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有用性の高い情報をわかりやすく、誰でも分析しやすい形で共有する意義

国内のオープンデータを閲覧できるダッシュボード「神戸データラボ」公開

2023年02月27日 11時00分更新

文● 大河原克行 編集●大谷イビサ

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 神戸市は、人口分布や世帯分布、通勤通学人口の状況など、国内のさまざまなオープンデータが閲覧できるダッシュボード「神戸データラボ」を開発し、2023年2月24日から公開した。総務省統計局の令和2年(2020年)国勢調査の情報をもとに、約80種類のデータを公開し、誰でも無料で利用できるようにしている。

神戸市 デジタル監(最高デジタル責任者)の正木祐輔氏

証拠に基づく政策立案(EBPM)を推進する神戸市のデータ戦略

 神戸市では、EBPM (証拠に基づく政策立案)を推進するため、行政データの利活用を進めており、2022年6月には、神戸市の全職員がアクセスできるポータルサイト「神戸データラウンジ」を稼働。約90種類のオープンデータを閲覧できるダッシュボードを用意している。

 各基幹系システムから行政データを抽出および加工して、庁内データ連携基盤のなかに統計データとして蓄積。これをダッシュボードで可視化し、神戸データラウンジとして公開。神戸市職員はでデータを共有でき、データをもとにした政策立案などに活用している。

 神戸市 デジタル監(最高デジタル責任者)の正木祐輔氏は、「データが蓄積される庁内データ基盤はLGWANで構築しており、高いセキュリティを備えている。また、ダッシュボードでは元データに触れず、個人情報を見ることなく、統計情報だけを安全に閲覧できる仕組みになっている。共有ダッシュボードの内容については有識者会議で意見を聞きながら慎重に対応。個人情報保護にも対応している」と説明する。

 これまでは政策議論を行なう際に、データの入手や整備、分析、資料作成に約9割の時間を割いており、議論そのものに割く時間が少なかった。しかし、神戸データラウンジを利用することで資料作成までの時間を大幅に短縮でき、政策議論に割ける時間を7割程度にまで拡張できると見ている。

 正木氏は「市長などから欲しいデータの要望があると、それを現場がまとめて、さらに見せ方を工夫したり、データを追加するといったやりとりを経て提出していたが、いまでは、市長や局長と政策議論する際にも、神戸データラウンジの画面を見ながら、地域の状況を確認したり、追加で欲しいデータをその場で入手できるようになっている」と、政策議論の方法にも大きな変化が生まれていることを指摘する。

ダッシュボードにTableauを採用 公開されただけでは使われない

 今回公開した神戸データラボは、職員向けの神戸データラウンジをベースに、その一部を公開したものとなっている。神戸市のサイトのトップページからアクセスでき、令和2年国勢調査全国版をもとに、町丁目単位までわかる詳細版と、市町村単位でわかる簡易版、通勤通学地分析を提供している。

 ダッシュボードには、データ分析、可視化ソリューションであるTableauを利用しており、直感的な操作による分析が可能。また、イメージ(PNGファイル)やPowerPoint、PDFでのダウンロードができるほか、クロス集計したCSVデータでのダウンロードも可能になっている。

 Tableauを選定した理由として正木氏は、「さまざまなBIツールを検討したが、地図情報を活用しながらも、動きが速くて、スムーズに利用できるツールとしてTableauを選択した。データ連携基盤システムで活用しているAWSとの相性がよかったこと、オープンデータとして公開した際に市民などが閲覧しても従量課金が発生しないことも採用の理由になっている」とコメントした。

国勢調査の全国版を用いたダッシュボード

 また、「単にデータを揃えただけのサイトではなく、神戸市職員が実際に活用し、現場の意見をもとに改善を加えたものを提供している。使うことを前提としている点が特徴であり、神戸市が実際に使ってきたダッシュボードを提供している」と語る。「国勢調査のデータは長年に渡り公開されてきたが、数字が羅列されているだけで、理解に時間がかかるといった課題があり、これがデータ利活用が進んでいない要因になっている。自治体のなかに使われずに眠っていてるデータも多い。日常的な業務には使われていても、政策立案などへの活用は遅れているのも実態である。有用性の高い情報を、わかりやすく、誰もが分析しやすい形で共有することは、社会的に意義のあることであり、神戸市が今回のサービスに取り組む理由もそこにある」(正木氏)。

神戸市以外の自治体や政府関係者にも幅広く開放

 事業者が新たな事業を開始したいといった際にも、地域の人口や年齢分布、世帯構成などの情報を入手するといった用途も想定している。都道府県や市町村単位で、人口数や男女ごとに年齢別人口分布がわかり、指定した駅から1km以内を丸で囲み、該当する町丁目の人口分布を把握するといったことも可能だ。また、通勤通学地分析では、昼夜間人口比率や、市町村単位での人口流出入マップを表示。たとえば、京都市の場合、大阪市への通勤流出が多いが、通学の場合は大阪市からの流入が超過していることなどが視覚的に理解できる。

令和2年度のデータを用いた通勤通学分析

 今後は、令和2年国勢調査の全国版産業分類編や、平成27年(2015年)と令和2年(2020年)の国勢調査データを使った人口移動分析も提供するという。

 なお、データラボの名称は、「ダッシュボードを利用することで、視覚表現によって、データを活用することを目指している。市民にわかりやすく、使えるようにすることを研究することを目指してラボという名称をつけた」と説明。また、職員が利用する神戸データラウンジの名称は、「職員が気軽にデータに触れてもらうという意味を込めてラウンジの名称を用いている」とした。

 正木氏は、「神戸データラボは、全国の行政職員が政策立案時に用いる参考資料として利用したり、個人や事業者を問わずにマーケティングに用いるデータとして利用できたりするほか、小学校や中学校などの教育現場での利用、報道関係者の取材参考資料にも活用できる。神戸市民や神戸市に関わる人たちに活用してもらい、神戸市政をより良くすること、神戸市以外の自治体や政府関係者をはじめとした全国の人たちに利用してもらうことで、オープンデータの利用促進やEBPMの取り組みを支援したい」と述べた。

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