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監視カメラ、入退室管理、訪問者受付、室内環境監視など、デバイス+AI+クラウドでソリューション展開

複合型物理セキュリティソリューションのVerkada、新製品や機能強化を発表

2024年03月22日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 クラウド型の法人向け物理セキュリティソリューションを提供する米Verkada(ヴェルカダ)が、2024年3月19日、天井取り付け型カメラの新製品と、プラットフォーム全体にわたる機能強化を発表した。

 同日の記者発表会には、Verkada 本社CEOで共同創業者のフィリップ・カリザン(Filip Kaliszan)氏、Verkada Japanカントリーマネージャーの山移雄悟氏らが出席し、新製品と機能強化の概要のほか、Verkadaソリューションの特徴、日本市場における現況や今後の展開について説明した。

Verkada(ヴェルカダ)のソリューション概要。IPカメラだけでなく空気質センサー、インターホンなどのデバイスもラインアップしており、クラウドプラットフォームを用いたデータ収集とAI分析を通じて、幅広いユースケースに対応する

Verkada CEOで共同創業者のフィリップ・カリザン(Filip Kaliszan)氏、Verkada Japanカントリーマネージャーの山移雄悟(やまうつり ゆうご)氏

デバイス+AI+クラウドで「場所や人のセキュリティを守る」

 Verkadaは、2016年に米国で設立されたクラウド型の物理セキュリティソリューションベンダーだ。現在、グローバルで2万2000を超える企業/政府自治体顧客を有しており、うち「Fortune 500」企業も64社が同社ソリューションを採用している。およそ1年前の2023年4月には、アジア太平洋地域へのビジネス拡大を目的として東京オフィスも開設している。

 CEOのカリザン氏は、Verkadaソリューションの特徴について「カメラだけでなく、空気質監視、インターホン、訪問者管理といった機能も密連携させ、さらにはAI技術も駆使することで、場所や人のセキュリティを守ること」だと説明する。そのうえで、東京オフィスに設置された複数のデバイスを使ったライブデモを披露した。

 たとえば、ある場所のカメラ映像から人が映っているシーンをすべて自動抽出するだけでなく、どう移動したのか(部屋に入った/出たなど)という動線も分析して示すことができる。また複数の映像から、特定の人物や車両が映っているシーンだけを抽出してリスト表示するような処理も、数クリックで実現する。

 室内用の空気質センサーデバイスは、温度や湿度、二酸化炭素、一酸化炭素、PM 2.5の濃度、騒音など、14種類の空気質/環境情報を監視できる。煙/蒸気のセンシングも可能で、たとえばトイレなど禁止場所での喫煙(電子タバコを含む)をカメラなしでも検出できるため、実際に学校や病院などで導入されているという。

Verkadaのライブデモより。ある場所を人がどのように通過(移動)したかを示したり(左)、複数カメラ映像から特定の人物が映る映像だけを抽出したり(右)といった処理が簡単にできる

空気質センサーのデータ画面。右のカメラ映像と組み合わせることで、室内に人が増えたために室温が上がったことがわかる

 ビルセキュリティを守るためのアラートの設定も簡単にできるようになっている。映像上で指定した範囲に人や車両が入り込み一定時間とどまったり、あるラインを横断したりした場合に、アラートを発することができる。それだけでなく、人/車両が徘徊している、混雑が見られる場合や、あらかじめ指定した特定の人物や車両(ナンバープレート)が施設に侵入した場合なども検出が可能だ。こうした注意すべきイベントをトリガーとして、アラートを送信するだけでなくワークフローを実行する機能も備える。

人や車両の検出だけでなく、特定エリアへの立ち入り、要注意人物/車両の侵入、徘徊、喫煙、騒音なども検出してアラートを送信できる

今回の機能強化では、要注意人物の検出処理の高速化、徘徊やライン横断(禁止区域立ち入り)のアラート発報追加などが行われた

 プライバシーへの配慮としては、カメラ映像のライブ再生時にAIが自動で顔にぼかしを入れたり、オフィス内映像の特定の領域(ディスプレイ表示など)を隠したり、といった処理ができるようになっている。バックエンドのクラウドプラットフォームにはAWSを利用しており、現在は米国と欧州のリージョンを使用しているが、将来的にはアジアにも展開する予定だと述べた。

 Verkadaのソリューションは、クラウドを通じてWebブラウザ(PC、モバイルデバイス)で管理や監視を行う一方で、映像やデータそのものはエッジデバイスに保存し(カメラの場合、クラウド側には映像そのものではなく最小限のサムネイル画像が送られる)、AI処理の多くもデバイス側で行う仕組みをとっているという。そのため、映像ストリームをすべてクラウドに転送する他社のカメラソリューションと比べて、より狭帯域のネットワーク環境(最小で20~50Kbps)でも設置が可能だと述べた。

 さらにカリザン氏は、デバイス側でAI処理を行う仕組みによって、保持すべき映像を判断してストレージ効率を高めたり、プライバシーに配慮したかたちでの映像配信ができると説明した。

ほかにも今回の機能強化では、車両の混雑傾向分析、入退室カードの不正利用検出なども可能になった

 なお今回は、コンパクトな300万画素のドーム型カメラ「CM22」がラインアップに追加されている。モーション検知機能、動線分析機能を内蔵したエントリーモデルで、暗所撮影のための赤外線イルミネーターは10メートルの射程を持つ。

日本市場は“人手不足”がカギ、「物理セキュリティのモダナイズ」浸透へ

 カントリーマネージャーの山移氏は、物理セキュリティの市場は非常に大きい一方で、IT化が遅れてきた市場でもあり、そこに新しいメソッドを持ち込んでモダナイズを進めるのがVerkadaだと説明する。

 Verkada Japanでは、東京オフィス開設からのこの1年間、顧客とのタッチポイントを増やす取り組みに注力してきたという。その結果、1年前は「ゼロ」だったパートナーは、現在60社を超え、70社近くまで増えていると語る。

 「特に日本はエスタブリッシュメントの(既存の)メーカーも多く、非常にチャレンジングなマーケットだと考えている。ただし、Verkadaにとって追い風になっているのは、物理セキュリティの世界が『ITに寄ってきている』こと。たとえば人手不足の状況下では、社外からでもカメラ映像が見られたり、アラートを自動発報したりする機能が求められる。われわれのようにシンプルで、どこからでも管理ができる、クラウドやAIのメリットを使った新しいアプローチは非常に評価されやすい。実際に、お客様からもとてもポジティブなフィードバックをいただけている」(山移氏)

 この山移氏のコメントにもあるとおり、日本市場では特に「人手不足(労働力不足)」の課題をどう解消できるのか、という点に対する注目度が高いという。Verkada Japanとしては、教育現場、製造現場、小売、ヘルスケアという4つの領域をターゲットとして、それぞれ具体的なメッセージを届けるよう考えているという。

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