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「オフィス回帰」「キャリア自律」も注目すべき結果、従業員エクスペリエンストレンド調査2023年版

日本は「静かな退職」状態の社員が15%、クアルトリクス最新版調査

2023年02月20日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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米国では若者、しかし日本では40~50代に多い「静かな退職」

 注目トピックの2つ目が「静かな退職」だ。2022年の夏ごろから米国で急浮上したキーワードで、「必要以上に働かず最低限の仕事をこなす」姿勢の人を指す。「退職」という言葉が含まれるものの、会社を辞めるわけではないのがポイントだ。

「静かな退職(Quiet Quitting)」は「従業員エンゲージメント」と対極的な姿勢だ

 市川氏は「まだ十分に分析されていないテーマだが」と前置きしながら、「働き方、生き方などに対する価値観が変わり、ワークライフバランス、ウェルビーイング、ダイバーシティ、個人の尊重といった考えも背景にありそうだ」と分析する。

 今回の調査では、「自発的貢献意欲」が低いものの「継続勤務意向」が高い人を「静かな退職状態にある人」と分類した。米国では主に若者の間で広がった言葉だが、日本では40代、50代に多く、役職別では「一般社員(非管理職)」、人間関係は「孤立」しており、業績は「ローパフォーマー」に分類される人が多い。

「自発的貢献意欲」が低く「継続勤務意向」が高い人を「静かな退職状態」と分類して分析

 より詳しく分析するべく、「退職準備人材」(「自発的貢献意欲」も「継続勤務意向」も低い人)との比較を行った。「新しいスキルや知識を身につけようとしている」「習得したスキルや知識をさらに深めようとしている」「将来のキャリアに関して具体的な目標を持っている」といった項目では退職準備人材のほうが大幅に肯定的回答率が高く、一方で静かな退職人材は「業務遂行に必要な権限を与えられている」「ワークライフバランスの維持」「個人として尊重されている」などが高かった。

 さらに「コア人材」(「自発的貢献意欲」も「継続勤務意向」も高い人)との比較もまじえて、静かな退職状態にある人は「『キャリア自律』を考えず、権限・ワークライフバランス・個人の尊重などに甘んじている」「キャリア目標が達成できる職場、報酬、仕事に対する認知などがあまり効かない」と特徴をあぶりだした。「どうやったら静かな退職状態の人たちを変えられるのか、というヒントがなかなか得られない結果になっている」(市川氏)

静かな退職状態にある人と、退職準備人材/コア人材それぞれとの比較

「キャリア自律」はまだ「どう考えれば良いかわからない状態」

 3つ目のトピックである「キャリア自律」とは、「各自が自らのキャリアについて責任を持って主体的に考え、自主的にキャリア形成に取り組むこと」と定義する。日本政府も近年さかんに言い出した言葉だ。

 ここでの問題は「ロールモデルが見当たらず、自分のキャリアをどう考えれば良いかわからない状態」だと、市川氏は指摘する。今回の調査でも、「将来のキャリアに関して具体的な目標がある」と答えた人は26%、「キャリア上の目標とすべき人がいる」は24%と、いずれも低い結果となっている。

 全体の傾向としては「入社間もない時期は学ぶ意欲があるが、長年たつと意欲が減っていく」というもの。昨今注目されているリスキリングについても「中堅からシニアに新しいことにチャレンジしてもらいたいというものだが、多くがその状態にはない」(市川氏)。そのため、まずはキャリア目標を持つところからスタートさせる必要があるとアドバイスした。

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