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荻窪圭の“這いつくばって猫に近づけ” 第868回

14年前のコンパクトデジカメ、10倍ズームのキヤノン「IXY 50S」を引っ張り出してキジトラ三昧

2024年05月15日 12時00分更新

文● 荻窪 圭/猫写真家 編集●ASCII

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人懐こい、ちゃお。至近距離でカメラ目線してくれるところがなんとも優秀だ。2024年5月 キヤノン IXY 50S

 最近、小さなカメラが欲しい……、でも猫を撮るにはズームレンズが欲しいと思ってる荻窪圭です。いろんなとこでそんなことを言ってるので、まあ家にあるコンパクトデジカメで遊ぶか、どれにしようかと思いながらNHKの大河ドラマ「光る君へ」を見てたら(けっこう気に入ってます)、ふと思い出したのである。主役の「まひろ」(紫式部)を演じてる吉高由里子って、昔、IXYのイメージキャラクターやってなかったっけ。

 探してみたら、2011年2月のキヤノンの新製品発表会で登壇した吉高由里子の写真が現れたのである。「IXY持っていくしー!」だ。気恥ずかしいコピーだったけど、彼女がそう言うと不思議な魅力があったのである。いやまあぶっちゃけ、今回、IXYを引っ張り出したのはそんな理由です。すみません。

 そのとき発表された「IXY 31S」は残念ながら手元になかったので、その半年前に出た「IXY 50S」の復活と相成ったのだ。これ、10倍ズームレンズを持ってるのでちょうどいい。

コンパクトなボディに10倍ズームレンズが(当時としては)なかなかすごかったIXY 50S。これぞ全盛期のコンパクトデジカメって感じだ。

 何がいいって、ポケットに入るので、いつでもすぐ取り出して撮れる。軽い。

 なので、身軽に自転車で出動だ。つらつらと走っていると、とあるおうちの玄関前に猫を発見。それも3匹が固まってたのだ。残念だったのは、その日は暑くて、猫たちが日陰にいること。日陰は色がきれいに出にくいからね。その辺はちょっとレタッチしてあります。ともあれ、望遠で3匹まとめて1枚。

3匹固まってくつろいでたキジトラたち。この日は、やたらキジトラと出会うことになるのだった。2024年5月 キヤノン IXY 50S

 民家の庭をじっと見てるのも不審者すぎるので(昔、撮ってもいいよと許可はもらってるおうちなのだけど)、さらに足を伸ばして散歩。

 きょろきょろしながらのんびりと走っていると、お寺の境内で何やら歩いてるヤツがいる。あとを追ってみると、車の日陰でくつろいでた。まあ、冬の猫は日なたで丸くなり、夏の猫は日陰で伸びてるもんだからしょうがあるまい。いまどき珍しく耳がカットされてない。

お寺のキジトラ。けっこうお年を召しているようだった。2024年5月 キヤノン IXY 50S

 人慣れしてそうなので指を差し出してみると、ちょっとだけすりすりしてくれた。

指を差し出したらすりすりしてくれたので、すかさず撮影。2024年5月 キヤノン IXY 50S

 コンパクトデジカメのいいところは、片手でズーミングから撮影までできること。この自由さがいい。デジタル一眼に比べると猫が怖がらないのもメリットかな。デジタル一眼のレンズを向けると嫌がる猫ってけっこういるのだ。

 さらに足を伸ばすと、今日初の日なた猫発見。自転車の脇で日差しを浴びてた。スタンドがじゃまだけど、しょうがない。

日なたで自転車の脇でくつろいでたキジシロ。その名は三太郎。ほかの猫たちから信頼されてるボスだそうです。2024年5月 キヤノン IXY 50S

 この場所が、今日のクライマックス。ほぼ這いつくばりつつ猫を撮っていると、すぐ横のアパートの掃き出し窓がガラガラと……今の窓はガラガラなんていわないけど、大きく開いて中からおばさまが出てきたのである。まあ、普通に考えて不審者なので、顔を上げてにこやかに挨拶すると「猫好きなの?」という。もちろんイエス。

 この方、どうやらこのあたりの猫たちを世話してるひとりだそうで、アパートの1階に住んでおり、軒下に猫がくつろげる場所を作ったり餌をあげたりしてるそうな。

 「このあたりには11匹猫がいるんですよ」と言う。そんなにいるのか! そして、ちょっと離れた大きな庭を持つ大きな家を指差し、「あそこの家の方が猫を捕獲して全部去勢してくれたの」と言う。どの幹線道路からも離れた、数十年前は農地だったような古い土地には、時折、当たり前のように猫がいるのだ。

