クラッシュ続出のSSは
有名な心霊スポットだった!
ハードなクラッシュやコースへの車両侵入、タイスケの遅延などによるステージキャンセルによって、DAY1からDAY2の午前中まで、走行順の遅めな私たちは1度もSSを全開で走る機会がありませんでした。DAY2午後の1本目となるSS5はちょっと不安なコースでした。なぜならSS5は「Isegami Tunnel」というSS名からわかるとおり、私たち東海圏の住人には有名な心霊スポットである伊勢神トンネルを走るコースなのです。
SS2のリピートステージなのですが、午前中のSS2ではソルド選手のヒョンデ・i20N Rally1が全焼してしまったり、WRC2チャンピオン候補のカエタノビッチ選手が大クラッシュしてリタイアしたりと、大荒れの展開でした。このような理由からSS距離を短縮したショートステージとしてSS5を走ります。
トンネル前にフィニッシュが設定されたので、トンネルを全開走行しないで良くなって少しホッとしましたが、私たちにとって最初に全開走行で臨むラリージャパンのコースなのです。ドキドキでしたが「様子をみながら落ち着いて行こう」と村田選手と声を掛け合い、気合いを入れ直していざラリージャパン1本目のアタックをスタート。シート位置の関係上、私は前方がほぼ見えないのですが、実際に走ってみるとクルマから伝わるGによりコースがわかりやすく、ペースノートのタイミングも問題ありません。
コドライバーとしてプジョー・208R2の車両感覚を早く掴み取ろうと注意しながらコースを進んでいきます。「ドン!」と、少しだけ車両をぶつけた感覚もありましたが、そのほかは危なげなく完走。短縮されたコースだったので、あっという間に感じました。フィニッシュ後のストップを超えたところで、村田選手が右フロントタイヤを確認して「あ、やっぱりだ」という声が。なにかあったのかな? と見てみるとパンクでした。
こんな1本目からパンクなんてやっぱりラリージャパンは難しい」と感じつつ、即タイヤ交換作業に入ります。そしてここで今回の新アイテムの登場です。プジョー208R2は、ハンドブレーキをロックさせることが少し難しいので、ドライバーが降車するような停車時には「輪止め」が必要になるのです!
クルマを固定する輪止め問題が勃発
この時タイヤ交換をした場所は、少し後ろに傾斜があり、落ち葉多い場所だったため、輪止めを使わないと車両が動いてしまいます。全日本ラリーでGRヤリスの時はサイドブレーキをロックしておけば良いだけなので、私は輪止めをこの時はまだ使い慣れておらず、フロントにつけるのかリアにつけるのか、またタイヤの前なのか後なのか、を考えるのに2秒くらいかかっていました。もっと練習を、イメトレをしておくべきだった……。
最初に輪止めを渡されたときには、2つの輪止めをタイヤの前後において固定していました。ですが、これが急いで出発するときにはかなり不便。今回のラリージャパンのようなスケジュールだと急がなければならない状況の方が多く、何か改善できないかなと思っていました。
TC待ちでほかのチームのクルーとお喋りしていると、村田選手がふと「大輝君のとこはどうなってるだろう」と見に行くことに。世界のトシ新井選手の息子、新井大輝選手の乗る車両はプジョー・208Rally4で、私たちのR2よりも1つ新しいモデルです。新井大輝選手とイルカ・ミノア選手は、輪止めは1つですが紐が付けられていて、乗車時に紐を引っ張ると輪止めを車内に入れられるように工夫されていました。
「なるほどー」と思わず頷き、サービスに戻ったときにさっそくメカニックさんたちに頼んで同様に加工してもらいました。実際に使ってみると慣れは必要でしたが、車内から輪止めを回収できて以前よりも効率よく進められるように。教えてくれた大輝選手に感謝。もっといろいろ事前に勉強しておけばよかったですね。松井監督が「ラリーは準備が8割」とよく言いますが、その言葉を思い出し痛感した瞬間でした。
DAY3~4ではだいぶ慣れてすぐできるようになりましたが、やはり経験や慣れは大事なんだなとも思いました。
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