命名、cotomi
NEC独自の大規模言語モデルの名称が「cotomi(コトミ)」となった。
cotomiの名称には、ことばによって、未来を示し、「こと」が「みのる」ように、という想いを込めたという。
NEC 執行役 Corporate EVP兼CDOの吉崎敏文氏 「2023年7月に独自のLLMを発表した時点では、開発に必死に取り組んでおり、まだ名前がついていなかった。そこで、研究者や開発者、マーケティング、セールス、技術営業など100人以上が参加して、50以上の候補のなかから生成AIの名前を選んだ」とし、「cotomiは、縁起がいい名前である。今後、映像や画像などのマルチモーダル化しても、NECの生成AIのシリーズの名称として継続していくことになる」と位置づけた。
ちなみに、NECの生成AIに対しても、名前の候補について聞き、その結果も名称決定に反映したという。
日本独自の大規模言語モデル(LLM)を開発したNEC
NECのcotomiは、130億パラメーターという軽量化を実現した独自の日本語大規模言語モデル(LLM)を中心に展開していくことになる。
NECがいち早く、高い日本語性能を持つ軽量なLLMを開発できた理由について、NECの森田隆之社長兼CEOは、「100億円の投資を即決したことがプラスに働いた」と振り返る。
森田社長兼CEOは次のように語る。
「ある日、研究所から、今後、研究開発を加速させるためにはHPCが必要であると言われた。いまのままでは答えを出すのに、何10時間も、何100時間もかかってしまうが、HPCに100億円投資してくれれば、答えが数分で出るようになると言われた。これは、研究者の切なる声であり、これを聞いて、100億円の投資を即断した。結果として、生成AIをいち早く開発することにつながった」とする。
このHPCは、社内では「AIスーパーコンピュータ」と呼ばれ、2021年4月から構築を開始し、2023年3月に全面稼働した。GPUは928基、演算能力は580PFLOPSという国内最大級の規模と性能を誇り、NECの各種AI研究を下支えることになる。
森田社長兼CEOが、100億円の投資を即決したのには2つの理由がある。
ひとつは、森田社長兼CEO自らが、「NECはテクノロジーの会社であり、R&Dを強みにしていく」と宣言していたことだ。
「R&Dを強みにしていくことを決めたからには、研究者に負担がかかる環境にはしておけない。だから投資を決めた」と語る。
もうひとつは、森田社長兼CEOの強い意思で、研究開発費の拡大に取り組んでいたことだ。
2020年度における研究開発費の売上収益比率は3.8%であったが、これを2021年度には4.2%に引き上げている。金額に換算すると、年間120億円ほど増加しており、まさに、HPCの投資額にあたる規模だ。この枠があったからこそ、HPCへの投資を即決できたといえる。
森田社長兼CEOは、「長期的には、研究開発費として5%を使ってもいいような会社にしたい」と語る。
AIスーパーコンピュータは、今後も、さらに拡張する計画があることが明らかにされているが、その点では、追加投資のベースも万全に用意されているといえそうだ。
森田社長兼CEOは、「私が、軽量な生成AIが完成できそうだという話を聞いたのが2023年初めのことである。使えるものができたら一気に発表しようということで、2023年7月に正式発表した」とし、「NECの生成AIの最大の強みは、すでに使えるAIを提供している点である。また、日本語を中心に学習しており、高い安全性を持ち、コンパクトであるため、オンプレミスでも利用でき、業種別や企業別、組織別、さらにはパーソナライズした部分での利用においても、大きな勝機を持つ技術だといえる。いまの主流になっているパブリッククラウドをベースにしたGAFAMなどの生成AIとは違う生成AIであり、経済安全保障の観点からも重要な技術になる」とした。
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