実証実験を通じた連携が次のステップに
今回の深谷自動運転実装コンソーシアムには、深谷市と埼玉工業大学以外に、6社が参加する。これらの企業は、埼玉工業大学が行ってきた実証実験を通じて連携を深めてきた企業ばかりだ。
深谷市は全体の進捗管理や成果測定を担当し、埼玉工業大学は自動運転車両の提供や技術支援を行う。また、損害保険ジャパンは自動運転リスクアセスメントなど、KDDIは自動運転車両と遠隔監視システムとの通信技術の提供を行うほか、A-Driveは自動運転社会実装コンサルティングや事業性の検証を行い、アイサンテクノロジーは高精度3D地図を提供し、ティアフォーは自動運転ソフトウェアであるAutowareに関する技術支援、深谷観光バスは自動運転車両の遠隔監視やテストドライバーの配置、緊急時の対応を行うことになる。
埼玉工業大学 自動運転技術開発センター長の渡部大志教授は、「深谷市は、広い道路があり、走行量が少ない場所もある。また、そこにはトラクターなどが走行しており、異なる種類の乗り物が混在して走行することにアレルギーがない。また、深谷市が自動運転の黎明期から積極的に協力してくれている点が大きい」としながら、「地産地消の自動運転技術の導入により、公共交通システムのリデザインに率先して取り組むことで、運転士不足や地域公共交通の事業性に対する課題を解消することを目指す。また、自動運転レベル4の解禁に向け、先進的な自動運転技術の導入を目指した取り組みも推進したい」と語る。
広島で開催されたG7サミットでは、自動運転がテーマのひとつとなり、交通量を大幅に改善し、事故発生を減らし、運転手の負担と環境負荷を軽減しながら、付加価値と雇用を創出して、成長と繁栄をもたらすことができることが、自動運転のメリットとして示された。
埼玉工業大学の渡部教授は、「観光資源をつなぐ交通ネットワークの構築や、先端技術を活用したまちづくりの推進により、地域産業の創出や地域振興を推進する。深谷市が直面する課題を解決していくことが、コンソーシアムが目指す目的になる」とし、「交通や社会全体に歴史的変革をもたらす自動運転に、早い段階から取り組むことで、深谷市を盛り上げたい」とする。
自動運転バスは、市民の利便性を生み出すメリットや、人材不足をはじめとした地域の課題解決につながることが期待されているが、それとともに、さらに注目を集めることになる深谷市の新たな観光資源のひとつになりそうだ。
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