 「あそこにいるのが三太郎。人は苦手だけど猫たちのボスなの」とうれしそうに言う。なぜ三太郎なのかは聞き忘れた。自転車脇でくつろいでたキジシロだ。

 「その向かいにいるのが、ガッツ」。でも、ここからはよく見えず、おばさまが猫話に夢中なので撮りに行けない。あとになって撮ったのだけど、ほんとにこれがガッツかどうかは、ちょっと自信ない。なにしろキジトラ系ばかりなのだ。

車の脇でちょこんと座ってたガッツ(たぶん)。望遠が効くのでアップで撮れた。2024年5月 キヤノン IXY 50S

 「あそこにいるのがチャ太郎」。おお、と思ったら私の後ろを駆け抜けていった。こちらは撮れず。

 さらに、「一番人気なのが、ちゃお。この子だけ人懐こくて、人に寄ってくるから人気なの」と言う。そのちゃおは、ちょうど足元にいる。おとなしく撫でさせてくれる。ぷくぷくとしてて、毛触りもいい。いつもブラッシングしてもらってるそうな。

人懐こくて人気者のちゃお。でも、靴で爪を研ぐ癖があるので注意。2024年5月 キヤノン IXY 50S

 ちなみに、左手で撫でつつ右手で撮影。画面はまったく見ないで勘で撮っております。

 「ちゃおは、人の靴で爪を研ぐから注意してね」と言われる。そういえば、以前、研がれたことあるわ。そして、「自転車はアパート脇のあそこに止めちゃっていいわよ。このあたり、よく写真家の方も猫を撮りに来るの」だそうである。知る人ぞ知るスポットだったのか。

 冒頭写真もちゃお。地面すれすれにカメラを構えて……実は昔のコンパクトデジカメの液晶モニタは、今と比べると非常に小さくて見づらくて、斜めから見ると何が映ってるかよくわからない。なので、冒頭写真も勘で撮っております。それでも、ちゃんとカメラ目線をくれるちゃおは偉い。

 にしても、こうして猫の世話をしてる人と話ができるのはありがたいですな。街の猫を撮る人にとって、世間話をするって大事なのだ。いろんな話を聞かせてくれる。11匹いると言われても、みんなが顔を出してくれるわけではなく、おうちの中にいる猫もいるらしいし、おばさまも家に引っ込んでしまわれたので、私も帰ることにする。

 横にちょっとした公園があるので、そこで休憩してから帰ろうと思うと、石の上にも猫。

ほぼ「猫はどこにいるか探せ」状態ですが、石の上にちょこんと座っております。いい場所を見つけたもんだ。でも、道路から丸見え。2024年5月 キヤノン IXY 50S

 きっと11匹のうちの1匹だ。名前はわからないけど。

顔がわかるようにちょいとズーミング。みごとなキジシロだ。2024年5月 キヤノン IXY 50S

 このキジシロは、「え、ここにいるのがバレた?」って顔をし、そそくさとどこかへ行ってしまった。くつろいでるところをじゃましてすまんかった。でもそこ、道路から丸見えだったのだよ。

 かくして、今日の猫散歩は終わり。今日持ち歩いたIXY 50Sは14年前のカメラだったけど、こういうカメラはスマホとは違う魅力があっていいよなあと、いまさら見直したりするのだった。

 手元に古いコンパクトデジカメを持ってる人がいたら、たまには充電して懐かしみながら使ってみてあげましょう。

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筆者紹介─荻窪 圭

 
著者近影 荻窪圭

老舗のデジタル系フリーライター兼猫カメラマン。今はカメラやスマホ関連が中心で毎月何かしらのデジカメをレビューするかたわら、趣味が高じて自転車の記事や古地図を使った街歩きのガイド、歴史散歩本の執筆も手がける。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『古地図と地形図で楽しむ東京の神社』(光文社 知恵の森文庫)、『東京「多叉路」散歩』(淡交社)、『古地図と地形図で発見! 鎌倉街道伝承を歩く』(山川出版社)など多数。Instagramのアカウントは ogikubokeiで、主にiPhoneで撮った猫写真を上げている。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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