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NEC、AIを活用して固定無線の通信距離を2倍にする歪補償技術を開発

日本電気株式会社
2022年12月09日

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日本電気株式会社
~通信エリアをカバーする無線装置数を半分以下に削減可能~

NECは、固定無線向けに、AIを活用して無線の通信距離を最大2倍にすることができる歪補償技術(注1)を開発しました。 回路規模を小さくする小型化技術を合わせて開発し、AI歪補償技術の汎用的な小型無線装置への搭載と、最大2倍の通信距離を両立しました。


実世界をサイバー空間に精緻に再現するデジタルツインを活用したシミュレーションを通じて社会システムの全体最適化を目指すDXが注目されています。デジタルツインを精緻化するためには、実世界の情報を詳細に捉えるセンシングが必要になり、より広いエリアからセンシングしたデータをデジタルツインに取り込むための通信として、無線通信がこれまでより重視されています。

広範囲からデータを収集するために、通信エリアのカバレッジを拡大することが求められており、NECはこれを解決するために、無線装置の通信距離を最大2倍にする技術を開発しました。
               
本技術と従来の歪補償技術の伝送距離比較


【技術の特長】
1.無線装置の伝送距離を最大2倍に拡張して、ネットワーク構築コストを削減
無線通信の広帯域化や回路の複雑化などから生じる、従来の歪補償回路では処理しきれない歪を、AIを活用して効率的に処理するAI歪補償を開発しました。補償性能が向上することで高出力化が可能となるため、通信品質を保ったままで最大2倍の伝送距離を実現しました。その結果、必要な通信装置の台数を半分以下に削減できます。


2.(世界初(注2))回路規模を約1/100に削減し、小型無線装置への実装を可能とした独自の歪補償回路
従来のAIを適用した歪補償技術は必要な演算量が多いため回路規模が大きくなってしまい、小型の無線装置に搭載できないという課題がありました。
本技術では、A)信号増幅器の物理的構造を考慮したフィルタ構造とニューラルネットワークを生かした回路構造を組み合わせたNEC独自のハイブリッド構造により、従来のニューラルネットワークを活用した歪補償回路と比べて、同等の精度で回路規模に相当する演算量を1/3に削減しました。
さらに、B)ニューラルネットワークの回路設計にニューラルネットワークの枝刈りを効率的にできる条件を独自に発見したことで、精度劣化を抑え、演算量を1/33に削減しました。
A) B)を合わせて約1/100に回路規模を削減し、一般的なFPGAに搭載可能となりました。




なお、本実験の結果の論文は、IEEEの論文誌であるIEEE Access で採択されて、10月30日に公開されました。

関連論文:
Masaaki Tanio, Naoto Ishii, and Norifumi Kamiya “Efficient digital predistortion using sparse neural network,” IEEE Access, vol. 8, pp. 117841-117852, 2020.

Masaaki Tanio, Naoto Ishii, and Norifumi Kamiya “A Sparse Neural Network-Based Power Adaptive DPD Design and Its Hardware Implementation,” IEEE Access, 2022.

以上

(注1)デジタル信号処理によって信号増幅器の歪をキャンセルする技術。通信距離を拡大するため、無線信号の送信を大出力化するアプローチがありますが、信号増幅時に生じる歪によって送信できる出力には限界があり、この限界を解消するために、近年研究されています。

(注2)2022年12月9日現在、NEC調べ

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