ファーウェイが中国製チップを用いた5Gスマートフォンを発表するかもしれない。2年以上もの間、米国の厳しい制裁を受けてきた同社だが、その間も自社の半導体設計技術を強化し、中国の半導体企業SMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)と5Gチップセットを生産するという憶測が出ている。
中国国内での半導体調達により米国の制裁を回避して
5Gスマートフォンのリリースにこぎ着けるか
ファーウェイが独自のEDA(Electronic Design Automation)ツールを開発し、SMICが生産する半導体を搭載した5Gスマートフォンを開発中とロイター報じた(https://www.reuters.com/technology/chinas-huawei-poised-overcome-us-ban-with-return-5g-phones-research-firms-2023-07-12/)。米国の技術に頼ることなく、中国内で5G対応のチップセットを設計・生産できるということになる。この半導体を使ったHUAWEI Pシリーズのような主力モデルの5G版を2023年内にも発表し、2024年に発売開始するという予想だ。
この報道は、3社の技術リサーチ会社の情報をもとにしたもの。ファーウェイとSMICはコメントしていない。
その報道によると、その5Gチップはファーウェイが開発したEDAとSMICのN+1製造プロセスを用いるが、この場合は50%以下の歩留まりとなり、出荷できるのは200~400万個に限定される予想だという。別の推測として、生産キャパは1000万個だが詳細はわからないという内容も紹介している。中国の政府系メディアである証券・金融情報誌China Securities Journalが7月に出した情報として、ファーウェイが2023年のスマホの出荷台数の目標を、年初の3000万台から4000万台に上方修正したことも紹介している。
ファーウェイが半導体子会社HiSiliconへの出資を通じて、自社内で調達できる能力を高めていることは以前から報じられていた。なお、ソフトウェア側ではGoogle/Androidが使えないことには変わりない。
米国による制裁で5G対応のチップセットが入手不可に
最も打撃を受けたのがデバイス事業
読者もよくご存知のように、ファーウェイのスマートフォン事業は2020年、米政府の制裁を受けて5Gチップの供給が絶たれた。製造装置などで米国製技術を使用している半導体の供給を禁止するというもので、MediaTek、クアルコム、サムスンをはじめ、ファーウェイが設計した半導体を生産するTSMCにも影響が及んだ。
当時ファーウェイのスマートフォン事業は絶好調で、2020年第2四半期にはサムスンを抑えて世界トップに立ったところだった。
しかし制裁により、5Gチップについてはすでにある在庫に頼るしかなくなり、規制の対象となっていない4G対応モデルでしのいできた。半導体に加え、Google Mobile Services(GMS)も使えなくなり、Huawei Mobile Services(HMS)を用意、OSについてもHarmonyOSを開発した。
たとえば、3月に発表した折りたたみスマホの「HUAWEI Mate X3」は4Gまでの対応で、HarmonyOSとHMSを採用している。

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