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生産、流通、医療などの現場課題に取り組む、日本代表の藤井一弘氏が事業戦略を説明

TeamViewer、「現場作業のデジタル化」をリモートアクセス技術で支援

2023年07月24日 07時00分更新

文● 丸山篤 編集●大塚/TECH.ASCII.jp

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 リモートアクセスソリューションを提供するTeamViewerジャパンは2023年7月20日、日本市場における今後の事業戦略とグローバルでの最新事例を紹介する説明会を開催した。

 ドイツに本社を持つTeamViewerは、グローバルで1400名強の社員数を抱える。幅広いデバイスに対応する同社リモートアクセスソリューションのインストール台数はおよそ29億台、利用者数は62万5000人を超える。2022年度のグローバルの売上は約5億6600万ユーロ(約900億円)で、前年度比13%の売上成長を記録。特に日本市場は本社からの期待も高く、グローバル以上の成長を期待されているという。

TeamViewerのソリューションポートフォリオ

生産、流通、医療といった「現場の作業」もデジタル化していく

 昨年末に日本代表としてマネージング・ディレクターに就任した藤井一弘氏は、今後のTeamViewerジャパンの戦略として「PCやタブレット以外のリモート接続に注力する」と語った。その理由について藤井氏は、ホワイトカラー以外の生産性向上、デジタル化の推進も必要だからだと説明する。

 「ホワイトカラーの生産性向上は、いろいろなITツールを使うことでこの十数年、かなり成果が出てきている。だが、生産、流通、医療等の現場で働いている人たちの働き方は、デジタル化ができているとは言えない。弊社はそこに着目している」(藤井氏)

TeamViewerジャパン マネージング・ディレクターの藤井一弘氏

 藤井氏が語る「PCやタブレット以外の接続先」には、産業機器やロボット、自動販売機なども含まれるという。こうしたものにまでリモートアクセスできる点が、TeamViewerの強みだと藤井氏は説明する。

 実際にNECネッツエスアイでは、自律走行型ロボットにTeamViewerのソリューションでリモート接続を行い、ロボットに格納されている行動範囲のマップや利用履歴、トラブル発生時のログファイルなどを確認したり、遠隔操作を行ったりしているという。

NECネッツアイにおけるロボットの遠隔サポートの事例

保守・保全と倉庫・物流現場領域に注力

 藤井氏は日本での注力領域として「保守・保全業務」と「倉庫・物流現場」の2つを挙げた。理由としては今後発生する労働力不足の課題、いわゆる「2024年問題」をリモートアクセスソリューションによって解決する狙いがある。

 「保守・保全業務は、製造業における生産設備だけではなく、産業機器、ロボット、あるいはコーヒーメーカーなどにまで及ぶ。こうしたデバイスは地方や無人の場所にも設置されており、現在は保守要員がそこまで出向いて修理や点検を行っている。これを、リモートでつないで状況を見る、あるいは修理できるようにするというニーズは、実は非常に大きい。このニーズを徹底的に掘り返していきたい」(藤井氏)

 さらに、実際に現場で行う保守業務向けにも、スマートグラスをかけた現場作業員のカメラ映像を見ながらリモートから指示を行ったり、タブレットのカメラ映像に操作指示を重ねて表示(MR:Mixed Reality)したりと、技術レベルの低い作業員であっても問題なく検査や修理ができるようサポートするソリューションを展開していくという。

エスプレッソマシンの保守の際、MR技術を使って清掃手順を表示する例

 倉庫・物流現場でも、スマートグラス、タブレットを活用していくという。

 「倉庫の現場では、入荷したらそれを記録したうえで棚に展開し、次に出荷の手続きをしなければならない。その間に人がやる作業は膨大な数があり、人がいなくなる(人手不足)ことで、今度はトラックドライバーの作業が増えたりもする。こうしたことをスマートグラスやタブレットを使って効率化し、きちんと入荷できたかどうかを後で確認できるようなトレーサビリティ機能を持たせ、すべてのサプライチェーンと連携させていくことは、多くのロジスティクスを持つ顧客にとって大きなバリューになる」(藤井氏)

 こうした領域への注力に加えて、TeamViewerジャパンとしてさらに2つの施策を実施すると述べた。1つは「パートナーエコシステムの強化」、もう1つは「社内のセールスチームの強化」だ。

パートナーエコシステムと社内セールスチームの強化を図る

 たとえば、IoT領域に強いパートナーと連携することによって、保守・保全や倉庫・物流現場に対するソリューションを提供していくことが可能になる。パートナーはより顧客に近い立場で、顧客課題についても深く理解しており、そうしたパートナーとの連携で新たな領域のビジネス開拓を模索していくとした。

 社内セールスチームの強化においても、コンサルティング的な能力を持ったセールスチームを育成することで、顧客課題に即したソリューション提供を目指していく。

 「現場ソリューションの提供についても、実は『メガネ(スマートグラス)をかけるとちょっと老眼で見にくい』とか『バッテリーが熱を持つ』とか『現場にはノイズやホコリが多い』とか、お客様はわれわれが気づかないような悩みをたくさん持っている。そうしたものをきちんと把握して、優先順位を付けて提供していく。このサイクルを回していくような事業を、今後、確立していきたい」(藤井氏)

日本における事業戦略

 さらに、今後はエンタープライズへの販売強化も図っていく。藤井氏は、TeamViewerは中堅規模の顧客に長く愛され、それが事業のベースになっているが、「これをてこに大手企業へのビジネスを拡大してきたい」と述べた。

 「ビジネスの一件当たりの単価を大きくしていくだけではなく、お客様の本当の利用戦略であったり、お客様のペインに刺さるようなソリューションを提供することが、われわれにとっての課題だと思っている。グローバルでは新しいユースケースがどんどん出てきているが、それを追い越すくらいの勢いで、日本でもお客様との付き合いを進めていきたい」(藤井氏)

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