業務を変えるkintoneユーザー事例 第147回
神戸市が推進する積極的なデジタル化 「こうべE-mail接種券」の事例
新型コロナワクチンの接種券発行アプリを1週間で作った神戸市のスピード感
2022年08月05日 09時00分更新
神戸市は、新型コロナワクチンの4回目の接種において「こうべE-mail接種券」の提供を行なっている。神戸市では、この「こうべE-mail接種券」の接種券発行アプリを、サイボウズのkintoneを利用して構築した。神戸市の「こうべE-mail接種券」への取り組みとともに、同市のデジタル戦略の基本姿勢などについても聞いた。
ワクチン接種券は時間がかかり、さらに配送費・印刷費も多額
新型コロナウイルスは、BA.5による第7波の到来や、BA.2.75(ケンタウロス)による新たな感染拡大により、改めてワクチン接種の重要性が指摘されている。
8月4日現在、4回目のワクチン接種の対象者は、60歳以上の国民全員と、3回目のワクチン接種から5ヵ月が経過した18歳以上60歳未満で、基礎疾患を有する人、医師から重症化リスクが高いと認められている人となっている。
神戸市では4回目の接種に際して仕組みを再考した。60歳以上の市民に対しては、全員にワクチン接種券を発送する仕組みを採用しているが、18歳以上59歳以下の市民に対しては、いくつかの仕組みを検討したという。
ひとつは、申請者のみに接種券を配布する仕組みだ。基礎疾患や重症化リスクがあることを自ら申請すると、事務局では神戸市の市民であることや3回目までを接種していることを審査。接種券を封入し、発送する。だが、この場合は、市民に接種券が届くまでに約10日間を要することになるという。もちろん、市民はその時点から予約を行ない、ワクチンを接種することになる。
もうひとつは、18~59歳以下の市民全員に接種券を発送するというものだ。そこから該当する人だけが、会場で接種条件を確認をして、それを満たせば接種を受けることができる。メリットは、接種券を待つ日数が少なくなるというものだが、一方でデメリットは無駄が多いこと。神戸市では、この年齢層の対象は約77万5000人にのぼり、全員に接種券を配送すると、郵送費だけで7000万円以上、添付する説明書類の印刷量は540万枚以上に達すると試算されるからだ。
どちらも期間がかかる、コストがかかるというマイナス要素が大きく、ワクチン接種対策室では、さらに検討を重ねることにした。
その結果、新たな仕組みとして用意したのが、こうべE-mail接種券であった。
kintoneを使用したこうべE-mail接種券は申請者の約8割が利用している
こうべE-mail接種券の仕組みでは、接種申し込みをアプリで受け付けると、kintoneが自動的に、登録されたメールアドレスに返信。すぐに接種券が交付されることになる。申請した人には、先にワクチン接種券を配信し、接種の際に条件を確認するという仕組みだ。これにより、ワクチン接種券が届くまでの約10日間の待ち時間がなくなり、無駄な郵送費や印刷代も不要になる。
なお、こうべ-Email接種券で接種を受ける際には、デジタル庁が提供する新型コロナワクチン接種証明書アプリによる接種証明書や、ロット番号シールが貼り付けされた接種済み証、接種記録書など、3回目の接種記録が必要になる。
神戸市では、18歳以上59歳以下の市民に対して、各区役所などに配置している「お助け隊」での申請や、インターネットを通じたe-KOBE(神戸市スマート申請システム)での申請に加えて、こうべE-mail接種券の発行の仕組みを並行して運用。市民に対して、選択肢を増やすことで、申請やワクチン接種がしやすい環境を整えた。
「申請を開始した直後から、申請者の約3分の2が、こうべE-mail接種券を利用していたが、いまでは約8割の申請者が利用している」(神戸市 健康局保健所保健課 ワクチン接種対策室 担当の山本純子氏)という。
申請者のうち、紙の申請は約1900人。それに対して、こうべE-mail接種券の申請は約7700人に達している。新たな仕組みが主流となって利用されていることが裏づけられる。
こうべE-mail接種券であれば、より短い時間で、申請から接種までを行なうことができる。新型コロナウイルスの感染急拡大とともに、そのメリットが活かされている。
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