズをレビュー -
第467回
デジタル
Radeon RX 9060 XT 16GB、コスパの一点突破でRTX 5060 Tiに勝つ -
第466回
デジタル
Radeon RX 9060 XTは6.5万円でVRAM 16GBのお値打ちGPUになれたか? -
第465回
デジタル
遅れてやってきたPCIe5.0 SSDの大本命、リード14GB/秒超えのSamsung「9100 PRO」を実機レビュー -
第464回
デジタル
Radeon RX 9070シリーズの仕上がりは想像以上だったことがゲームベンチでわかった -
第463回
デジタル
Ryzen 9 9950X3Dは順当進化。3D V-Cache搭載Ryzenの最強モデルだがクセありな部分はそのまま -
第462回
デジタル
RTX 5070の足を止めた「Radeon RX 9070 XT/ 9070」レビュー - この連載の一覧へ














