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ケースディスカッション形式のCMCアカデミー初開催

エンプラ向けコミュニティの構築と運営をE-JAWSの事例で学ぶ

2023年04月19日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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エンプラ向けコミュニティのコミュマネは腕力が試される

 イベントの最後に登壇したのは、E-JAWSの会長であるフジテックCIOの友岡賢二氏。話のスコープは、Whoを「ベンダー側のコミュニティマネージャ」、Whatは「エンタープライズ企業向けのコミュニティ作り」、Howは「ネットワーキング構築、運営」に設定しているという。

フジテックCIO 友岡賢二氏

 武闘派CIOとして知られている友岡氏が参加するコミュニティは多岐に渡る。ベンダー系でいうと、ソラコムのE-SIM、Google Leaders Circle、Box、Asana、Slack、Automation Anywhereなどのほか、情シスOBによる長老系コミュニティ、学会系のコミュニティまで幅広い。完全非公開のコミュニティや参加のハードルが高いコミュニティもあり、営業も簡単には入れなそうだ。

 さて、今回のテーマであるE-JAWSでは、企業システムにおけるAWSの活用事例、グローバルでの先進事例の共有、AWSを利用する中での構築や運営課題、改善例の共有などが行なわれているという。また、クラウドを活用することで、ITとビジネス部門が協働できるかのディスカッション、分科会による個別テーマの研究も行なわれている。

 エンタープライズ企業が参加するコミュニティの特徴としては、まず企業として参加することで、入会には審査と承認が必要になる。また、原則非公開・SNS投稿厳禁というルールもある。これは不用意なメッセージや情報発信を防ぐいわゆる「広報の壁」に対応するものだという。

 JAWS-UGを長らく取材する身からすると、クローズドで外部にアウトプットされないE-JAWSの存在は当時から違和感があったが、改めて聞くとエンタープライズの分野では、やはり参加者の心理的安全性の確保が重要ということが理解できる。記事を書く立場からすると、若干つまらないところがあるが、コミュニティの中で有意義な議論が行なわれているため、存在意義があるということだろう。

 こうした背景があるため、E-JAWSのようなエンタープライズ向けコミュニティ運営は個人向けと大きく異なる。そもそもユーザー主導の運営は期待できず、自走しない。そのため、日程調整、案内や出欠確認、会場設営、当日のロジ、懇親会アレンジ、コスト負担もベンダー側で行なう必要があるという。また、同業他社との同居を避けるため、参加企業リストを配布しない方がよいケースも多数。あえて外にアウトプットせず、心理的安全性を確保する配慮が必要になる。まさに「えらそうな人ばかりで、実際えらい人ばかりなので、面倒くさい(笑)。コミュマネの腕力が試される」(友岡氏)というわけだ。

エンタープライズ向けのコミュニティ運営

ユーザー会とコミュニティの違いは?

 ここまで聞くと、いわゆるユーザー会とコミュニティの違いはどこにあるのか?という話になるが、そもそも伝統的ユーザー会は、「ベンダーが客をもてなす酒宴」というのが友岡氏の定義だ。両者は、ユーザーによるコミッティがあるかないかの違いのみで、どちらのケースでも業界で群れたがる特性は変わらないという。

 とはいえ、ユーザー会モデルはユーザーのフロントには営業が来るが、コミュニティモデルはコミュマネが来る。「僕も営業からメール来たら削除しますけど、コミュマネからメール来たらちゃんと読みます(笑)」。そんな友岡氏は、「カスタマー・オンボーディング・ジャーニー」の観点で、コミュマネと営業の役割を明確に分担。興味・関心、製品理解、他製品との比較、適用方針などはすべてコミュマネが担い、営業は投資対効果の算出、予算化、稟議決裁、発注などを担当することになるという。

カスタマー・オンボーディング・ジャーニーでのコミュマネと営業

 この結果、成功したコミュマネは、つねにユーザーのフロントとして相談を受ける立場になる。そして、「なんでみんな私に相談に来るの?営業に言ってよ!」という台詞を口にするようになるわけだ。

 さて、2時間近くに渡ったCMCアカデミーの最後はもちろん懇親会。ディスカッションで乾いた口を飲料で潤し、名刺交換とさらなる意見交換に花が咲いた。土砂降りの雨だったが、多くのメンバーはその後目黒の夜に消えていったのだった。

 われわれはE-JAWSがクラウド普及に向けてうまくワークしたことをすでに知っているが、やり方によっては失敗事例となった可能性だってありえたはず。そういった「たられば」を感度の高いメンバーの集まったグループで考えられたというのは、多くの参加者に貴重な体験だったと思う。

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